50人死亡のオーランド乱射は「恐怖と憎しみの行為」=オバマ米大統領

  • 2016年06月13日
乱射被害に遭ったナイトクラブの外の様子。オーランド警察提供。 Image copyright Orlando Police
Image caption 乱射被害に遭ったナイトクラブの外の様子。オーランド警察提供。

米フロリダ州オーランドで12日未明、ゲイ・ナイトクラブで男が銃を乱射し、50人が死亡し53人が負傷した事件を受けて、オバマ米大統領はこれを「恐怖と憎しみの行為」だと強く非難し、アメリカ国民が「悲しみと怒りと、自分たちを守ろうという決意」で一致団結していると語った。事件は近年のアメリカで最悪の乱射事件で、午後6時に全国一斉に黙とうした。

オーランド市警のジョン・ミナ本部長によると、現地時間午前2時(日本時間午後3時)ごろ、ゲイ・ナイトクラブ「パルス」に押し入り乱射を始めたのは、ニューヨーク生まれのオマール・マティーン容疑者(29)。クラブで働く警官と撃ち合いになった後、人質をとり立てこもったが、午前5時ごろ、突入した警官11人と銃撃戦になり死亡したという。

過激派勢力のいわゆる「イスラム国」(IS)が犯行声明を出しているが、関与の程度は不明。IS系通信社アマクは、IS「戦闘員」による行為だと表明している。

米NBCニュースは、マティーン容疑者が銃撃前に救急電話をかけ、ISに忠誠を誓ったと伝えている。

容疑者はアフガニスタン系の米国市民。ニューヨーク出身のフロリダ在住で、テロ監視対象リストに入っていなかった。しかし捜査当局によると、米連邦捜査局(FBI)は2013~2014年にかけて2度、同僚に「過激な発言をした」容疑者から事情聴取だけして捜査を終えている。

容疑者は警備会社勤務で、2017年まで有効の銃砲所持免許をもっていた。数日前に合法的に、複数の銃を購入していたという。

オーランド市内や周辺のオレンジ郡では、非常事態が宣言された。

ワシントンで開かれていたゲイ・プライド・フェスティバルでは、犠牲者に黙とうした。

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Image caption 米CBSなどが伝えたオマール・マティーン容疑者の顔写真
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Image caption マティーン容疑者。容疑者の父親は、宗教は動機と関係ないと話す

オバマ大統領は、「何十人という罪のない人たちが無残に殺された」今回の事件は、アメリカでいかに簡単に殺傷力の高い武器を手に入れて大勢を殺せるか、あらためて認識させるものだと指摘。

これまでも銃規制強化の必要性を訴えてきた大統領は、「自分たちがどういう国になりたいのか決めなくてはならない。積極的に何もしないというのも、決断だ」と述べた。

大統領はさらに、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー・トランスセクシュアルの性的少数者)のコミュニティーが狙われたのは実に悲惨で、ひとりのアメリカ人への攻撃はアメリカ人全員への攻撃だと強調した。

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Image caption LGBTコミュニティーは事件に衝撃を受けている。写真は、フロリダ中央LGBTセンターのデカーロ会長と抱き合うオーランド市のシーハン市議会議員(12日)
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Image caption 現場に突入した警官がかぶっていたヘルメット。オーランド警察はヘルメットのおかげで警官は助かったと話している。
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Image caption 銃撃時にクラブでDJをしていたレイ・リベラさん(左)と友人(12日)
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Image caption 重装備の警察特殊部隊が投入された(12日)

大統領は、16日日没まで連邦政府庁舎の国旗を半旗にするよう指示した。

ホワイトハウスによると、大統領は民主党大統領候補になる見通しのヒラリー・クリントン氏と共同記者会見する予定を延期した。

クリントン氏は事件について、自分はゲイ・コミュニティーの「仲間」だと述べ、銃規制強化の必要性を強調した。クリントン氏は「戦争の武器はこの国の市街地にあってはならないと、改めて認識させられた」と指摘。さらにLGBTの人たちに対して、「皆さんが自由にオープンに恐れることなく生活する権利のために、私たちは闘い続けます。アメリカにヘイト(憎悪)はまったくあってはならない」と支援を約束した。

一方で、共和党候補になる見通しのドナルド・トランプ氏は、銃撃を非難しながら「イスラム過激主義」という表現を使わなかったオバマ大統領は辞任すべきだと非難。「素早くタフで賢くならなければ、我々はこの国を失ってしまう」とトランプ氏は警告した。


近年アメリカで起きた乱射事件としては、2007年に32人が犠牲になったバージニア工科大学銃撃が最多だったが、今回の死傷者数はそれを超える。

乱射事件の統計データベース「Mass Shooting Tracker」によると、アメリカでは昨年372件の乱射事件(一度に4人以上が死亡する発砲事件)があり、475人が死亡、1870人が負傷した。

オーランドでは10日にコンサート後にファンにサインをしていた歌手クリスティナ・グリミーさんが、男に射殺されたばかりだった。

Image caption 事件現場となった「パルス」の位置

アメリカ過去25年の凶悪乱射事件

2016年6月――少なくとも50人死亡。フロリダ州オーランドのゲイ・クラブでオマール・マティーン容疑者が乱射。警察との銃撃戦で死亡。

2007年4月――32人死亡。バージニア工科大学で学生チョ・スンヒ容疑者が乱射の後、自殺。

2012年12月――27人死亡。コネチカット州サンディフックの小学校でアダム・ランザ容疑者が子供20人と大人6人を射殺した後、自殺。

1991年10月――23人死亡。テキサス州キリーンの飲食店にジョージ・ヘナード容疑者が車で突入し、銃を乱射した後、自殺。

2015年12月――14人死亡。カリフォルニア州サンバーナディーノの地域施設でサイード・リズワン・ファルークとタシュフィーン・マリク両容疑者が乱射。逃走中に警察と銃撃戦になり、死亡。

2009年11月――13人死亡。テキサス州フォートフッド米陸軍基地でニダル・マリク・ハサン少佐が乱射。軍法会議で死刑判決。

2009年4月――13人死亡。ニューヨーク州ビンガムトンの移民支援センターでジバリー・ウォン容疑者が乱射し、自殺。

1999年4月――13人死亡。コロラド州リトルトンのコロンバイン高校で生徒のエリック・ハリスとディラン・クリボルド両容疑者が学生と教師を射殺した後、自殺。

(英語記事 Orlando gay nightclub shooting 'an act of terror and hate'