ゴールドマン・サックスとずぶずぶのクリントン 米国版『政治とカネ』の壮大さ
ヒラリー・クリントンについては、メール問題、ベンガジ問題、クリントン財団の問題と、大スキャンダルが3つもあるのに、ワシントンポストの記者たちは完全スルーして、トランプの小さな問題ばかり挙げつらねている、という風刺画。 pic.twitter.com/qiy5irRSOr
— 有本 香 Kaori Arimoto (@arimoto_kaori) 2016年5月22日
日本のマスコミは、ヒラリークリントンのスキャンダルとしてメールアドレス問題しか伝えないが、クリントンのスキャンダルのタネは尽きないらしい。
とくに、ウォール街との癒着について日本のマスコミは抽象的に触れるに止めて、その具体的な情報は全く伝えないことにしている(自主検閲コードらしい)。
そんなことなので、英語の出来ない2級国民である僕なぞは、雑誌「世界」7月号、赤木昭夫「パナマ文書事件」で初めて、ヒラリー・クリントンの醜悪ぶりを知って驚くはめになる。
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一方、トランプとクリントン夫妻のペーパーカンパニーがデラウエア州の同じ建物の中にあることを指摘し、ヒラリーはトランプよりも悪質だと論じているのが英紙ガーディアンである。トランプはそれでも一枚舌だが、クリントン夫妻となると二枚舌で、さらに悪質といえる。ゴールドマン・サックス(「GS」)とクリントン一家の癒着はかなり昔から指摘されている。1992年大統領選で夫のビル・クリントンを持ち上げたゴールドマンサックス共同会長のロバート・ルービンは、クリントン政権で財務長官を務めた。そしていま、ヒラリーの選挙事務所は,ニューヨークのGS(ゴールドマン・サックス)ビルの中にあり、事務所長はGSの元幹部で先物取引委員会の委員長だった人物だ。
中略
ヒラリー陣営は、GSからの選挙運動への多額の寄付とは別に、講演料としてビル・クリントンが65万ドル、ヒラリーは67.5万ドルを受領し、私腹を肥やしている。
ヒラリーが、GSでの講演内容の公開を拒否しているのはGSの反社会的行動を批判せず、逆に賞賛したからではないかと疑われている。GSは、説明不足のサブプライムローンを市中銀行などへ販売したとして、総額30億ドルの罰金ないし和解金を過去に支払い、今年1月には証券取引委員会(SEC)との間で総額50億ドルの罰金で最終和解している。すでに計80億ドルの巨額を払ったことになる。罪状は、2006年-07年段階でサブプライムローンの焦げつきを予測しながら、なお不良債権を売り続け、他方でそれらデリバティブを空売りして巨額の利潤を獲得したというものである。そういう会社に赴き、講演と称して高額な黙認料をとるヒラリーがはたして大統領候補に相応しいのか。こういう批判が出るのも当然だろう。4月12日付「ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス」にサイモン・ヘッドによる長文の記事“Clinton and Goldman : Why It matters”が掲載され、大きな反響を呼んだ。
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引用暴騰のデラウエア州は、米国内のタックスヘイブンとして名高い州。
このほかにも、ヒラリーの娘夫婦はゴールドマン・サックスと切っても切れない関係にある。娘婿がゴールドマンサックスから独立してヘッジファンドを設立するに当たってゴールドマン・サックスのCEOが出資して支援しており、このヘッジファンドがギリシャ経済の回復に賭けたファンドで90%の損失を出し、閉鎖されること等が英語情報では伝えられている。
ヒラリーとゴールドマン・サックスの関係は、ずぶずぶである。
同じ「政治とカネ」でも米国は桁違いなのである。
ヒラリーの娘婿が設立したヘッジファンドはゴールドマン・サックスの出資を謳い文句にしていたようである。
ゴールドマン・サックスは、ヘッジファンドを介して表ではギリシャ買いを煽りながら、裏では空売りで荒稼ぎするという、マッチポンプの常套手段を用いていた可能性も指摘されている。
ちなみに、この「世界」論文は、タックスヘイブン問題の重点が「地域」の問題から、巨大な投資銀行が構築し、運用するシステムへと移行していることを強調している。
タックスヘイブンが地域の問題として提起されている限り、ゴールドマン・サックスなど世界を牛耳る投資銀行の悪行が正面化される可能性はほとんどない。
そう見ると、なぜパナマ文書の大規模リークが可能だったのか、その理由の一端が何となくわかる気がする。
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大規模な節税が可能になるのは、誰しも、租税回避地であるタックス・ヘイブンを利用するからだと考えがちである。それは、全くの間違いとは言えないが、かなり時代遅れの考え方だといえる。なぜなら、タックス・ヘイブンの役割が変化しているからである。実際の資金の隠匿・運用は世界を結ぶコンピュータ・ネットワークの中で行われる。(略)タックス・ヘイブンは、その役割が資産そのものよりも情報を隠すことに変わっており、さらに、後述するデリバティブという金融商品でリスク・ヘッジするだけで節税効果があるため、タックス・ヘイブンが消滅しても、コンピュータ・ネットワーク上で資産を操作できる限り、脱税・節税はなくならない。敵はタックス・ヘイブンではなく、世界をつなぐコンピュータ・ネットワークとそれを動かす国際錬金術師集団なのである。
…中略
デリバティブを扱い、世界の金融を牛耳るのは、シティ、JPモルガン、GSといったアメリカの投資銀行である。投資銀行は、顧問料次第、手数料次第で、どんな悪知恵でも働かせて顧客の希望に応える。つまり、巨悪は投資銀行である。ヘッジファンドはその手先に過ぎない。
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クリントンが民主党候補として確定した以上、TPP圧力は、より熾烈になることは避けられない。
大方の予測と異なり、TPPが米国議会で可決される可能性は高いのだろう。
大統領選挙後、新大統領就任前に米国議会がTPPを承認する可能性が最も高いのではないだろうか。
ヒラリー・クリントンが大統領になれば、属国にとって史上最悪の大統領になることは確実である(トランプであっても、属国史上、最悪ではあるが、少なくともTPPは免れるだろう)。
新大統領の4年間で日本がどうなるのか、一面の焼け野原が目に浮かぶようだ。
それにしても、世界7月号の論文の筆者である赤木昭夫氏は、1932年生、しかも専門は科学史のようである。
金融・財務の専門家で、庶民の立場から本質を論じる若手研究者やジャーナリストがいないということなのだろう。
ISDを批判する法律専門家が現れないのとよく似ている。
わずかばかりの可視化と引き替えに盗聴の事実上の無制限自由化と司法取引を認めた日弁連ともよく似た状況だ。
どこの分野も日本では全てが、原子力ムラ化している。
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