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第176話 盲目の白き姫君
再びオフィスに戻った僕らは、そこから更に別な連絡通路へ向かった。
そこは、今まで通ったどの通路よりも厳重に警備がなされていて……なるほどこりゃ、副所長のミーシャさんの同行無しじゃ通れないってのもわかるわ。
オフィスからほぼ一本道、されどとんでもなく長い連絡通路を、いくつものチェックポイント的箇所をパスして進む。
さすがは王女様……警備が厳重だ。
平坦な通路と下への階段が半々くらいで構成される通路をひたすら進んでいくと――帰りちょっと疲れそうだな……――ついに最下層に到着。
そこでさらにいくつかのチェック経て、僕らはお目当ての場所に到着した。
「ここが……」
「はい。リンスレット王女がいらっしゃる……最下層、超特別収容房っす」
大きさ3m近くある巨大な扉に、いくつもの鍵がつけられて施錠されている。
それを開けた先に……さらに扉。
それも開けるとまた扉……とまあ、3つも分厚い扉を通って……ようやく、部屋の入り口と思しき小さめの扉の前に立つ。
一本道なのに、チェックも含めてここ来るだけで結構時間かかったな……えらい疲れた。まあ、身分考えれば仕方ないんだろうけど。
その扉にミーシャさんが近づき、こんこん、とノッカーを鳴らす。
「……どなた?」
すると、扉の向こうから……耳あたりのいい、若い女性の声が聞こえてきた。
「副所長のミーシャっす。以前お話いたしました、冒険者のミナト・キャドリーユ殿をお連れしましたんで、お目通りをお願いいたしますっす」
「あらまあ、そうなの……ええ、どうぞお入りになって?」
『失礼するっす』と声をかけて、ミーシャさんが扉を開く。
その後に続いて、僕とナナ、義姉さん、アリスさんも中に入った。あとアルバも。
そこは、病室みたいにいきなり寝室?になっていて……部屋の真ん中に、天蓋つきの大きなベッドが置かれていた。
部屋は豪華で、色々と調度品や嗜好品も目に付く……貴族の屋敷みたいだ。明らかに、監獄の中の一室って感じじゃない。ここだけ完全に別世界である。
そして、そんな部屋のベッドの上には……横になって上半身だけを起こしている、1人の女性がいた。
見た目は……聞いてた年齢よりもうちょっとだけ大人っぽく見える。ワンピースタイプのゆったりとした寝間着を着ているけど、その上からでもわかるくらいに、女性らしいスタイルのよさをしていた。……何がとは言わないが、大きい。
『美しい』よりは『かわいらしい』という表現が似合いそうな顔つき。けど……言っちゃ悪いがあんまり姉や妹に似てないな。
そして特徴的なのは……白髪と間違えそうなほどに明るい色の、シルバーブロンドの長髪。全体的にふんわりとしたウェーブがかかっているせいか、実際の髪量よりもかなりボリューミーに見える。
おおむねそんな感じの見た目のこの部屋の主、リンスレット第二王女は……なぜか目を閉じたまま、顔だけをこちらに向けてにこりと微笑んだ。
「ようこそいらっしゃいました……ミナト・キャドリーユ殿と、そのお仲間の方々ですね。どうぞ、皆さん中にお入りください」
「あ、はい、失礼します」
招かれるまま、全員揃ってリンスレット王女の部屋にお邪魔する。ナナ、義姉さん、アリスさんも入り……最後に入ったミーシャさんが戸をしめた。
「申し遅れました。私は、ネスティア王国第二王女、リンスレット・ネストラクタスと申します。このような場所からの挨拶になって心苦しいですが、ご容赦ください」
そう自己紹介して、軽く会釈する第二王女様。
たったそれだけでも……洗練された優雅な仕草が見て取れた。お辞儀の際にふわりと揺れた銀髪が、より一層神秘的というか、高貴な雰囲気に拍車をかけている。
つくづくあの第一王女様に似てないな……まああの人もやろうと思えばそれなりに優雅に振舞えるのかもしれないけど、少なくとも想像は出来ない。
僕らも簡単に自己紹介していく。
王女様はその都度、会釈程度だけどおじぎを返してくれた。あまり頭を下げるイメージの無い王族・貴族には珍しい感じだけど……僕としては、こういう謙虚さや丁寧さがきちんとある人は、元日本人としては好印象だ。
物腰も柔らかいし、付き合いやすい感じがする。
しかし、だからこそ感じる風格とか、威厳みたいなものも、確かにあった。
印象とかとは関係なく、その辺を感じ取って無意識に背筋が伸びる。
「お話は、姉から手紙でうかがっております。私の病気を直すために、遠路はるばるこのような所まで来てくださったと……それだけでもう、感謝に言葉もありませんわ」
「いえ、その、えと……もったいないお言葉、です」
「くすっ……緊張なさらないで下さいな。ここは王都・王宮ではありませんし、私はこの通り、お客様だと言うのに寝たまま話さねばならず、礼を尽くすに事欠く有様……あなた方だけがかしこまるのでは不公平ですわ」
緊張してるのがわかったのか、微笑みながらそう促してくれる王女様。場の空気その他を読むのも得意みたいな……病人でも、さすがは王族。
とか思ってたら、『それに……』とさらに口を開く王女様。
「この通り……今の私の目では、あなたがたを映すことは出来ませんから。大いに楽にしてくださって結構ですよ」
そう、今度は少し悲しそうに言って……閉じていたまぶたを開く。
その瞬間、
「「「…………っ!!」」」
その光景に、全員が息を呑んだ。
リンスレット王女の目は、本来、茶色や青色、あるいは灰色なんかの『瞳』があるはずのところが……濁った白色に染まっていた。
瞳がないわけじゃない。瞳が白いのだ。輪郭はわかるけど、遠くから見ると、その周りの白目の部分とちょっと区別がつきづらいかも。
見えないからだろうが、目の焦点は微妙にあっておらず……白い目の瞳孔は開いているように見える。
「……気持ち悪いでしょう? ごめんなさい、嫌なものを見せてしまって……」
「えっ? あ、いや、その……」
「いいのです……自分でも、わかっていますから。お目汚しでしょうし、以後は目を閉じたままにさせていただきますね……」
悲しそうにうつむき、また目を閉じる王女様。
1分前と比べて……何だか、ベッドに座るその姿が痛々しく思えた。
「それで、ミナト殿。診察等は、今日からもう行うのでしょうか? であれば、早速で申し訳ないのですが……始めていただけないでしょうか?」
「あ、はい……承知しました。ええと……お側に寄っても?」
「もちろんです。よろしくお願いします」
と、王女様から許可が出たので……早速だけど、診察に移ることに。
もっとも、最初は問診からだけど。
帯に収納していたバインダーとペンを取り出し、王女様のベッドのそばに行こうとして……あー、その前にちょっと。
「えっと、すいません王女様……少々よろしいでしょうか?」
「? 何でしょうか?」
「その、不躾な質問で申し訳ないのですが……」
『先ほどからこの部屋、視線を感じるといいますか……』
「っ!?」
その部分だけ『念話』を使って周囲に伝えた僕の一言に、ナナが反応し、即座に目だけを動かして周囲を探る。セレナ義姉さんも、彼女ほど驚いてはおらず、普通にたってるけど、同じように周囲を探っていた。
視線の主……ともすると、もぐりこんでいるかもしれない曲者を探して。
しかし……アリスさんとミーシャさん、それにリンスレット王女は……驚きこそしているものの、それは、僕が言ったことに対してだけで……周囲に警戒を向けたりする様子はなかった。
あ、コレはひょっとして……やっぱり余計なお世話だったかな?
すると王女様、くすりと笑って、
「ふふっ……聞いていた通り、優秀なのですね。大丈夫ですよ、心配しなくても。エル、ビク、出ていらっしゃい」
『『はい』』
その瞬間、部屋の中2箇所で空間が揺らぎ……滲み出すように、そこに隠れていた者たちが姿を見せた。
2人とも、20cmかそこらの身長で……背中には薄い羽。
1人は赤い髪を、もう1人は緑色の髪をそれぞれツインテールにしている。服装は……軍服でも看守の制服でもない、騎士団の制服だ。
超ミニサイズの2人の妖精ちっくな女の子は、ふわりと宙を舞って王女様の横に馳せ参じ、王女様とこちらにそれぞれ一回ずつお辞儀をした。
「驚かせてしまったみたいでごめんなさいね……彼女達は私直属の女官で、護衛なのです。誰か外部の者を招き入れる時は、彼女達に隠れて警護をしてもらっているのです」
自己紹介して、と王女様に促され、こちらに再度向き直る2人。
「はい、殿下。お初にお目にかかります……ミナト・キャドリーユ殿。王女殿下の護衛を務めさせていただいております、エルタージャ・ドミニクと申します」
「同じく、ビクーニャ・ドミニクと申します。よろしくお願いします」
ふたたぴお辞儀、ぺこり。
どうやらさっきは2人共、認識阻害系の魔法で姿を隠していたらしい。隠れて王女様を見守り、何か会ったらすぐに飛び出せるようにしてたってわけだ。
もっとも、僕はこの部屋に入った当初から視線に気付いてたけど。
そして何なら、潜んでる場所もわかってた。ちょっと集中して探れば看破できるレベルの隠遁だったし……肩の上のアルバが、2人は隠れてた場所をしきりにちらちら見てたしね。こいつの感知能力はごまかせなかったってことだ。
しかし、不審な視線ではあったものの、敵意・殺意の類は特に感じなかったし、いくら外に厳重なセキュリティがあるかたって、部屋の中に王女様の護衛の人が1人もいないから、ひょっとしたら王女様の護衛かな、とは思ってた。
だとしても推測だし、放っとくわけには行かないから言ってみたんだけど。
それはそうと……この2人、身体的・種族的特徴といい、『ドミニク』っていうファミリーネームといい、もしかして……
「あー……すいません、2人共、自分の姉っす」
と、ぽりぽりと頭をかきながら……僕の背後にいたミーシャさんが。
「こらミーシャ! 王女殿下の御前よ、いつもいつも言ってるけど、言葉にきちんと気を使いなさいっ!」
「あなたもよ、ビクーニャ。申し訳ありません、殿下……騒々しくなってしまい」
釣り目で気の強そうな、赤い髪のビクーニャさんがミーシャさんを注意し……そのビクーニャさんを、大人しそうなエルタージャさんが注意していた。
割と性格わかりやすい感じだな……この3人。
ぺこりと謝罪するエルタージャさんに、王女様は笑って、
「気にしていないわ、仲がいいのはいいことだもの。引き続きお願いね、2人とも。それと……何か手伝えることがあったら、ミナト殿を手伝って差し上げてちょうだい」
「「はっ」」
エルタージャさんとビクーニャさんは声をそろえてそう返事をし、邪魔にならないように2人とも少し離れた。息ピッタリだ。
さて、じゃあ今度こそってことで僕は、王女様のベッドの近くに行き……バインダーを開いて、診察を始める。
ああ、アルバは義姉さん達と一緒に待ってて。いらん警戒させるから。
一挙手一投足を護衛の二人が注意深く見てるのを感じるけど、気にしてたらキリないので気にせずに。ええと、じゃあまずは問診から……
☆☆☆
時間にして約30分強、問診は続き……ようやく終了。
質問1つ1つに、王女様は出来る限り詳しく、丁寧に答えてくれたので……割と多くの有用な情報が手に入った。
それによると……『白夜病』が発病したのは、今から2年と8ヶ月ほど前。
疲れ目に似た目のかすみや手足のしびれから始まり、その後徐々に視力が低下していった。味覚など、他の感覚も、程度に差はあるものの、同様に失われていった。
一番最初に失われたのは味覚。今から2年と4ヶ月前……すなわち発病からわずか4ヶ月で、リンスレット王女はものを食べる楽しみを奪われた。
次に視力。今から1年と2ヶ月前に喪失。真っ白な世界に閉じ込められた。
残るは『聴覚』『触覚』『嗅覚』の3つ。うち、聴覚と触覚は比較的無事みたいだけど、嗅覚はかなり低下してきているらしい。
その他にも色々と情報を得たのに加え、研究用のサンプルとして、王女様の髪の毛と唾液、涙、それに血液を少し貰った。
血液に関しては、体を傷つけることになるわけだから、護衛の2人に難色を示されたけど、王女様が説得してくれた。治癒の薬のためなんだから、そのくらい全然構わない、って。
結局、血を採るための針を刺す所から採取まで、やり方を教えてエルタージャさんにやってもらうってことで妥協してもらい、採血を完了。これでサンプルは揃った。
なお、傷は即座にエルタージャさんが治癒魔法で治してました。
このくらいで今日の診察はひとまず終わりでいいかな……と思い、部屋を後にすることを伝えようとしたその時、
何やら少し躊躇しながら……王女様がおずおずと話しかけてきた。
「ミナト殿……お帰りいただく前にもう1つ、お話しなければならないことがあります」
「? 何ですか?」
「……私の身を蝕む病について、です」
何やら、さっきまで以上に神妙そうな様子の王女様。
その様子から何かを悟ったらしい、両脇に控えていたミニサイズ女官2人が、なぜか慌てた様子で王女様をいさめにかかっていた。……何だ?
「で、殿下? その……お、お話しになるのですか?」
「さすがにそこまで打ち明けるのは……それに、ミナト殿は部外者の上に、男性ですよ?」
「構いません、ビク、エル。……どの道、調べられればわかってしまうことですし、放置しておけるようなことでもありません。それに……」
一拍、
「お姉さまもおっしゃっていましたし……実際にこうして触れ合ってみて、私には感じられるのです。ミナト殿は信じるに足るお方だ、と」
……なんか、大層な感じで信頼されてるけど……コレ、一体これから何を打ち明けられるんだ?
難色を示していた2人の女官も、静かに、だが力強く言い切った王女様の弁に、最終的には納得したようだった。
そして、なぜか王女様に手を貸して、彼女をベッドのそばに立たせる。
「……ええと……リンスレット王女?」
「ミナト殿……話すのが遅れて申し訳ありません。実は……私の身を蝕んでいる病は、この『白夜病』だけではないのです」
「「「!?」」」
その告白に、僕のみならず、後ろで控えている義姉さんとナナも驚いていた。
病気が『白夜病』だけじゃないって? 聞いてないぞ?
一体もう1つ、どんな病気が……
そして僕らの目の前で、王女様は、なぜか今日一番つらそうな表情になりながら……2人に手伝ってもらいながら、服を脱ぎ始めた。
これにもまた驚いて、しかしいきなりのことだったので止めるより早く脱ぎ終わってしまう。どうやら、寝間着の下には何もつけていなかったらしく……一糸纏わぬ王女様の裸体があらわになる。
が……その裸体を見て、僕ら3人は……絶句した。
寝間着の上から見て取れた通りの、色白の肌と女性らしい豊満な体つき。
当然僕も男であるわけなので、女性の体、裸には、保健体育的な意味での興味がある。
……が、仮にそれを放っぽって考えたとしても見とれてしまいかねない、いっそ芸術的とすら言えそうな美しさがそこにあった。
……これだけなら、王女様の裸に思春期真っ盛りのエロガキが見とれました、まる、で終わるんだけど……
……問題は、その色白の裸体のいたるところに……毒々しい赤色の発疹らしきものが噴き出て、まるで悪趣味な刺青のように体を覆っている点だ。
ちょっと待った……コレってまさか……
「邪血……疱瘡……!?」
ショックを受けたような声でナナがそう呟いたのが聞こえたらしい。
裸のまま、恥ずかしい所を隠そうともせずに直立している王女様は……今日初めて、終始顔に浮かべていた笑みを引っ込め……辛そうに口を真一文字に結んでいた。
☆☆☆
『邪血疱瘡』
毒々しい赤色の発疹が体に浮き出て、その部分が熱を持って皮膚が硬くなり、動きづらくなるとともに……発作が起こると焼けるような痛みが襲う。
放置しておくとどんどん面積が広がる上、その部分の皮膚組織が壊死してしまい、切除・切断することになったり、死に至ることもある病。
ただし、それは『放置すれば』の話。
そもそもこれは別に『不治の病』ではない。治療法も見つかっていて、きちんと迅速に処理すれば9割方治る病と言える。
まあ、治るかどうかは程度その他の要素による部分もあるけど。
なので、この病にかかったからと言って、死を覚悟しなければならない、ということはそうそう無い。体力の無い子供や老人、または他の病気と併発でもしていない限り。
今回、王女様は『白夜病』と併発してしまってるわけだけど……実は、今問題になっているのはそこでもなかったりする。
問題はこの病は……感染経路のほぼ100%が、親から子への遺伝であること。
そして、王女様の両親はいずれも……この病ではなかったこと。
『邪血疱瘡』は親から子へ遺伝しないこともあるが、親が『邪血疱瘡』でないのに子が突然発病する、というケースはほぼない。
誰かが『邪血疱瘡』にかかったのなら、ほぼ間違いなくその両親のいずれかがこの病を持っている、と言うことが出来る。
そしてつまり、もし子が『邪血疱瘡』であるにも関わらず、両親がいずれもそうでなかったとなると……同時に、恐ろしい推測が立つ。
その子供は、両親で無い誰かの血を引いた子ではないか……と。
拾われてきた捨て子かもしれない。
父親が愛人に産ませた子かもしれない。
母親が不倫で作った子かもしれない。
……とまあ、軽く1つの家庭を崩壊させかねない疑念が生まれてしまうのだ。この病の発病によって。
それが今……あろうことか、国家中枢の『王家』で起こっている。
ネスティア国王アーバレオン・ネストラクタス、
故・王妃アンジェリーナ・ネストラクタス、
どちらもこの病にかかってはいなかった。それどころか、家系図を遡ってみても、王族がこの病にかかったことは皆無という悪夢のような現実。
もちろん、この病に関しても全てが明らかになっているわけではない。ということは同時に、何らかの理由で親からの遺伝無しで子が発病するケースだってあるかも知れないのだ。不倫で生まれたとかじゃなく。
……今のところ、見つかってないけど。
そして、そういう懸念が生まれるからこそ……病気のつらさや、患部を見せる際に裸になる恥ずかしさ以上に……この病気について話すことそのものがつらかったってわけだ。王女様には。
何せ……自分が、愛する父と母の子供じゃないかもしれないんだから。
……その真実がどうなのかはまだわからないけど……とにかく僕は、急遽予定を変更。
『白夜病』『蝕血病』に加え、『邪血疱瘡』の薬も作ると共に……その病気の詳しいメカニズムを研究することになった。
ひょっとして……これか? 第一王女様が、第二王女様についてろくに情報公開をしてくれなかった理由って……。
ちなみに第一王女様との契約には『邪血疱瘡』云々は含まれてないし、第二王女様には『この病気の治療はこちらで独自に行えますから、薬は結構です』と言われている。
あくまで、『白夜病』と『蝕血病』の薬だけに集中してくれていい、と。ただしその際、第二王女様はこの病にもかかっていることを考慮して、薬の服用によってこちらに副作用というか悪影響というか、が起こらないようにだけお願いしたい、と。
が、僕の方から『出来れば作る』と申し出た。
理由は前と同じ。『明日のご飯が云々』。
ただ、その旨をアリスさんとミーシャさんに申し出た所、『それについてもこちらで同様にバックアップします』と言われた。
なんでも、第一王女様から事前に『そう申し出てきた時は』ってことで指示を貰ってたのだという。他の病の薬の研究と同様のバックアップをしろと。そして、その薬も合わせて3種類全て完成させたときには、更に報酬を上乗せするつもりだと。
……これらのことから察するに、第一王女様、僕が『邪血疱瘡』のことを知れば、ついでとばかりにその治癒も申し出てくれるかもしれない、と読んでたと思われる。
その時は、お言葉に甘えるように、と指示していたわけだ……相変わらずちゃっかりしてるというか、何と言うか。
が、別にそのへんは僕は気にしてない。
このことで第一王女様を悪く思ったりすることはない。……呆れてため息つくくらいはするけども。
話すわけには行かなかった理由もわかるし、そもそも最初にこの病気のことも聞いてたら、僕はどっちみち受けてただろう。片方だけ治してもう片方は放置ってのも後味悪い。
もちろん、本来の依頼の2つを優先させてもらうし、コレにバカに時間かかるとかそういうことになったら、考え直すかもしれないけど。自前で薬を用意する準備進めてるんだから、いざとなったら放棄しても大丈夫だろう。あまりそうしたくはないけど。
……さて、そのためにも……
☆☆☆
「ってな感じでさー、また厄介な任務引き受けちゃったなーと思って今めっちゃ不安な感じなんだよねー……はぁ」
『あんたマジで毎日寝る前にかけてくるわけ?』
タブレットのテレビ電話の向こうのエルクのジト目に癒されつつ、本日は終了。
さて、明日から仕事だ……。
前例があるだけに、今回の話の反響がちと怖かったり。
…また誰かのヘイトが増してやしないかと…作者は意図してないんだけどな…
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