無印「人をダメにするソファ」 販売低迷からの復活劇
良品計画が運営する「無印良品」がおよそ13年前に本格的に販売を開始した「体にフィットするソファ」は、体を包み込むような座り心地が人気で、「快適すぎて、いつまでも座っていたい」「2度と立ち上がる気が起きなくなる」など、「人をダメにするソファ」の異名をとる。
この製品は2007年に年間販売個数が約9万個とピークを迎えた。
良品計画が運営する「無印良品」がおよそ13年前に本格的に販売を開始した「体にフィットするソファ」は、体を包み込むような座り心地が人気で、「快適すぎて、いつまでも座っていたい」「2度と立ち上がる気が起きなくなる」など、「人をダメにするソファ」の異名をとる。
この製品は2007年に年間販売個数が約9万個とピークを迎えた。しかしヒット商品の常として、他社から安い模倣品が登場すると、販売個数が激減してしまった。
■品質を落として安くする?
「他社は発泡度が高く直径も大きいビーズを使うことで原料費を抑え、低価格品を出してきた」と生活雑貨部の依田徳則・ファニチャー担当カテゴリーマネージャーは当時を振り返る。
しかし、発泡度が高いビーズは壊れやすく、耐久性が落ちる。ビーズの大きさは座り心地にも影響する。無印良品としては、品質を落として価格で対抗するわけにはいかなかった。
そこで、改良すべき点として注目したのがニット素材だった。このソファのカバーは上下の面にニット素材、その他の面は織物生地というように使い分け、多彩な使い方ができるようにしている。このうち、ニット素材への不満がユーザーから多く寄せられていたのだ。ニットにはポリウレタンを使っていた。
ところが、ポリウレタンは汗と反応して、時間が経つともろくなってしまう。衣服より洗濯の頻度が低いソファのカバーでは、より劣化が速い。
■競泳用水着やデニムの素材を投入
ほかの素材のものはないかと探したが、ストレッチ性が高い素材はポリウレタンを使っているものが多い。ようやく探し当てたのが、東レが競泳用水着のために開発したポリエステル製ストレッチ素材だった。
ところが、このポリエステルを使い、ソファの仕様に合ったニットを作ってみたが、染色がなかなかうまくいかず、ムラになってしまうなどすぐには商品化できなかった。
ノウハウを確立して、商品化にこぎつけたのは2011年。2012年には販売個数が5万個程度まで減少したが、リニューアルが評価されて急速に盛り返し、2015年(昨年)には販売個数は約25万個と過去の実績を大きく上回った。
また、2015年には、カバーの素材にデニムを追加。2016年にはチノを追加した。自由に形を変えるソファの特徴を活かすため、これまでカバーには比較的薄い素材を使用していたが、「これからは素材で楽しめるという、今までになかった価値も提供していく」(依田カテゴリーマネージャー)。
(ライター 笹田克彦)
[日経デザイン2016年3月号の記事を再構成]
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