1990年代、ゲームセンターが明るく綺麗になり、アミューズメント施設とかアミューズメントスポットとかなんとか言われ始めた時代、それまでのちょっと危ない雰囲気だった「ゲーセン」はだんだん無くなりつつあった。
自分も高校生の時によく会津若松の「ロイヤルプラザ」という複合アミューズメント施設によく通ったが、実はもう一つの「ウイング」という名前のゲーセンにも通っていた。昔ながらの窓がない暗ーい雰囲気のゲーセンだ。なぜそんな所に通っていたかというと、1ゲーム50円だったからである。
そのウイングの入り口のすぐ側に置いてあったのが、セガの体感ゲーム「アウトラン」だ。
「体感ゲーム」とは、当時セガが力を入れていたジャンルのゲームで、大型の筐体に大きなモニターが設置され、場合によっては筐体自体が可動するゴージャスなゲーム達である。
アウトランは、筐体が4種類存在し、ウイングにあったのは残念ながら稼働するタイプではなかったが、それでもフェラーリを模した赤いボックス筐体と、美しいサウンドを聞かせてくれるスピーカーは、暗い雰囲気のゲーセンの中でも目立つ存在だった。
ゲーム内容は、順位を競う「レースゲーム」ではなく、決められたタイム内でチェックポイントを通過する「ドライブゲーム」である。主人公?は、隣に彼女を乗せている。そう、リア充なのだこいつは。
当時のレースゲームは、サーキットを周回して順位を競うタイプのものがほとんどで、プレーヤーの順位を無視したアウトランは異端であった。プレーヤーは、とにかく時間内にチェックポイントを通過しさえすれば、次のステージに進むことが出来る。ルールはわかりやすい。
ステージ終了後には分岐があり、全部で5ステージ、16種類のルートが存在する。ドット絵で描かれたグラフィックスは、当時としては最高水準。まだポリゴンによる描写がない時代なので、ラスタースクロールによるコース表現は、今からすれば古臭く感じるかもしれないが、それでも存分に時速300km弱の世界を感じ取ることが出来た。
コースも海岸や夕暮れ、砂漠っぽかったり、謎のストーンヘンジ的な遺跡?っぽいところだったり、グランドキャニオン的な場所だったりと、多彩な表現でプレーヤーを楽しませてくれる。
アウトランは、コインを投入するとラジオをチューニングする画面でBGMを選ぶことが出来る。この曲たちがまたいい。とくに、「MAGICAL SOUND SHOWER」はアウトランの代名詞とも言える名曲中の名曲で、いまでもゲーム音楽のランキングを集計すると上位に食い込むほどの人気ぶりである。
残り2曲も素晴らしい名曲たちなので、興味があれば下記の動画で堪能して欲しい。今聞いても全然問題ない本当に素晴らしい曲である。
ラスタースクロールによるゲームなので、当然インベタが強いのだが、このゲームにはもっと早く走れる裏技があり、しかもそれがゲーメスト等のゲーム雑誌で公表されてしまったため、全国的にその技が使われる事態になった。それが、ローとハイのギアを連続でガチャガチャさせる「ギアガチャ」である。
ギアガチャは、明らかに筐体を傷める原因であり、ゲーセンによっては禁止にするところも多かった。自分が通っていたウイングにはそういうルールがなかったが、やはりギアガチャを多用されたのかヘロヘロになっていた。
ギアガチャは、実はタイミングがシビアでかなり難しい裏技なのだが、とにかくガチャガチャやればどうにかなると勘違いした人が多くて、そのせいで余計に筐体が傷むことになった。
しかも、本来はコースアウトの時に使うギアガチャが、路上でも適用されて最高速度を維持できる事が発見され、さらに無駄にガチャガチャされる羽目になり、アウトランのハイスコア集計も様変わりしてしまった。
現在でもこの技をオススメとして書いてある本が存在し、しかも自分も持っているが、この技はインチキ臭いうえに筐体を壊してしまう可能性が高く、正直オススメしない。というより、モラル的にやらないほうがいい。
出来るのだ!じゃねーよ!
と、ギアガチャの存在がどうしてもフィーチャーされてしまうアウトランではあるが、ゲーム史に残る超名作なのは間違いない。もし、いまどこかで見かけることがあったら、ラジオのチューニングを好みの曲に合わせて、地平線の向こうにむかって走り始めて欲しい。
自分は…
やっぱりMAGICAL SOUND SHOWERかな〜