米国で自由貿易主義に反対し、保護貿易主義を求める声が強まっているなか、韓国の産業界は戦略的アプローチで実利を得るべきだとする提言が出された。
大韓貿易投資振興公社(KOTRA)は9日に発刊した『米国の対韓通商圧力の背景と見通し』と題する報告書で、米国で11月に行われる大統領選挙と議会選挙を前に強まっている「反自由貿易感情」を警戒すべきだと指摘した。
大統領選の共和党候補指名を獲得したドナルド・トランプ氏は、米国がすでに結んだ自由貿易協定(FTA)を全面的に再検討すると公言している。米通信社ブルームバーグが3月に実施した世論調査でも、自国の産業保護のための輸入規制に賛成するとの回答は65%で、反対(22%)を大きく上回った。
中道派の米シンクタンク、サード・ウェイによると、米国がFTAを結んだ 17カ国のうち、韓国との貿易での赤字が最も急速に膨らんでおり、そのせいで韓米FTAに対し否定的な世論が強まっているという。
特に、中国が引き起こした鉄鋼の供給過剰を受け米国が輸入規制を強化し、韓国にもそのしわ寄せが及んでいる。米国鉄鋼協会は、中国だけでなく韓国も政府補助金や過剰生産により安価な鉄鋼を供給しており、さらには中国製鉄鋼を韓国で加工して米国に再輸出していると主張する。米国は現在、韓国製品について11件のダンピング(不当廉売)・相殺関税調査を実施している。
強まる米国の通商圧力に対し、KOTRAは「韓国企業の米国でのグリーンフィールド投資(投資先国に法人を設立する形の投資)やこれによる雇用創出、米国のサービス収支黒字など、韓米貿易に伴う米国の恩恵を積極的にアピールしていくべきだ」と指摘する。米国との環太平洋連携協定(TPP)交渉で自動車分野が大きな争点だった日本は、日本自動車産業の米国経済への貢献度を伝える報告書を毎年発刊しているとし、これを見習う必要があるとした。
また、米国の対韓輸出と投資誘致活動にも一定の協力をすべきだとしたほか、商品中心の輸出モデルを脱却して商品、サービス、デザインなどを組み合わせたプロジェクト型の高付加価値輸出モデルへの転換が必要だとも助言した。