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松岡炎造、異世界テニヌでチート無双! 作者:鶏が先か、卵が先か
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1話 異世界テニヌ開始!

「諦めんなよ……、諦めんなお前!!! どうしてそこでやめるんだそこで!」

 俺、松岡炎造はカメラに向かってエールを送っていた。

 ……最近では、俺の暑苦しさがネット界隈で人気らしい。
 おかげさまでテニスプレイヤーを引退しても、仕事がある。
 ちやほやされるのは、悪い気がしないな!
 そんなことを思いつつ、俺は絶叫する。

「もう少し頑張ってみろよ! ダメダメダメダメ諦めたら! 絶対できるよ信じろよ!」

 身振り手振りも交えて、真剣に伝える。
 俺の熱い気持ちが、少しでも10代の子供たちに届いてくれれば嬉しいから。

「周りのことを思えよ。応援してくれる人たちのことを思ってみろって! あともうちょっとのところなんだから!」

 こんなことをしてると、また息子に『お父さんってちょっとクレイジー』とか言われちゃうけど。

「俺だってこのマイナス10度のところ、しじみが取れるって頑張ってるんだよ!」

 これも仕事なのだ、息子よ。

「ずっとやってみろ。必ず目標達成できる。だからこそ!」

 そこで、すーっと息を吸った俺は、

「Naver Give Up!!」

 目力を強くして、ガッツポーズを取った。

 「……はい、炎造さんおっけーです。お疲れ様でした」
 「お疲れ様でした!」

     *

 俺はテレビの収録を終えて、コンビニに入った。

「ざーしゃっさっかっせー!」

 ……最近の女の子は、変な言葉を使うなあ。
 そんなことを思いつつ、俺は桃プリンと炭酸水を一つ取ってレジに入った。

 すると、
「あー↑ 炎造じゃね? 炎造っしょ?」
 若い女の子が俺を指差してきた。

「ええ、そうですが……」
「ってーか、マジウケんだけどwww 何、炎造プリン食うの?」

「好きなんですよ」
「マジか! ウケる! ちょっとパシャっていい? ね、いい?」
「え、ちょっと……」
 やんわりと拒否するも、女の子はジーンズからスマホを取り出して、パシャパシャと撮り始めた。

 そのとたん――


 俺は、テニスコートに立っていた。


「……え?」
 なぜか手にはラケットを握っている。
 スーツ姿だったはずなのに、テニスウェアだった。

 しかもネット越しの正面には、スポーティーで健康的な褐色の美女が相対していて、シルクのような銀髪をポニーテールにまとめている。
 どうにも、俺のサーブをレシーブするつもりらしい。

 ……なんだここは?

 思わず辺りを見回してみると、アニメに出てくる化け物みたいなのがうじゃうじゃと詰めていて、俺と美女の試合(?)を観戦しているようだった。

 事態を飲み込めず、ぼーっとコートに立っていると、

「炎造、40-15ですよ。どうしましたか?」
 審判台に座っている、猫耳を生やした幼女が尋ねてくる。

 ……なんだかよくわからないけど……!
 テニスならばかかってこいだ!

「ネバーギブアップ!」
 そう叫んで、俺はテニスボールを垂直に投げる。
 その後、軽やかにスピンをかけてツイストサーブをお見舞いしてやった。

 すると、俺の放ったボールが目にもとまらぬ速さでコートを突きぬけた。

 瞬間、
 わー!と大歓声が爆発した。

 「ゲームセットオオォォォオオ!!! 炎造選手の見事なサービスエースでした!」

「女神に勝つとは、人間やめてるぜえ!」
「さすが人間最強種族・炎造だな!」
 化け物たちから、口々に歓声が上がっていた。

 ……どうやら俺の勝ちらしい。
 はたして、ここはどこなんだろうか。
 周囲も人間世界とは違うみたいだし、どういうことなんだろう?
 そもそも、俺のサーブは時速300kmもありそうな剛速球だった。

 俺があまりに荒唐無稽な展開に茫然としていると、
 審判台に座っていた猫耳を生やした幼女がぴょんと降りてはやってきて、

「おめでとうございます! 勝利ですね!」
「……え? はい」

 頭をかきつつ、悪い夢でも見てるのかなーとか思っていると、
 相対していた褐色の美女がポニーテールを解きながら近寄ってきて、握手を求められた。

「完敗だったが、いい試合だったよ」
「はあ……」

 そんなとき、褐色の美女は言った。

「あーい! ちくしょう! 私の負けだ! ……で? 何を望むのだ?」

 それがさも当然のように言うと、美女は微笑んだ。

 俺は色々と混乱が止まらないんだけど、

「……えっ、何でもいいんですか?」
「もちろんさ」

「じゃあ若さをください!」
「え、……ええ?」

「若ささえあれば、ケイにも勝てる! そしてケイに勝つ!」
 自称・女神は一度首をひねったが、すぐに快諾してくれた。

「では、炎造の願いをかなえよう。十八歳の肉体でいいか?」
「はい!」
 俺がそう応えると、肉体が光に包まれて――

 50手前だった肉体が、若々しい18歳の頃に戻った。
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