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 大勢の客でにぎわっていた未明の店内に響き続ける銃声と悲鳴。米フロリダ州の同性愛者向けナイトクラブで12日に起きた銃乱射事件は、死者が50人に達する惨劇となった。警察との銃撃戦の末に死亡した容疑者の男は「同性愛者を嫌悪していた」ともされる。繰り返される銃犯罪に衝撃が走る。

■「安心して遊べる場所」

 乱射事件が起きたナイトクラブ「パルス」は、オーランドの中心部近く。世界中の観光客が集う「ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート」などのテーマパークから少し離れ、飲食店やスーパーなどが並んでいる一角にある。

 すぐ近くの病院には多数のけが人が運ばれ、その向かいにあるホテルでは家族や友人らが不安な様子で待機した。アントニオ・エスムリアさん(26)は、3人の友人が行方不明。涙で目を赤くし、「僕も月に1、2回はパルスへ行く。ゲイクラブはいつもなら一番安全で、安心して遊べる場所。こんなことが起きるなんて、最悪の悪夢だ」と話した。

 12日午後6時前、大勢の人がホテルの中から、泣きながら出てきた。中にいた人によると、病院で治療を受けている人の名前が発表されたが、その他の行方不明者は情報がなく、明朝まで待つよう説明があったという。

 夫のいとことそのパートナーの2人を捜している女性は「病院にいないということは、もうダメということか。早く情報が欲しい」と涙をこらえながら話した。1歳年下の弟のホアンさんが行方不明のバロン・セラノさん(37)は「名前がないからと言って、死亡したとは限らない。まだ希望を捨てない」と自らに言い聞かせるように語った。

 ナイトクラブは100メートル以上手前で警察が交通を止め、近づくことができない。遠巻きに見ていたホセ・ロドリゲスさん(35)も同性愛者で、クラブにも行ったことがあるという。「オーランドは世界中の家族連れが遊びに来る、平和な場所。同性愛者にも寛容だから私も住み続けている。それなのに、こんな虐殺が起きるとは。パリやブリュッセルに続き、人類は自分たちを破壊している」と話した。(オーランド=中井大助