舛添都知事 引き際を考える時では
もはや、これ以上時間をかけても納得できる説明は期待できない。
東京都の舛添要一知事の政治資金支出などの公私混同問題で、都議会総務委員会で集中審議が行われた。
舛添氏は「心から反省したい」と謝罪したが、肝心な点について詳しい説明を拒否した。
たとえば、2013年と14年に会議費名目で政治資金から支出した千葉県内のホテル代だ。舛添氏が依頼した弁護士による調査結果では、違法性はないものの「全体として家族旅行だ」と認定され、代金を返却すべき対象とされたものだ。
会議の相手とされた出版社社長について審議で名前をただされたが、舛添氏は「政治の機微に関わり、政治家としての信義にもとる。ご容赦願いたい」として公表を拒んだ。
また、領収書の詳細について聞かれたが「記憶が定かではない」と繰り返し、明細書の再発行をホテル側に求めると答えるにとどまった。
本当に違法性がないのか。そもそも会議はあったのか。公私混同ではないのか。根本的な疑問に答える場であったはずなのに、踏み込んだ説明はなかった。こうした答弁姿勢は、他の追及に対しても同じだった。
東京都の予算規模は年間約13兆円に上り、インドネシアの国家予算に匹敵する。トップの責任の重さは計り知れない。だが、現状では舛添氏は自らのスキャンダルを抱え、都政を引っ張る力を完全に失っている。
都政の停滞は深刻だ。東京五輪・パラリンピックを控え、国と都との予算分担交渉が正念場を迎える。巨額の税金を投入する作業の調整が、そもそも舛添氏にできるのか。
都民の暮らしへの影響も心配だ。25年に都の75歳以上の高齢者は約200万人に達する。都心で不足する介護施設の問題など高齢化対策は先延ばしできない。
喫緊の課題では、都内で7000人を超える待機児童問題がある。だが、都議会では疑惑の追及に時間をとられ、保育士の待遇改善などの審議は全く進まなかった。
舛添氏は、集中審議の最後で、給与全額の辞退を議長に申し出たと明らかにした。また、今辞職して選挙になれば4年後の東京五輪の時に再び選挙が行われるマイナスに言及し、「今の議会での不信任は猶予してほしい」と述べた。身勝手な理屈で延命を求めているように映る。舛添氏はもはや引き際を決断すべき時だ。
都議会の対応も問われる。与党の自民党の追及は手ぬるく厳しさに欠けた。公明党は辞職を求めたが、共産党が提出予定の不信任決議案への態度は明らかにしなかった。与党は舛添氏の訴えを聞き入れるのか。都政のための決断こそ求められる。