2016年05月16日

レヴェナント: 蘇えりし者

ドキュメンタリー『ディカプリオ』



ドキュメンタリー評価:★★★★★  5.0点
    映画作品評価:★★★    3.0点

「グレート・ギャッツビー」はアメリカという国家を人間の形にしたヒーローだったし、「ギャング・オブ・ニューヨーク」はニューヨーク市民の誕生を象徴した歴史的な人物でした。
そして、この「レヴェナント」となれば、デカプリオはアメリカという国やその民衆を、象徴する人物を演じてきたといえるのではないでしょうか。

この映画の伝説的人物ヒュー・グラスも、そうした存在だったように思います。

この映画で描かれた、峻厳で広大な不毛の大地を見るとき、自然の中でかじりつき、へばりつき、人がようやく命を維持してきたのだと教えられます。

幾千もの人々が、このアメリカの大地に朽ちていったはずです。
その先人達の犠牲を乗り越えて、今のアメリカの開拓があったのだという事実こそ、この映画の陰鬱な自然の示すものだったのでしょう。
それゆえこの映画の、天と地の間に指す光や、流れる川や雲が、宗教的黙示録を思わせるのも、鎮魂の祈りからだと感じました。

そして、その苦難を乗り越えて生き永らえ、復讐という目的を完遂した人物だからこそ、ヒュー・グラスはアメリカの伝説になったはずです。
それは移民達が、非情な自然の摂理に打ち勝ち、あまつさえ人としての目的を達成した、西部開拓の象徴として、語り継がれてきたに違いありません。

そういう意味では、アメリカ国民と国家の「バック・ボーン」たるべき人物だったはずです。
デカプリオは、その人物を、這いずり、にじり寄るように演じて、鬼気迫るものが有ります。

それまでの彼が、「女性達の憧れ=アイドル」の姿を投げ捨ててでも、有無を言わせぬほどの、なりふり構わぬ、「アメリカン・スピリッツ=アメリカ魂」を示します。

しかし、その賭けに勝ってオスカーを手にしたとき、ディカプリオは同時に「アメリカ精神の典型像=アイドル」として、生まれ変わったのではないでしょうか。

と・・・・キレイに終われないのが悪い癖で・・・・・

じっさい映画作品として見た場合、日本人の私が、映画として見て感動や喜びを受けるかといえば、残念ながらそこまでの印象はなかったです。
素直に言えばこの映画の主演を、ディカプリオから無名の俳優に変えたときに、日本公開すらされないだろうと感じました。

それは、この映画の伝説的人物ヒュー・グラスという人が、アメリカでは教科書に載るぐらいの有名人で有ったとしても、日本では無名の人ですし、事件らしい事件も有りませんし・・・・それゆえ、映画の評価としては★3っつです。

しかし、この映画をディカプリオの「ドキュメンタリー映画」として見たとき、間違いなく100点ですし、傑作だと申し上げましょう。

実際この映画のクドイホドのディカプリオの演技は、何事でしょう。
正直に言っちゃいますね、気を悪くしないでね。
ここまでやれば、いくらなんでも、オスカー寄こすだろうな?という、これでもか攻撃、脅迫のようにすら感じます。

正直、アカデミー賞監督、アカデミー賞カメラマンを揃えて、万全の体制で「アメリカの魂」をコレデモカとばかりに次から次にスタントなしのガチンコ撮影。
トラブル続きの命すら危ぶまれる、狂気のごときディカプリオ。

思い起こせば、何度オスカーに逃げられたことか・・・・・
『ディパーテッド』でも作品賞を撮ったにもかかわらず、主演のディカプリオはとれず、実在の人物で病気持ちなら獲りやすいというので、『アビエイター』で神経症のハワード・ヒューズ役を演じダメで、それではさらにヒートアップさせ『Jエドガー』のFBI長官のエドガー・フーヴァーを演じ、この人はゲイで性同一性障害に女装趣味、さらに権力亡者という、コレデモカのてんこ盛りにも関わらず、結果はご存知の通り。

ついには開き直って、『ジャンゴ 繋がれざる者』では差別主義者のゲスを演じ、それでもダメならとばかり『ウルフ・オブ・ウォールストリート』で成金、ゲス、ドラッグ中毒、オカマまで掘られてもダメ・・・・

ホントに、もはや、やれることはやりつくし、最後に残ったのがこの映画、一人芝居の生きるか死ぬかの命がけのギリギリの芝居。

イヤ・・・これはもう芝居じゃなくて、「ディカプリオ:オスカーへの道」というドキュメンタリーです。

そう考えればデカプリオ自身が、ヒュー・グラスのような執念の人なのでしょう・・・・・このディカプリオの執念が乗り移った表情は、間違い無く一見の価値があります。

だって、死んだ馬の腹に裸で入っちゃうんだぜ・・・・・・

まぁ〜その執念には満点を上げますが、ディカプリオの一人芝居を前に出しすぎたために、映画的なドラマとしての力が弱いと、やはり私は感じます。
それゆえ、私も執念で★3っつ。

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posted by ヒラヒ・S at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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