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【芸能プレミアム】
平和への思い 次代へ 俳優・宝田明 「マリアと緑のプリンセス」
大きい人だ、体も心も。81歳は変わらぬ華やかな笑顔とよく通る声で言った。「戦後70年の今、伝えねばならないことがある。それが表現された作品です」
“いのちのミュージカル”第2弾「マリアと緑のプリンセス」が上演される。今年104歳の聖路加国際病院名誉院長、日野原重明氏企画、原案「葉っぱのフレディ」(平成12年初演)から始まったシリーズ。テーマを引き継ぎ、全国から選ばれた子供たちを軸に命と平和の大切さを綴る。
前作は18年から9年間、医師役で出演。新作では田舎で後進の育成をする元舞台人の役だ。「命の尊厳と継承を描いている」。自身は約10年前、92歳の母を在宅でみとった。手を握って顔を見て「お疲れさま」と言って送った経験が今作に織り込まれた。楽曲にも意見が取り入れられているとか。
「生ある者は召されるが、思いは受け継がれていく。次代にバトンを、大きく確かな音を出して渡したい」
11歳の時、旧満州ハルビンで終戦を迎えた。「大変でしたね、戦後は…」。ソ連軍が押し寄せた街で“生きる戦い”をする。今も季節の変わり目に痛む、自身の右脇腹の傷はソ連兵に撃たれたものだ。
「熱い。化膿し、空気が動いただけで痛んだ」。病院は接収され、自宅の常備薬のみ。同じ社宅の元軍医が裁ちばさみで患部を十字に切り、鉛の弾を取り出す。手足を縛られ、麻酔なしでの“手術”だった。
終戦から1年半以上たち、ようやく引き揚げ。野山を歩き、野草を食べ、2カ月半かけて祖国の地を踏んだ。「戦争は無辜の民が被害を受け、相手国の全てを憎んでしまう。戦争は絶対にしてはならない」