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第191話 発見・突破口!!
ナナからの突然の告白にドキッとして、そのまま少しの間甘い空気を味わったのもつかの間……抱きついてきた彼女の首もとに赤い発疹を発見した瞬間、背筋がぞっとした。
頼むから勘違いであってくれ、間違いであってくれ……そんなことを、大して信じてもいないはずの神様仏様に祈りながら、検査室に連れ込んだナナの血液を薬品で調べる。
5分後、結果はすぐに出た。
ナナの首もとの赤い発疹。それは……今正に僕が治療薬の作成とメカニズムの解明に取り組んでいる奇病・『邪血疱瘡』………………
………………ではなかった。
☆☆☆
「何だよもぉ~……びっくりした~!」
数分後、自室に戻った僕は……ソファの上で盛大に脱力していた。
隣には、安堵を浮かべつつも若干気まずそうな表情になっているナナが座っている。
いや、よかったけど、安心したけど……あームダに疲れた……。
ナナの体の赤い発疹は、じんましんみたいなもんで……原因とか詳しいことはわかんないけど、まず『邪血疱瘡』ではないとわかった。
そもそも、今もう赤みも発疹そのものも引いてきてるし。朝には跡形もなく治ってると思う。
ただ、どうやらナナもこんなことは初めてだったようで、発疹を見た時は驚いてた上、僕と同じことを考えて顔を真っ青にしてた。幸い、勘違いだったわけだけど。
「あははは……でも、一気に雰囲気冷めちゃいましたね」
「あー、うん、そだね……」
確かに……今の騒動のせいで、さっきまであった甘い感じの雰囲気が見事に霧散したな……今から作り直そうと思ってもちょっと難しそうだ。
ナナもそう思ってるのか、特にくっついたりしてくることもなかった。
まあ……今日はいいだろう、このまま安心して眠ることにしても。
結局、ナナの告白そのものは、僕は受けることにさせてもらった。
当然というか、すでにいる僕の嫁&愛人であるエルクとシェリーについては、今後も関係は変わらない。ナナがそこに3人目として、本人曰く『愛人その2』として加わることになる。
それはナナも承知だし、逆にその2人もナナが愛人として加わることに否は無いようなので、ナナが愛人として今後付き合うことになる以外は、僕らの関係に変化はないと言っていい。
「しっかしびっくりしたな……何だったんだろうね、それ」
「さあ……さっきも言いましたけど、私もこんなこと初めてで……皆目見当もつかないです」
ちら、と目をやると、ナナの肩口の赤い発疹はもうかなり引いている。さっきは明日の朝には、って言ったけど……この分なら1時間後にはもうないかもな。
それと、最初気付かなかったらしいけど、どうやら若干の痒みを覚えていたそうだ。
(しかし、本当になんだったのやら……?)
当然、『邪血疱瘡』じゃなくても気になったことは気になったので、この発疹についてナナの血液からは、どんな病気なのかすぐにはわからなかった。
病毒らしきものが検出されなかったのだ。患部はもちろん、どこからも。
そこだけ見ると、『邪血疱瘡』に似ているとも言える。アレも病気の原因が何なのかが未だにわかっておらず、患部その他から毒素らしきものも見つかっていない。
炎症を抑え、引かせる薬はある。不完全だけど治療薬もある。肉親の感染者の血液という特殊な材料があれば、もっと効果のある治療薬が作れる。
だが、発症のメカニズムだけがわからない。
『蝕血病』みたいに原虫がいるわけでもなければ、体のどこかに病巣があるわけでもなさそうだし……そもそも体の中に病毒らしきものが見当たらないってどういうことなんだろう。一体あの炎症その他は何が原因で引き起こされてるのやら……?
(症状が出てる以上は原因は何かしらあるはず……けど体の中に有害物質は見つからないとなると、外部に何か要因が? いやでも、生活環境も何もかも違う家庭の出身者が同様に発症してるとなると、共通の要因の有無っていう点でその線は……)
「所でミナトさん、もう夜も遅いですけど……どうします? そろそろお休みになりますか?」
「……いや、もうちょっと研究進めるよ。さっきので目が冴えちゃったし」
「そうですか。じゃあ、コーヒーか何か入れますね」
そう言うとナナは、部屋に備え付けのドリッパーを使ってコーヒーを入れてくれる。
以前ターニャちゃんやシェーンからコツを教わったらしく、馴れた手つきでコーヒー豆から苦味の利いたエキスを搾り出し、それを大き目のカップに注ぎ込む。
そして、僕がブラックのコーヒーが苦手であるという趣味思考もきっちり反映。あらかじめ用意していたシロップを溶かして……あれ?
「? それ、いつものシロップじゃないね?」
「あ、はい。コレは『ミネット』産の花の蜜です」
聞けば、職員用の売店で売ってたのを見つけて買ってきてくれたらしい。
コーヒーや紅茶に入れて飲むことを考えて製法を調整された蜜なんだそうだ。その上品な甘さは老若男女を問わず人気で、特にナナが買ってきたこの銘柄は、王族貴族御用達なんだとか。
それの解けたコーヒーを受け取って飲んでみると、確かにいつもの甘さとはまた違った、さわやかで口当たりのいい甘さと、花を思わせる香りが口から鼻に抜けた。
なるほど……こりゃ王族貴族の皆さんに人気になるのもうなずけるかも。
「たしか、3年前くらいから王都で流行りだしたんですよ、この蜜。私も軍人だった頃、好きだったんですよね。懐かしいなあ」
「ふーん……でもコレ、王族御用達ってことは、やっぱ高いの?」
「いえ、確かに多少値は張りますけど、そこまで高くは無いんですが、安くて美味しいっていうのが逆に気にいられたみたいですよ。国王陛下、未だに感性に庶民的な部分が残ってるので」
「ああ、なるほど……ってことはコレ、第一王女様達も好きなのかな」
「そうみたいですよ? 特にリンスレット殿下がお好きだそうです」
あ、そうなんだ、第二王女様が?
「ええ、今も時々お茶に入れて飲むそうです」
「ふーん……」
「私も大好きですけど……ただコレ、ちょっと注意しないといけない点があるんですよね……」
と、ナナが自分の分のコーヒーにシロップを入れながら、そんなことを。どういう意味?
「いやその……コレ、甘くて美味しいけど結構カロリー高いので、摂り過ぎると太っちゃうんですよね……きちんと普段から節制しないと、あとで泣くことに……」
「あ、そういうことね……」
「ええ……って言ってるそばから何追加してるんですか?」
いやその、もうちょっと甘くてもいいかなー、と。
僕ほら、EBと変化した体質のおかげで太る心配ないし。
何せ、脂肪とかにならずに全く別な物質になってエネルギーとして貯蓄されるので、食べ過ぎで太るってことと無縁なのだ、この体は。いくら食べても、体積どころか質量保存の法則すら無視して消化・吸収し、体型を維持できる。
そう説明したら、前にもこんなことあった気がするけど……ナナから嫉妬やら何やら色々な感情がこめられた視線がビームのごとく飛んできた。
「まあ、ミナトさんはそうでしょうけどね……女の子は体型一つ維持するのにも結構苦労してるものなんですよ? 食べたいものを我慢したり、食べた分動いて燃やしたり、人知れず色々と努力を重ねてるんです……中にはシェリーさんみたいに、食べても太りにくい人もいますけど」
「え、そうなんだ?」
それ初めて聞いたかも。シェリーってそういう体質だったの?
「はい、そうらしいです。ですのであの人、食事する際にも割と遠慮なく好きなものを好きなだけ……同じものを同じように食べても大丈夫な人とただじゃすまない人がいるって何なんでしょうね。はぁ……不公平ですよぅ、私だって美味しいもの思いっきり食べたいです……」
………………ん?
「……ナナ、今何て言った?」
「はい? いや、だから、私も美味しいものを……」
「その前」
「……? えっと……同じものを同じように食べても大丈夫な人とただじゃすまない人が「それだ!!」……えぇ!? な、何ですか!?」
その瞬間……僕の頭の中に、ある1つの可能性が急速に浮上してきた。
ナナの今の、本当に何気ない一言がヒントになって。
『同じものを同じように食べても大丈夫な人とただじゃすまない人がいる』。
そうだ……これがおそらく鍵だ、『邪血疱瘡』の原因を明らかにするための!
となると……ちと必要なデータがあるな……
僕は黒帯に収納していた『ヘカトンケイル』を取り出して装着し、机の上の山のような資料の中から素早くお目当てのものを選び出す。
そして、それをテーブルの上に並べて見比べてみると……
「……やっぱりだ、感染者の半分近くが……となると残りは、あるいは……ナナ!」
「はい!?」
「アリスに頼んで、大至急『邪血疱瘡』の感染囚人達の取調べセッティングして。できれば明日、すぐにでも。そんでもって……これ知りたいんだけど、わかる?」
「え? ええ? えっと……セッティングはわかりましたけど……これはちょっと、外部の情報が必要かと……あの、ミナトさん? 何して……『すまほ』を取り出して何を?」
「……あーもしもしエルク? 夜遅くにゴメン、寝てた? ……そっか、そりゃよかった。あのさ、ザリーいる? 呼んでくんない? いや、大至急調べてほしいことがあって……」
☆☆☆
その数日後、僕の仮説はほぼ確定のものとなっていた。
僕の目の前……テーブルの上には、今回の結論を導き出す助けになった資料たちが並んでいる。
全部で4つ。どれも、『邪血疱瘡』の真実を説明するのにかかせないもの。
1つ目、感染している囚人たちからの聞き取り調査によって纏めた情報。
2つ目、ザリーへの調査依頼の結果報告で揃ったデータ。
3つ目、仮説に基づいて、囚人やその血液その他を使って行った実験結果。
4つ目、ここに入ってきてからの感染囚人たちの発作の記録。
そして5つ目、それらの日にちに対応した……囚人たちの食事の献立表。
2つ目と5つ目が特に重要だ。彼女達の『邪血疱瘡』が何によって引き起こされたのか、これらを分析した結果明らかになったんだから。
今現在、『サナトリウム』内の僕の研究室には、クロエとネリドラを除くここの関係者が全員揃っている。僕がようやく至った結論を、報告・説明するために。
囚人2人がいないのは、研究内容の守秘もあるし、単にもう消灯時間過ぎてるからでもある。
彼女達の前で、僕はテーブルの上に1から5の資料を全部広げて見せているけど、当然ながらこの資料だけで結論を理解できる人はここにはいないので、順序立てて説明することに。
しかし、最初にまず結論から話したところ……予想通りではあるものの、もれなく全員が仰天することとなった。
まあ、無理ないけどね。何せ……
「病原が存在しない!? 見つからない、ではなくてですか?」
そう聞き返してくるアリスは、おそらくここにいる全員の心の声を代弁していたことだろう。何せ僕自身も今まで、この『邪血疱瘡』の病原が何なのか、どこにあるのかを探してたんだから。
しかし、血液中、臓器、細胞組織の中……どこを探しても見つからなかったし、それどころか炎症を起こす毒素や菌みたいなものも全く確認できなかった。ゆえに、分析のしようがなかった。
だが見つかるはずもなかったのだ。何せこの病気、そんなものは存在しない。
というか更に言えば、この『邪血疱瘡』は病気と言うよりは『体質』であり……遺伝によって『感染した』という言い方もまた適しているとは言えない。
何せ、この病気の正体……『アレルギー』だったんだから。
花粉症や食物アレルギーといえば、僕の前世……地球でも広く知られているワードだろう。わざわざ意味の説明が必要ない程度には。
あえて簡単に説明するなら、体内に入ってきたある特定の物質――『アレルゲン』に対して、体が過敏に反応して様々な症状を引き起こす、ってとこかな?
しかし侮るなかれ。花粉症とかならまだかわいいもので、酷いものになると命に関わることもある。食物アレルギー……特にソバやカニなんかは酷い、って前世で聞いたことがある。
そしてこのアレルギーこそが、『邪血疱瘡』の正体なのだ。
資料によって確認した感染者達の経歴と、聞き取り調査やザリーの調査データを照らし合わせた結果……僕は、彼女達が発症した時期に、何らかの生活環境の変化が起こっていることを確認した。
並べると色々あるが、それらに共通しているのは……引越しや食料品店の新規参入等、何らかの理由で、『食生活』に変化が起こった後しばらくして発症しているということだ。
ある感染者は、それまで山間に住んでいたが、結婚を機に海の近くへと住まいを移し、新鮮な魚介を食べるようになり……その後、『邪血疱瘡』を発症した。
またある感染者は、近所に新しく食料品を扱う商店ができて、そこから日々の食料を買うようになって……その後、発症した。
それに目をつけた僕は、似た境遇にある女囚の血液を使って実験を行った。
その女囚は、聞き取り調査で明らかになったんだけども、とある果物が大好物なんだそうだ。友達に教えられて初めて食べて以来、すっかりはまってしまい、毎日のように食べていたという。
しかし食べるようになってしばらくして……『邪血疱瘡』を発症した。
そして実験の結果……彼女はその果物に反応するアレルギー体質だと明らかになった。それを食べるようになったことが、彼女が『邪血疱瘡』という名のアレルギー反応を引き起こした原因に他ならなかったのである。
発症と食生活の変化との因果関係について、このケースと同様の事実を、経歴が明らかになっている囚人たち全員のケースで確認できた。鍵となる食材はそれぞれ全く違うけど、それが原因でアレルギー反応を起こす食材の存在を確認できたのだ。
「つまりミナト殿……『邪血疱瘡』の正体は簡単に言えば、体質ゆえに体が受け付けない食べ物を食べたことにより、体が過敏な反応を起こしたものだということですか?」
「そうとも言えるし、そうでないとも言える」
「? どういう意味よ?」
アリスさんの問いに中途半端な答えを返した僕に、怪訝そうな顔で義姉さんが聞き返してくる。視線で暗に『はっきり言え』と訴えながら。
「えっとね……ただ単に体に合わない食べ物を食べただけじゃ『邪血疱瘡』にはならないの。もう1つ、ある体質を併せ持ってることが発病の原因。むしろこっちがメインだね」
「ですよね……めったにないことではありますけど、体質上受け付けない食べ物がある人がいるっていうのは、私も聞いたことがありますし……」
そうなのだ。この世界でも、アレルギー持ち……つまりは何かの食材を食べられない人がいるっていうのは、一般的とはいえないまでも、医学的な知識の1つとしてそれなりに知られている。
もちろん、アレルギーの検査技術なんてものは存在しないわけだから、種類も内容もお世辞にも詳しくわかってるとはいえない。食べた結果として受け付けない食べ物が明らかになるだけ。
症状の程度によっては、食べてもその存在すら明らかにならないままのものもある。
症状が軽くてちょっと体がかゆくなる程度なら気付かないし、逆に症状が重ければそのまま死んでしまい、病死か原因不明の突然死とかで処理されてしまう。
このアレルギー体質が『邪血疱瘡』にまで悪化するには、もう1つ条件があるのだ。
「なるほど……だから『そうとも言えるし、そうでないとも言える』なのね」
「して、その条件とは?」
「うん、その前に1つ思い出してほしいんだけど……この『邪血疱瘡』、もともと遺伝によって親から子へ受け継がれる病だって言われてたのは知ってるよね?」
「そーいやそうだったわね。それが?」
「その仮説、実は間違ってないんだ。ただし、遺伝するのは病じゃなくて体質なんだけど」
「体質……体がある食べ物を受け付けないというものですか?」
「いや、違う。遺伝するのは……この病気のもう1つの原因の方なんだよ」
人間の体は、食物など体内に取り込んだもののうち余分なものを、汗や排泄物として体の外に排出してしまう機能を持っている。これによって、体の中を健康に保っている。
しかし、一部の毒物や有機金属なんかの中には、人間の体が一旦取り込むと自力で外に出すことが出来ず、その結果延々と体の中にとどまり続け、それによる悪影響を受け続ける……なんてことになってしまうケースがある。水銀とかそんな感じで公害起きたんじゃなかったかな。
そして『邪血疱瘡』は、これと同じことがアレルゲンで起こってしまった結果なのだ。
アレルゲンがいつまでたっても体内に出て行かないという、最悪の体質によって。
ただ単に、普通の人がアレルギーの食べ物を食べただけなら、一時はかゆくなったりその他諸々苦しいけど、じきに症状は治まり、それを引き起こしたアレルゲンは体外に出される。
まあ、その前に死んじゃったりするパターンもあるけど。
ところが今問題にしている『邪血疱瘡』の体質を持っている場合、恐ろしいことにそのアレルゲンが完全には分解も排出もされず、体内に残留し続ける。
症状そのものは収まるけど、体内に爆弾を抱えたままで終わってしまう。
そして、新たにアレルゲンを取り込まなくても、ふとした刺激で、体内に残ったアレルゲンによってアレルギー反応が再発するのだ。発作という形で、それは認知される。
もちろん、さらに原因の食べ物を摂取すればそれによって発作が起こり、体内にはさらにアレルゲンが蓄積することとなる。
この悪夢のような体質が、遺伝によって親から子へと受け継がれてしまうのだ。
その証拠に、親子でアレルゲンが違う感染者も確認できている。
監獄に、親子で収監されている上に、どっちも『邪血疱瘡』を発症している囚人親子がいるんだけど……その2人の血液を調べると、母親のアレルゲンがある海魚だったのに対し、娘のアレルゲンはある野菜だったのだ。
アレルギー体質と『邪血疱瘡』の原因体質は遺伝したけど、アレルゲンは遺伝していない証拠だ。
そして……アレルゲンの摂取と蓄積が繰り返され、体内にどんどんアレルゲンが増えていき……1回ごとの発作の程度も酷くなる。そしてついには、発作そのものが慢性化し、目に見える形で体表面に現れ……あの毒々しい、血の色を思わせる赤黒い疱瘡になるのだ。
通常のアレルギーによる発疹よりも目に見えて酷いのは、蓄積する段階で免疫の防衛反応が強力になっていくため、症状も酷くなっていくってことだろう。
そして、ごくまれに自然に治るケースがあるのは……アレルギーという体質そのものが変わることがあるため、だと思われる。地球でも、そういうのは聴いたことがある。
「……とまあ、他にも色々と説明しなきゃいけないことはあるんだけども……とりあえず第一王女様たちには、吉報と凶報、2つを報告しなきゃだね」
「? 2つ、っていうと?」
「吉報の方はもちろん、邪血疱瘡の発症が不義の子を表す可能性の否定だよ」
「……! そうか、原因となる食べ物が親と子で違うことがあるということは……」
はっとしたように言うスウラさん。そう、その通り。
それすなわち……親が『邪血疱瘡』を発症していなくても、子供が発症することに何ら不思議がなくなるということだ。
さっき言った例みたいに、親のアレルゲンが海魚、子のアレルゲンが野菜だった場合……その親子が住んでいたのが仮に山の中なら、海の魚を食べる機会のない親が発症せず、野菜を食べる機会の多い子が発症しても何も不思議じゃあない。
そして、凶報の方は……
「……今、発症が確認されていない他の王族の方々の中にも、『予備軍』とでも言うべき、この問題の体質の保持者がいる可能性がある、という点ですね?」
「ナナ、正解。体質そのものが遺伝してない可能性もあるけど、ひょっとするとメルディアナ王女やレナリア王女、もしかしたら国王様にも何かしらの原因物質があって、それを今まで食べてこなかっただけかもしれない。……ちなみにリンスレット王女の原因物質は、あの蜜だったよ」
「そっか……あの花の蜜が、殿下にとっては毒だったんですね……」
好物が毒だと知り、王女様をかわいそうに思ってか、しゅんとするナナ。
すると、はっとしたようにアリスが、
「殿下は今も、お茶を楽しむ際にはあの蜜を愛用なされています……悪化するわけですね……。と、いうことは……その蜜の摂取をやめれば、症状は改善するのでしょうか?」
「いや、無理だろうね。今まで散々体内に蓄積してきた分があるから。けど、それだけわかれば……今度はこっちで何とかすればいいだけの話だ……!」
「「「!」」」
そう……問題点さえわかれば、あとはそれをどうにかするだけ。
方向性が定まった今、僕にはもうこの病気の終焉は見えている!!
ざっとそうだな……『体内に蓄積したアレルゲンの排出』『アレルゲンを排出できない体質の改善』『アレルギー反応そのものの中和』、この3つの作用の薬を作れればいいだろう。
「アレルゲンは厳密には毒素じゃないから薬湯でのデトックスは無理となると体内のアレルゲンに反応して排出を促す薬品をいやしかしそれだとアレルゲンが一人ひとり違うことを考えれば手間もコストもバカにならないしいっそアレルゲンそのものを分解する酵素みたいな役割の薬を作れれば一気に全部解決されるいやそれにしたって個別の……よっしゃ燃えてきた!」
ソファから立ち上がり、というか跳び上がり、研究室にダッシュ。善は急げだ、この頭の中に沸き出でる無数のアイデア、1つ残らず形にしなければ!
後ろからかかる『がんばってねー』という義姉さんの声援?を受けながら、僕は研究室に飛び込んだ。
よっし、作るぞ、特効薬! 首洗って待ってろや『邪血疱瘡』!
……あ、でもその前にもう1つ、
一旦は閉じたドアをガチャ、と開けて、途端に集中する『え、何?』って感じの女性人全員の視線を受けながら、
「あーナナ、こないだのナナの発疹だけどさ……あれ多分、ナナに『邪血疱瘡』の体質がなかっただけで、原因としては同じだと思うよ」
「え? ……ええ!? ちょ、それって私に、何か体が受け付けない食べ物があるってことですか!?」
「うん。あの日採取したナナの血液と、あの夜の献立と照らし合わせて調べてみたけどさ……多分、あのデザートの木苺だと思う」
「えぇ!? ……た、食べてみて好きな味だったのに……」
うん、ご愁傷様です。
がっくりとうなだれるナナもできれば助けてあげたいなと思いつつ……さ、始めよ研究。
えー、ここで一つおことわりを入れておきます。
作者は、医学的知識なんぞ欠片も持っていないただの一般人です。
専門的な知識の中には、偏見とか捏造みたいな誤った解釈が入っているかもしれませんが、そこは創作物の内容ってことであんまし気にしないで下さい……
+注意+
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