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第181話 女囚達の監獄事情
労役と夕食が終わり、共有スペースで思い思いにつかの間の休息を過ごす囚人たち。
その一角にある掲示板の前に……今日も、人だかりが出来ていた。
「どう、新しいのはある?」
「待って、見てるから……ああ、だめ、ないわ」
「そっか……残念ね。よさそうなのがあったら、志願しようと思ってたのに」
女囚達はこぞって、掲示板にある『労役リスト』から……ミナトが依頼する『治験』を探しているのだった。
ここ数週間の間に、不定気にリストに上がる、新薬の人体実験の実験台となる内容の労役。
聞こえは酷く怪しいが……何回か行われたそれの経験者が、こぞって語るのだ。
危険など何もない。それどころか、運がよければ自分の体の不調が治ることすらある……と。
ある者は視力が回復し、メガネがいらなくなった。
ある者は、長年悩まされていた頭痛が消え去った。
ある者は……etc。
しかもそれでいて、支払われる報酬の『点数』は、通常の労役の数週間から数か月分。
その結果、このラグナドラス女子監獄の一部で『治験ブーム』とでも呼ぶべきものが起こっているのである。
あくまで、警戒心の割とゆるい一部の囚人の間で、ではある。『前が安全だったからって、これからも何も無いとは限らない』と考える女囚達には、やはり歯牙にもかけられてはいない。
それでも、数十人が常に『治験』の開催を待ち望み、自分が募集対象の規格に合えば申し込みたいと考えている。掲示板の前にたむろしているのは、そんな女囚達だった。
そんな人だかりの中に……少し遠くから掲示板を見る、1人の少女がいた。
こげ茶色の長髪に大きな目、整った顔立ちが特徴的な少女。腕の焼印は、『629』。
最近このラグナドラスに来て、そしてつい先日まで懲罰房に入っていたその少女は……最近になって掲示板に現れるようになった新しい労役の募集を見ながら、思案にふけっていた。
そんな彼女の肩を、背後からぽんぽん、と叩く者がいた。
「! 何だ、ネリドラか……」
振り返った少女――クロエの目に映ったのは、先日から同じ雑居房で過ごしている女囚の1人であり……自分と同じく、先日まで懲罰房に入っていた女囚。
赤みのさした桃色の髪の、女囚177番……ネリドラだった。
「? 何だ……って?」
「あ、ゴメン、変な意味じゃないの……単にちょっとびっくりして」
「そう。……興味あるの? それ」
別に気にした様子もなく、ネリドラはクロエの背後……掲示板の『治験』の依頼を指差し、再度たずねた。
しかし、それにクロエが答えるよりも先に……
「ちょっと邪魔よ、どいて」
「きゃっ!?」
「っ!」
別な女囚が、背後からネリドラを押しのけて突き飛ばした。
そして、転びそうになるネリドラを、鬱陶しそうに一瞥だけすると……すぐにその表情を引っ込めて笑顔を浮かべ、クロエに向き直った。
「はぁい、クロエ……こないだの話、考えてくれたかい?」
「……バーバラ……」
ネリドラを突き飛ばして現れた女囚の名を、呟くように口にするクロエ。
その顔には……はっきりとした嫌悪の色が浮かんでいた。
よく見れば、そのバーバラ……後ろに、何人か他の女囚も引き連れてきている。
というより、従えている風に見える。まるで、不良の取り巻きか何かのように。
それを見て、一瞬ひるんだような様子を見せたクロエだが……すぐに表情を引き締め、真正面からバーバラたちを見据えた。
「……何度も言ってるでしょう? お断りよ……そんな気はないわ」
対するバーバラは、吐き捨てるように言い放たれたその言葉に、一瞬ぴくっと眉が動いたものの……その表情は変えることなく、
「クロエ……あんたこないだまで、懲罰房いたんでしょ? 何やらかしたのか知らないけど、ここ来て早々にそんなんじゃ、看守達にも目ぇ付けられてるんじゃない?」
「……かもね」
「それならなおさら……ちょっとでも心象をよくする努力をすべきでしょう……?」
言いながらバーバラは、ぽん、とクロエの肩に手を置くが、すぐにクロエはそれを振り払う。
「お断りよ、そんなことする気はないわ」
「……強情な奴」
直後、バーバラの表情がいらだったものに変わり……取り巻きたちが殺気立ち始める。
「ここで意地張ったってあんたに得なんかないんだよ……大人しく言うとおりにしといた方がいいって、何でわかんないんだい?」
凄みを利かせて脅すように言うが、クロエはそれでも首を縦に振る様子はない。
それを悟ると、バーバラは舌打ちをしながら踵を返した。
「……もう少しだけ時間をあげるよ、その時まで考えときな」
「……っ! 何度聞かれたって……」
聞こうともせずに、バーバラ達はその場から歩き去った。
残されたクロエとネリドラの耳に……少しして、還房時刻を告げる看守の声が届いた。
それに従い、房に帰っていったクロエとネリドラは……その後ろ姿を見送るように、足を止めてみていた者たちがいたことに気付かなかった。
丁度共有スペースにさしかかった……ミナトとナナ、そしてギーナの存在に。
☆☆☆
雑居房に戻ったクロエとネリドラは、普段そうするように、他愛ない雑談をして、消灯までの暇な時間を過ごしていた。
2人とも嗜好品や娯楽用品はほとんど持っていないため、こうして時間をつぶすことが多いのだ。
「……そういえば、さっき聞けなかったけど……」
会話の中で、ネリドラはクロエに、掲示板の治験の所を見ていたことについてたずねた。
先程と同じく、興味があるのか……と。
しかし、クロエは首を横にふった。
「そうじゃないの、ただちょっと気になることがあっただけ」
「……そう、ならいい。お勧めできるようなものじゃなから」
と、ネリドラ。
「? どういうこと?」
「薬の人体実験は……危険が大きいから。臨床試験をする際の安全基準には研究機関ごとにばらつきがあるし、囚人を使う場合にはよりそれが重要視されなくなる。組み合わせ次第で思わぬ作用を起こすこともあるから……いくら報酬が高額でも、止めた方がいい」
興味があるようなら止めるつもりだった、と話すネリドラに、クロエは微笑んで礼を言った。
「ありがとう、ネリドラ。でも大丈夫よ、そんなことしないから……ちょっとね、気になることがあっただけ」
「……何が気になるの?」
するとクロエは一瞬、すこし悲しそうな顔になり……目を伏せがちにした。
「……この間……まだ私が懲罰房にいた時だったんだけど……知り合いに会ったの」
「……?? 知り合いって……懲罰房で?」
「うん。制服着てたから、軍に復帰して、ここの看守として赴任してきたのかな、って思ってたんだけど……彼女が来て少しして、あの人体実験の労役が張り出されるようになったみたいでさ。何か関係あるのかなって、ちょっと気になっただけ」
「……その知り合いって、軍医か何かなの?」
「ううん、私の知る限り、そんな技能なかったはずだけど……でもよく考えたら、別に最近来たんじゃなくてもっと前からいたけど、今まで会わなかっただけかもしれない。私、新入りだし」
そもそも気にしたってしかたないよね、と笑いながら言うクロエ。
そこまでクロエの話を聴いて……ふと、ネリドラはあることを思い出した。
クロエが『懲罰房にいた頃』。それはすなわち、ネリドラもまた『懲罰房にいた頃』でもある。
その頃に会った、ある気になる看守のことを……なぜか思い出していた。
「……そういえば」
「ん?」
「私もその時……見覚えの無い看守に会った。多分、新入りの」
ネリドラが思い出していたのは……言わずもがな、ミナトのことである。
女子監獄にはそう多くない、男の看守。しかも、見たところ年齢が自分と違わなそうなくらいに若いこともあって、記憶に残っていたのだ。
しかしもう1つ……ネリドラは、彼について覚えていることがあった。
「私、もう5年くらいここにいるから……看守の顔は大体知ってる。クロエが言う、知り合いの看守の特徴ってどんなの?」
そう聞かれ、クロエが知り合いの彼女……ナナの特徴を話す。
それを聞いたネリドラは、
「……記憶に無い。間違いなく、最近入った看守だと思う」
「そうなの? じゃあ、もしかしてやっぱり、治験にも関係してるのかな……」
「わからないけど……今思うと、私の覚えてる方の男看守は、関係あると思う」
「? どうして?」
「……手から、薬品の匂いがしたから」
ミナトに食事の世話をされたあの日……ネリドラは、研究中にミナトの手に染み付いた、手を洗っても落ちなかったわずかな薬品のにおいを嗅ぎ取っていた。それゆえに、より彼のことが記憶に残りやすくなっていたのである。
「専門家とかしか使わないような、特殊な薬品の匂いもまじってた……だから、多分あの看守と、最近の人体実験の労役は、関係あると思う。そもそも、今は人事異動の時期じゃない。同時期に来たってことは、多分その知り合いも……無関係じゃないと思う」
「……そっか……」
それっきり、しばらく会話が途絶える。
何を考えているのかは知れないが、クロエは体育座りで、空中に視線をさまよわせている。
少し声をかけづらく感じ、ネリドラはしばらくの間、黙って静かにしていた。
しばらくそうしていると、クロエが口を開いた。
「ねえ、ネリドラ……バーバラのことは知ってる?」
どうやら、話題を全く別のものに変えることにしたらしい、と悟ったネリドラは、何も言わずに新しい話題に乗った。
もっとも……愉快な話題ではなかったが。
「色々知ってるけど……何が聞きたいの?」
「……この間から……っていうか、ここに来てからずっとなんだけどさ、仲間になれって誘われてるの。やっぱりその……この監獄って、派閥とかあったりするの?」
そうたずねられたネリドラは、少し考えて、
「……あるけど、あなたが誘われてる理由は……多分それだけじゃない」
「? どういうこと?」
「……少し、アレな話になるんだけど……いい?」
☆☆☆
「あ、そうだアリスさん、1つ聞いてもいいですか?」
「? 何でしょうかミナト殿?」
ただいま、夕食の席。
王女様の診察から戻った僕らは、荷物を部屋に置いてから再度ここに集合した。
その際、昼に別れたスウラさんと、偶然アリスさんとも合流できたので、皆で一緒に食べてるんだけど……丁度いいので、こないだから気になってたことをアリスさんに聞くことにした。
「知ってたらでいいんですけど……バーバラ・ヒーストンって囚人について」
その名前を出すと、薄く微笑んでいたアリスさんが……その笑みを引っ込めて、眉間にしわを寄せた。あれ、何だこの反応?
「……囚人番号185番ですね。彼女が、何かしたのですか?」
「いや、何かしたとかされたってわけじゃないんですけど……最近、何だかこっちをじろじろ見てることが多くて……ちょっと気になったもので」
勤め始めてからしばらく経った頃からだった。
何か、監視とか点呼、連行とかの仕事中に、やたら視線を感じることが多くて……その方向を見ると、ほとんどいつも同じ女囚が僕のことを見てるのだ。
女子監獄には珍しい男性の看守だから、視線を感じることなんかしょっちゅうだけど、そういう視線は大概1度っきりで、何度も同じ人物からの視線を感じることは少ない。
が、囚人番号185……バーバラだけは違った。ことあるごとに僕の方を見てきていた。
それからしばらくすると、他にも何人か、同じように僕を注意して見ているような視線を感じる女囚が現れ始め……そしてそいつらは全員、バーバラの取り巻きなのだ。
休憩時間とかに、バーバラを中心にしてしゃべったり歩いたりしているその姿は、つるんでるヤンキーそのものって感じだった。グループとか、派閥……とかなのかな?
そんな感じのことを話すと、黙って聞いていたアリスさんは、はぁ、とため息をついて、
「なるほど……ミナト殿に目をつけましたか」
「は?」
え、何それ? 何、目をつけたって?
不穏な発言に、自然とその場にいる全員の視線がアリスさんに集まる。
「……順を追って話しましょう。185番は、この監獄に存在する……まあ、『派閥』と言っていいでしょう。その1つのグループのリーダーなのです。問題児、という認識でいいかと」
聞いてみると、ホントにヤンキー集団とその頭目みたいな感じだった。バーバラ・ヒーストンとその取り巻きたちの性格は。
学校でグループ作ってる不良よろしく、気に入らない女囚を相手にしてのいじめや、他の派閥とのいざこざが数多く噂になってる。
素行も悪く、問題行動も多いため、看守の警戒対象になってるんだそうだ。
しかし、懲罰になるような過激ないじめに関しては、証拠が見つからないためとがめることが出来ない、あるいは発覚すらせずに闇に葬られるのだという。口頭での注意で済むような小競り合いや口げんか程度はよくあり、目撃している看守も多いらしいけど……決定的なものは無いと。
そういった行為による被害者らしき女囚は何人もいるらしいんだけど……目撃者も証拠も無い上に、被害者も『自分で転んだ』とか言って口を閉ざすため、何も出来ないんだとか。
……ますますヤンキーみたいだな。学校の。
手下を上手く使ったり、気の弱い被害者を『しゃべったらわかってんだろうな?』とか言っておどして口をつぐませて好き勝手やってる感じの。
そして、それ以外にもう1つ……バーバラやその取り巻きたちを懲罰にかけられない理由があった。
バーバラ達に限らず、ここの囚人達は皆、腕に焼印が押されている。
最初に見たときちらっと説明貰ったけど、あの焼印は魔法的な処理で、規則違反をしたりする囚人を戒めたりすることも出来るそうなのだ。奴隷の首輪みたいに。
そして、規則違反をした囚人の焼印は赤く色が変わり、じくじくと痛み出すため……それを隠しておくことは出来ない……はずである。
バーバラやその取り巻きたちにそういった症状が出ないため、無罪放免として処理するしかない……というわけだそうだ。皮肉にも、こっちが施した焼印が、逆の意味で裏づけになってると。
……魔法処理の焼印をごまかしてる……ってのは考えづらいな。手下とか、規則の裏をついて上手くやってる……ってことなのか? ヤンキーみたいに。
「そういうわけで185番は、監獄内でも要注意人物とされている1人なのですが……中でも、特に厄介というか悪い噂がありまして……」
「特に、悪い?」
「ええ……あまり考えたくないというか、あってはならない話なのですが……以前から、彼女達が一部の男性看守を手なずけている、という話がありまして」
「「「…………は?」」」
……そこから聴いた話を要約すると……要は、アレだ。
そのバーバラ派閥は、自分たちが『女』であることを最大限活用し、一部の男性看守に対してR18な内容の接待を隠れて行うことで、優遇を得ている……なんていう話があると。
しかし例によって証拠がない。なのであくまで『噂』。
そのバーバラが『目をつけた』ってことは……ちょっとちょっと、勘弁してよ……。
「ですが……ミナト殿に限っては、心配は要らないと思います」
すると、なぜかアリスさんがそんなことを。え、ちょっとどういうこと?
「どういうこと、アリス? 誘われてもミナトさんなら断るだろう……っていう意味じゃないようだけれど?」
「簡単ですよナナ、バーバラは多分今、ミナト殿を品定めしているのです。自分たちが体を使って篭絡する分のうまみがある相手かどうか。そして……篭絡できそうかどうか」
「ま、当然よね……いざ誘ってみて、そいつがガッチガチに堅くて不正を許さないようなやつなら、自滅以外の何物でもないわけだし。そりゃ事前に調べて、色気で落とせそうな看守だけをターゲットにするでしょうよ」
と、義姉さんの補足。
「ああ、なるほど……ならば確かに、ミナト殿は大丈夫だろうな」
「そうですね、ミナト殿の誠実さや真面目さ、謙虚さは全員よく知るところですから……脈が無さそうだと判断すれば、バーバラとやらも誘わず諦めるでしょう」
と、スウラさんとギーナちゃん。
……褒めてもらえるのは嬉しいんだけど、若干恥ずかしいな……なんて思ってたら、
「もっとも……一旦『身内』になっちゃえば、そこから先はもう遠慮ナシなんだけどね~……」
義姉さんが横からポツリと呟いて、ナナ以外の全員から『え?』なんて視線が飛んできて……コーヒーを噴出しそうになったりした。
ちょ、義姉さんシャラップ!! 誤解を招くような発言をしないように!
☆☆☆
さて、ミナト達の夕食は、最終的にバカ話にシフトして終わりを告げ、結局バーバラの行っている(可能性のある)悪事についても、さらっと話された程度で終わってしまったが……ある雑居房では、もう少し詳しい、そして生々しい話が繰り広げられていた。
「……そういうわけだから、バーバラは新入りの女囚の中でも、見た目や発育がいい人を選んで手下にしようとするの。影で篭絡して厚遇を貰ってる看守への、接待のために」
「なるほど、それで私も狙われてるってわけなんだ……ならなおさら、頷いたりするわけには行かないわね」
ネリドラの説明を聞いて、クロエは自分が置かれている状況を正確に把握した。バーバラの本性と共に。
「それにしても……そんな看守がいるなんて……。確かなの、ネリドラ?」
その問いに、首肯して話すネリドラ。
「誰がそうなのかまではわからないけど……確実に何人かはいると思う。そうじゃないと説明がつかないことも多いから。バーバラ達の規則違反に、焼印が反応しないのもその1つ」
「焼印が!? 何で?」
「……可能性は2つだと考えてる。1つは……彼女達の焼印そのものが、反応しないように細工されてる可能性。でも、これは無いと思う……焼印の術式は複雑だから」
「……もう1つは?」
「反応はするんだけど、その直後に看守がそれを消してる……っていう可能性」
囚人達の腕の焼印は、懲罰対象となるような規則違反に反応して変色し、痛みを覚えさせる……というのは、ミナト達も聞いたとおりである。
しかしその反応は、一部の看守が使うことの出来る解除の術式によって消すことが出来る。赤く変色した焼印を元の色に戻し、目に見える証拠を残さないように出来る。
本来は違反者を捕えた後で行う処置だが、もしこの術式を使える看守がバーバラの味方についていれば……
「……なるほど、ね。違反して焼印が反応しても、協力者の看守がすぐに消しちゃうわけだ」
「一部とはいえ、看守を味方につけてるバーバラが、この監獄で出来ることは意外と多い……気をつけて、クロエ。できるなら……なるべく人のいないところには行かない方がいい」
「うん……ありがとう、ネリドラ」
雑居房の中で、自由の無い者同士の友情を育みつつある2人。
程なくして消灯時間になるまで、そのまま2人は語り合っていた。
☆☆☆
「……どうするの、バーバラ?」
「何がよ? 例の新入り看守? それともクロエ?」
「両方よ……あの黒髪の看守はそろそろ赴任して一ヶ月になるけど、囚人に色目を使ってる様子は無いわ。それどころか……たびたび行方不明になるの」
「行方不明? どういうことよ」
「ほとんどいないのよ……仕事してるのを見てる囚人が。まあ、偶然って可能性もあるけど……もし聞いて回った情報の通りなら、1日のうちわずかしか監守の仕事に当たってない。それ以外の時間……どこで何をしてるのかさっぱりわかんないの」
「へェ……ワケありだねそりゃ。わかった、やめとこう……初心なボーヤに見えたから、2、3発ヤってやればいいなりに出来るかと思ってたけど……危険だものねェ」
「わかった。で、クロエは?」
「そっちは逃す手は無いね。そうね……今度の機会にでも」
「返事を聞くんだったっけ?」
「ええ。もっとも……首を縦に振ってもらう以外の返答なんてないけどね……。看守長も楽しみにしてくれてるんだから、きっちり仲間に入ってもらわないとねェ……くっくっくっ……」
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