【ニューヨーク=清水石珠実】米新興メディアのゴーカーメディアは10日、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)を申請し、事実上破綻した。元プロレスラーが起こしたプライバシー侵害訴訟で、裁判所から巨額の支払いを命じられていた。同社に不満を持つ投資家が訴訟を支援していたことが明らかになっており、米国内で議論を呼んでいる。
ゴーカーメディアは「ギズモード」など複数のニュースサイトを運営している。4年前に元プロレスラーのハルク・ホーガン氏が知人女性と性行為に及んでいる映像を公開。同氏から訴えられ、3月に総額1億4千万ドル(約150億円)の賠償を命じる判決を受けた。
判決後、シリコンバレーの著名投資家ピーター・ティール氏が裁判費用として1千万ドルを援助していたことを明かした。同氏は9年前、ゴーカー傘下のサイトで同性愛者であることを公開され、反撃の機会をうかがっていたという。
米国では他人の裁判を資金援助することに法的な問題はない。だが、資金力のある個人が私怨から報道機関を事実上の破綻に追い込んだ格好となり、米国では賛否に分かれて議論が沸き起こっている。
「どんなに金があっても我々を黙らせることはできない。新しいオーナーの下で我々は書き続ける」。ゴーカー創業者のニック・デントン最高経営責任者(CEO)は10日、ツイッターでこうつぶやいた。破産法に基づく再生手続き中もゴーカーは通常のメディア活動を継続する。
米出版・ネット企業のジフ・デービスがゴーカー傘下の複数サイトの買収に名乗りを上げているという。両社とも情報技術関連に強いサイトを運営しており、統合効果は大きいとみている。