CULTURE
フランスメディアを騒がせた最旬映画 今月は、辛口フランス人も大絶賛の抵抗物語『裸足の季節』
6月11日よりシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほかにて全国順次公開
昨年のカンヌ映画祭で話題を集め、アカデミー賞フランス代表にも選出された『裸足の季節』が6月11日から公開される。
監督はトルコ生まれ、フランス育ちのデニズ・ガムゼ・エルギュヴェン(38)。これが長編デビュー作だ。
この“抵抗の物語”を、見逃すことなんてできない(ロプス)
異論を挟む余地のない、完璧な作品(レ・ザンロキュプティブル)
フランス各誌のレビュー記事のタイトルからは、書き手の素直な驚きや興奮が伝わってくる。普段は辛口の批評家たちもこぞって称え、カルチャー誌「レ・ザンロキュプティブル」は「この作品について批判をしてみようと試みたが、そんな目論みも失敗に終わった」とまで書く。
なぜこんなにも支持されているのか?
舞台は、トルコ。古い慣習の残る田舎の村に暮らす5人姉妹は、同年代の少年たちの肩にまたがって遊んでいたことから“傷物”扱いされ、家に閉じ込められてしまう。そして姉妹は見ず知らずの相手と強制的に結婚させられていく──。
こんなプロットを読むと、悲惨な現実を訴えるべくつくられた作品を思い浮かべるかもしれない。だが、この作品は、いわゆる社会派映画とは趣が異なるようだ。
カルチャー誌「テレラマ」には、こんなレビューが掲載された。
『裸足の季節』という作品の持つ強さは、現実を映し出そうとするところにあるのではない。残酷な世界をジャッジしようともしない。
それよりも、自分の人生に起こったことに対して、やり返そう、闘おうとする少女たちのエネルギーのほうに力が注がれる。
彼女たちは被害者として映ってもいいはずだ。だが、彼女たちは決してそのようには描かれない。
「レ・ザンロキュプティブル」も、「文句のないほどの作品に仕上がっているのは、この作品が姉妹を映し出すことに重きを置いているからだ」と評する。
5人姉妹のうち4人が映画初出演
思春期特有の繊細な心の揺れを切り取ったという点で、ソフィア・コッポラ監督の『ヴァージン・スーサイズ』と比較されることも多い。だが、多くのフランスメディアがそれに異を唱えた。
前出の「テレラマ」は、本作にどんな作品の影響が見られるかを挙げている。たとえば、ドン・シーゲルの『アルカトラズからの脱出』。
「ソフィア・コッポラよりも、ハリウッド映画のいわゆる“脱獄もの”に近いのでは」と、同誌の記者はまとめる。
映画を通して、ただ悲惨な現実を告発したいのではない。
どんな出来事も、少女たちにとっては人生を生き抜くうえでの通過点でしかないのだという監督の姿勢に、フランスメディアは賛辞を惜しまなかった。
原題は「Mustang(野生の馬)」。少女たちの駆け抜けるようなエネルギーを表現している
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