元朝日新聞記者の植村隆氏が、「署名入り新聞記事の内容は捏造である」と記されて名誉を棄損されたとして櫻井よし子氏やその原稿を載せた出版社を提訴している裁判の第二回口頭弁論が6月10日、札幌地裁で行われた。

 私はこの裁判を支える会の共同代表を務めているのだが、大学の授業があって残念ながら傍聴することはできなかった。

 無事終了したという報告とともに、先ほど、被告となっている出版社のひとつである「ワック」の準備書面が植村さんの弁護団からメールで送られてきたのだが、それがなかなかすごいものであった。

 全文をここにあげることは控えたいが、「ワック」の代理人である弁護士が作成したと思われるその準備書面の前半部では、吉田清治氏の証言がいかに間違っていたが延々と述べられている。そこは朝日新聞の慰安婦報道を批判する人たちがよく持ち出す話の域を出ておらず、とくに驚くこともない。
 
 問題は後半部だ。書面は朝日新聞がそれを取り上げた咎を責めるとともに、突如、吉田証言の間違いが発覚したあとに植村氏はこういう記事を書くべきだった、といったアドバイス(?)を行う。その文体というか口調があまりにフランクすぎるのだ。
 一部を引用しよう。

「即ち、原告の記事は、要するにこれまで日本人慰安婦はいましたが、朝鮮人慰安婦の人も見付かりました。しかし挺身隊出身ではなく、日本軍に暴行脅迫で連れ去られた人でもありませんでしたというべきものであり、だから吉田清治証言によりガックリしていた日本国民の皆様、良かったですねとでも書くべきものであったろう。それが最も正確だからである。」

 この後も、こんなカジュアルな口調の文章が何か所にも登場する。
 いささか駄洒落めいてしまうが、「裁判に公式に提出された準備書面に『ガックリ』などの単語があって『ビックリ』」だ。 
 私はこういった書面に明るいわけではないが、最近は裁判でも、ツイッターのつぶやきか個人ブログのような書き方がトレンドなのだろうか。もちろん、大切なのは書面の内容であって文体ではないが、このやっつけ感満載の文章から内容も推して知るべし、とだけはつけ加えておこう。
 早く被告サイドが全文をどこかに公開してくれないかなー(とカジュアル風に)。