あまり意識はしないかも知れませんが,実は「関数の極限」と「数列の極限」には少し違いがあります.
実際にそこまで意識しなくても問題はないのですが,この違いが分かっていないと間違えてしまう問題も中にはありますので,この違いは是非押さえておいてください.
なお,「数列の極限」は実は数IIIの範囲なのですが,京都大学の2015年度入試の文系数学において数列の極限が出題されました.
しかし,「文系数学での数列の極限を出題するのはダメだ!」という声は聞きませんでしたし,実際に「数列の極限」は「関数の極限」には大して違いがないため,出題してもほとんどの文系受験生は気付かずに普通に解こうとするはずですし,難易度がさほど高くない問題なら解けると私は思います.
ですから,文系受験生もいざという時のためにこの記事の内容を頭の片隅に置いておいても損はないでしょう.
一方,理系受験生は「数列の極限」も「関数の極限」も範囲内ですので,この違いを押さえておくことが望まれますので,分からない人は押さえておいてください.
「関数の極限」と「数列の極限」の1つ目の違い
まず,私の持っている教科書から「関数の極限」と「数列の極限」の説明を引用します.
関数の極限
「関数の極限」は実は2つあり,それは次の2つです.
関数
において,
が
と異なる値を取りながら
に限りなく近づくとき,
がある一定の値
に限りなく近づく場合
または
のとき
と書き,この値
を,
のときの
の極限値という.
変数
が限りなく大きくなることを
で表す.また,
が負でその絶対値が限りなく大きくなることを
で表す.
(中略)
のとき,関数
がある一定の値
に限りなく近づく場合,この値
を
のときの関数
の極限値または極限といい,記号で
と書き表す.
のときについても同様に考える.
数列の極限
一方,「数列の極限」は1つしかなく,それは次のものです.
数列
において,
を限りなく大きくするとき,
がある一定の値
に限りなく近づくならば,
または
のとき
と書き,この値
を
の極限値という.
「数列の極限」はn→∞しか考えない
この2つを比べれば分かるように,たとえば関数では「」という極限を考えることがありますが,数列では「
」という極限は考えません.
「関数はが3に限りなく近づくとき」という状況が,たとえば
などと近付けていくことで実現できますが,数列で考えている
は0以上の整数なので
などとすることができません.
ですから,関数は以外の極限を考えますが,数列は
の極限しか考えません.
これが1つ目の違いです.
「関数の極限」と「数列の極限」の2つ目の違い
2つ目の違いを見るために,次の問題を考えます.
問2)関数
さて,どうでしょう.
「こんな問題を出すぐらいやから,問1と問2で答えは違いそうやなあ」
とお察しの通り,言ってしまうと問1と問2で答えは違います.実は,これが冒頭で述べた「違いが分かっていないと間違えてしまう問題」なのです.
と
の違いは
と
の違いだけなので同じ式だと言えますが,答えがどう変わってくるのか分かるでしょうか.
ポイントは「数列のは整数,関数の
は実数」というところです.
問1の数列はとずっと0なのです.ですから,
なので
となります.
一方,問2では関数はが実数なので,
は
から
の間を無限に往復し続けますから,
としたときにもどこに近づくということはありません.ですから,
は存在しません.
このように2問並べると違いに気付いて正しく答えられるかもしれませんが,どちらか1問を出されたときでも「数列の極限」なのか「関数の極限」なのかをしっかり意識して解答することが大切です.