熱中症で介抱してもらう
今日もまた腹は空く。 腹が減り、夕食の支度に入ったときに気がついた。 ガス台の前に立ち、お吸い物を作っていたのだが、なんだかおかしい。 味見をしようとお玉でお吸い物をすくって小皿にとろうとしたところ、手が動かしにくい。 お吸い物をこぼしそうになってしまった。
体に異変が
なんだが体が小刻みにプルプルと震えている。 腕もプルプル震えているが、気のせいが足もプルプルと震えている。 これはおかしい。…絶対におかしい。 …もしや…これは噂のアレか!? 『熱中症』か! 私の頭の中にいやな予感が漂う。 いやいや、まさかな。と改めて考え直すが、やはりそれ以外の心当たりは見あたらなかった。
熱中症になりやすい体型
今年の夏はつとに暑い。 確かに間違いなく暑い。 私はおそらく熱中症になりやすい体型だと思う。 水分は筋肉に保持されるそうだが、私は極端に筋肉が少ない。 自分でも自覚している。 ここ数年で驚くほど筋肉の衰えを感じている。
水と筋肉と脂肪
筋肉が少ないと、水を飲んでも、体にとどめておけずすぐに出て行ってしまうらしい。 だが一方で脂肪はたんまりあるのだが、脂肪は水分保持には適していない。 それはそうだろう。水と油なのだから油が水を吸収し貯めておくとは考えにくい。 さらに私の体を包んでいる分厚い脂肪の層は体内で生成された熱が外に逃げるのをどうやら妨げているようだ。
条件は整った
加えて、私は電気代を気にしてエアコンを使っていない。 扇風機でしのいできたのだが…どうやらそれが裏目に出たらしい。 暑さ、湿気、脂肪過多の筋肉が少ない体型、温度調節の軽視。 すべての条件は整った。 首筋を伝う汗がダクダクとまるで水を流しているかのようだ。 ようやく、私はそのいやな予感について、経験者である相方に意見を求めた。 答えはやはり『熱中症』ではないかと言われた。
熱中症は発症する前が大切
これはイカン。と、あわててエアコンを起動する。 相方のなまあたたかい視線が痛い。 昨夜、暑いのでエアコンを入れた部屋で寝るように。と、相方から強く注意を受けていた。 だが私はそのアドバイスを聞くことなく、扇風機をかけた狭いしめきった部屋の中で眠ったのだ。 相方は『熱中症』で入院経験もあるため、その大変さが身に染みているので、わざわざ私にアドバイスをくれていたのだった。
反省
エアコンがききはじめた部屋で横になっていると、相方が冷凍庫から無言でアイスノンを取り出し、持ってきてくれた。 私はバツの悪い顔でそのアイスノンを受け取り、頭の下に敷いておとなしくしておくことにした。 相方にひたすら感謝である。 だが、バツの悪さから感謝の言葉がぎこちない。 弱ったふりをして小声でごまかすように「ありがとう…。」と言った。 相方がそれみたことか。という苦笑いを浮かべている。
床の上に転がって
少しすると相方は何やら考え込んでいた。 すると相方は外に出てもいい格好に着替えてしまうと、何も言わずに家から出ていった。 少しばかり心細い。 いったいどこに行ったのだろう? 相方はだいたい無言実行タイプなので行動の予測がつかない。 しばらく静かな部屋でポツンと転がっていた。
大人しくしておく
アイスノンの冷たさが後頭部をしっかり冷やしてくれてとてもいい気持ちだ。 アイスノンなどいったい何年ぶりに使ったのだろう。こんなに気持ちのよいものだったろうかと、新たな発見をした気持ちになった。 おそよ10分後、相方は手に2リットルのポカリスエットを持って帰って来た。 そしてそれをトクトクとグラスに注いで、持ってきてくれた。 あっという間にグラスのまわりが結露でくもる。 どうやら今日は本当にかなり蒸し暑い日だったようだ。 だがとてもおいしそうに見えた。 私は「ありがとうございます…。すみません…。」と、お礼を言ってポカリスエットをゴクリと飲んだ。
ゴクリ
ああ、生き返る! 一応氷水などはのんでいたのだったが、こちらの方がより体に吸収される気がする。 さらに、一気にゴクゴクと飲もうとしたら、相方からゆっくり飲むようにと諭された。 今回ばかりはきちんと言うことを聞いて、ゆっくりとグラスを口に運んだ。 相方曰く、本当はOS-1というものの方がいいとのことだった。 そのほうが点滴の成分に近いそうだ。 今回は私の症状は自分で水分をとったり、歩いて横になりにいけたりと熱中症の症状は軽そうだったので、ポカリスエットでよかろうとの判断だった。 これがもし体中がつりだす状態までなっていたらまちがいなく病院行きだ。 さすがの私の食欲もこうなってはすっかり失せてしまった。 とてもではないが食べるどころではない。 水分をこまめに取りながらひたすら横になっていた。
無事回復
幸い、一晩エアコンのきいた部屋で眠ると、翌日には体調は回復しており、大事には至らなかった。 それから、熱中症の危険のある日は素直にエアコンを入れることにした。 相方よ、すみません。 エアコンさん、お世話になります。 熱中症を決してあまくみてはいけないとしみじみ感じた。