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戦争の実像、映し出す イラクやシリア取材15年、映画化

岐阜新聞Web 6月11日(土)9時13分配信

 イラクやシリアなどの紛争地で取材を続ける大垣市出身のフォトジャーナリスト、久保田弘信さん(49)=東京都=が仲間と共に撮影した15年分の映像が、一本のドキュメンタリー映画になった。題名は「THE TRUTH 伝えきれなかった真実2016」。傷つく戦場の兵士や難民の家族らの姿を通し、戦争の実像を浮き彫りにしている。
 地雷が埋まる荒野を進む車列の向こうに、過激派組織「イスラム国」(IS)に支配された村が見える。立ち上る米軍の空爆の煙。緊張感あふれる冒頭のシーンは今年2月、イラクで撮影された。
 「ISの台頭は、米がイラク戦争でフセイン政権を倒したことが背景で、シリアの難民問題、アフガニスタン戦争も全てつながっている。武力で解決しようとすると、必ずひずみが出る」と久保田さんは分析する。
 もともとは、海外の観光地やバイクレースを撮影するカメラマンだった。1997年、パキスタンのアフガン難民キャンプを訪れたことが転機になった。「世界から捨て置かれた人たちが目の前にいた。きれいな観光地とは違う現実を写真で伝えられないか」
 難民の全国写真展を開いていた2001年にアフガン戦争が勃発。テレビ局からビデオカメラを渡され、タリバン政権の拠点カンダハルに乗り込んだのをきっかけに映像に取り組むようになった。
 映画では、米軍の空爆でけがをしたアフガンの子ども、イラクの首都に風切り音とともに着弾する巡航ミサイル、内戦のシリアから逃れた難民の暮らしなどの場面が続く。大半は戦争に巻き込まれた市民の側からカメラを向けている。
 製作は映像制作会社「アジアニュース」(本社・東京)で、同社の板倉弘明代表(45)らの映像と合わせ、1時間38分に編集した。
 久保田さんは「安保法制が成立し、集団的自衛権の行使容認という時代になっても、国内では戦争が遠いものになっている。映画を通し、『戦争ってなんだろう』と考えてみてほしい」と訴える。
 公開は来月下旬の都内での上映会を皮切りに自主上映会の形式を予定。問い合わせはアジアニュース、電話03(5860)8386。

岐阜新聞社

最終更新:6月11日(土)9時28分

岐阜新聞Web