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(朝鮮日報日本語版) 【寄稿】「朝鮮半島は統一しないといけないの?」と尋ねた君へ

朝鮮日報日本語版 6月11日(土)9時35分配信

 K君、いかがお過ごしですか? 就職試験の準備で大変ではないですか。前に会ったとき、君が投げ掛けた質問が、今も耳に残っています。率直に言って、自分たちが食べていくのも大変なのに、統一はどうしてもやるべきなのか、と。

 私は、韓半島(朝鮮半島)統一は単に政治や経済だけの問題ではなく、同時に精神的、霊的な問題だと信じています。人が肉体と精神からなる存在であるなら、カネだけで生きているのでないことも明らかです。個々人がつくり出す国家や民族も同じことでしょう。物質的に豊かな国になることは非常に重要ですが、それが全てではない、ということです。

 けれどいつからか、韓国人は統一の話が出さえすると、その費用から計算しようとします。統一問題をカネで勘定する現在のありさまは、国家や民族も歴史の中で生き、また動いていく精神的存在だという事実を、われわれの時代が忘れてしまったことを明らかにしています。われわれは今、非正常で蛇行した生き方をしている、ということなんです。

 もちろん、経済的に計算しても、統一は大きな利益になります。これまで韓国は、海洋経済圏に進出することにより、これほどまで成功しましたが、今は脱出口を必要としています。今、統一がなされれば、大陸経済圏に進出して半島という地理的位置をジレンマではなく祝福へと変えることができるでしょう。もちろん、当面は負担が少しあるでしょう。しかし、統一の費用を韓国国民の税金だけで充当しなければならない、と考える必要はありません。多分、韓国が統一したら、それ自体が世界でニュースになり、投資先を探している多くの国際投資家が押し寄せるはずです。それでも、多少税金を出して当分は苦労するのだから統一は嫌だと言うのなら、本当に困ってしまいます。
 とっぴなことに聞こえるかもしれませんが、結婚して子どもをもうけ、育ててみてください。苦労しますが、本当にかわいい。ところが最近、孫ができた私の友人たちは、こんなことを言います。息子・娘ができた時とはまた違うと。孫があまりにかわいく、寝ている姿をじっと眺めていると恍惚(こうこつ)感を抱く、と。

 そのかわいい孫が、またその子孫が、統一韓国の市民として国際社会で堂々と、そして豊かな先進国の市民として生きていけるようにしてやるのが、統一のはずです。それでも、自分が死ぬまで楽に生きていかねばならないので、チャンスが来ても統一にそっぽを向いた、と仮定してみましょう。後の世代は、先祖に当たる君の世代について何と言うでしょうか。もしかすると、国を失った先祖に劣らず、出来損ないの先祖だったとののしるのではないでしょうか。

 歴史意識とは、特別なものではありません、これが歴史意識です。ところが今、韓国人の心の中から歴史意識が、そして共同体意識が消えつつあります。意識の中に存在しているのは、ひたすら「自分」と、自分が生きている「今」だけです。何が、そうさせてしまったのでしょうか。私は、物神主義だと思います。カネが全てという物神主義が、韓国人の魂を奪っていきつつあるようです。もちろん、君の祖父の世代、親の世代は、貧しさに打ち勝とうと本当に熱心に走りました。だからここまで食べていけるようになりました。ところが問題は、本当に重要なもの、根本的なものを忘れてしまったことです。そしてそれが、統一に対する韓国人の考えの中に表れているというわけです。
 2012年1月6日付のドイツの週刊誌『シュピーゲル』に、韓国関連の専門記事が載りました。ドイツの指導層20人が韓国を訪れ、人々と会い、感じたことを討論しました。東ドイツ最後の首相を務めたデメジエールは「韓国の人々は基本的に、かなりのカネがかかる統一は望んでいない」と語りました。この言葉を受けて、東ドイツ最後の国防相だったエッペルマンは「韓国の人々は、統一後も国境をコントロールしようとしている。全く、あきれてしまう。壁が崩れたのに、また壁を築こうとするのだから」と語りました。13年春、私がベルリンに滞在していたときに会ったドイツの友人は、私にこう言いました。「われわれは、自分の世代が統一の使命を担ったことをうれしく思った」と。

 ドイツ人と韓国人の違いは何でしょうか。ドイツ人は、根本を忘れず、統一もそうした観点から対応したようです。ドイツは韓国より資本主義の歴史が長いですが、それをがっちり支えてくれる精神的価値と共同体意識があり、カネが先頭に立つことはありませんでした。ところが韓国は、そうではないという思いを抱きます。私は、ドイツ人の意識の中にしっかり根差している共同体意識、歴史意識が本当にうらやましい。

 大変なことですが、失望せず熱心にがんばって、就職に成功してください。大学で長い間、若い人と一緒にやってきたので、君の痛み、今の時代の青年の怒りを少しは理解しています。そして上の世代の一員として、申し訳なく思います。しかし、心からお願いします。熾烈(しれつ)な競争の中で生きていくしかないとしても、それを超える本当に根本的なもの、重要なものがあることを、一緒に忘れず生きていってください。

最終更新:6月11日(土)9時35分

朝鮮日報日本語版

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