永田町を向くテレビ局
明治期の資料を調べていると、興味深い記事に出会った。
明治9年6月、浅草観音堂に新聞各社が集まって「供養祭」が開かれた。何を供養するかといえば「新聞」だという。政府の言論弾圧によって死した新聞を供養するという、いわば政府に抗う試みで、弔辞は翌日の朝刊に掲載された。
そのくらいのことをするのだから、もちろん新聞は死んでいない。この後に難癖をつけられて投獄された記者たちは、釈放後、獄中体験記を連載にまでしている。権力がメディアを操作しようとするのはいつの世も同じだが、当時の新聞人たちには気骨があった。
新聞の始まりは木製の瓦版だ。今も昔も「知りたい・伝えたい」という欲求によって成り立つ商売である。テレビにネットと情報伝達のツールは発達してきたが、伝え手の仕事ぶりはどうか。
砂川浩慶著『安倍官邸とテレビ』は、官邸にコントロールされっぱなしの主要メディアの凋落を余すところなく解説している。
本書によると、最近は政権がメディアを選別して取材に応じ、選ばれたメディアは独占取材と大々的にアピール。政権に批判的な新聞社やテレビ局は徹底して干されている。
しかも、この問題を記事に取り上げた全国紙は皆無で、発信しているのは地方のブロック紙ばかりとか。永田町からの距離が、報道の自由度に比例しているのか。
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