【ワシントン=川合智之】米国史上最悪のフロリダの銃乱射事件は米社会に衝撃を与えた。オバマ米大統領は12日、緊急声明を読み上げ、「テロ行為であり憎悪による行動だ」と非難したうえで、銃規制の必要性を強調した。銃規制の是非を巡る議論が再燃し、テロ対策とともに11月の米大統領選で争点になりそうだ。
オバマ氏は同性愛者らが集まるナイトクラブが狙われたことに対し「性的少数者(LGBT)にとって胸が張り裂けそうな日だ」と指摘、同性愛者への偏見が背景にある可能性を示唆した。「(犯罪者が)武器を手にすることがいかに簡単か改めて思い知らされた」と銃規制の強化を訴えた。
大統領選の共和党候補指名が確定した不動産王ドナルド・トランプ氏は同日の声明で「我々の指導者は弱い」と述べ、オバマ氏を批判。「イスラム過激派」という言葉を使わなかったとして、大統領を辞めるべきだと訴えた。
トランプ氏は「(2001年の)米同時テロ以降、数百人の移民と子供たちが米国内でテロに関与した」と述べ、自身が掲げるイスラム教徒の入国禁止政策の必要性を改めて強調した。トランプ氏は銃規制には強く反対している。
民主党のヒラリー・クリントン前米国務長官は声明で「事件で使われたような銃がテロリストや犯罪者の手に渡らないようにする必要がある」と強調。「戦争の兵器が町に存在する意味はない」と銃規制の強化を訴えた。クリントン氏は事件を受け、15日にオバマ氏が初めて応援に訪れる予定だったウィスコンシン州での集会を延期した。
銃乱射情報サイト「銃暴力アーカイブ」によると、4人以上が死傷した銃乱射事件は米国内で今年すでに133件起きている。米メディアによると、オバマ氏が銃乱射事件後に緊急声明を出すのは就任後15回目。銃規制の強化を訴え続けているが、銃ロビー団体「全米ライフル協会(NRA)」の影響が強い野党・共和党の反対で法制化は見送られてきた。
オバマ氏は1月、インターネットや即売会での銃販売業者に登録を義務づけるなど、大統領権限による規制に踏み切った。だが、議会の協力が得られないため、実効性には限界があるとの指摘もある。