「保育園落ちた日本死ね」で始まるブログが国会で取り上げられ、待機児童問題が世間の注目を集めた。先月末からは公園の一部に保育園を建てようとする東京都杉並区に住民が猛反対した一件も話題になっている。記者は保育園児3人を抱える身なので無関心ではいられない。だが、最近は「もう1つの待機児童問題」が気にかかる。
実は学童保育(放課後児童クラブ)でも入所できない児童数が増加傾向にある。全国学童保育連絡協議会の調べでは、学童保育の待機児童数は2011年の6066人から、2015年に1万5533人へと4年で2.5倍増だ。これは把握できている表の数字に過ぎない。実際には学童がない市区町村が全体の1割弱あり、校区内に学童がない小学校も16%に達する。低学年だけで見積もっても、潜在的な学童の待機児童は40万人以上いると言われている。
保育園を卒園した小学生の約8割が学童保育に通う。保育園児の受け入れを増やすほど、その数年後の学童保育の不足につながる。しかも昨年4月施行の児童福祉法では対象児童が従来の「小学校に就学しているおおむね10歳未満であって、保護者が就労等により昼間家庭にいないもの」から、「小学校に就学している児童(以下同)」に改正された。かつては3年生までしか入所できない学童が半分を占めていたが、その数は今後減っていく。5~6年時はともかく、4年生の利用比率は高まってより多くの待機児童を生む可能性がある。
保育園と学童の待機児童問題は相似形の関係に近い。共働きやひとり親家庭の増加に伴い、需要は拡大するものの、用地の確保や職員の待遇がネックになって新設を増やせない。とりわけ学童の場合、保育園以上に指導員(職員)の労働環境が厳しい。放課後の午後からの勤務が大半なので、基本的にはパートタイムの非正規雇用である。
全国学童保育連絡協議会による2012年の調べでは、指導員の68.2%が年収150万円未満で働いている。また6割近くが50歳以上だ。「若い人が安心して長く務められる環境になっていない」(同協議会事務局)のが実態といえよう。昨年4月に学童の品質向上のために「放課後児童支援員」という資格が設けられた。待遇改善への第一歩と言えるだろう。