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【社説】

参院選へ1カ月 中傷排して政策論争を

 参院選の投開票まであと一カ月と迫った。各党党首らは全国遊説を本格化させ、事実上の選挙戦に突入している。日本の岐路となる重大な選挙だ。中傷合戦を排した建設的な政策論争を期待したい。

 参院選は二十二日に公示され、来月十日に投開票が行われる。

 安倍晋三首相が、来年四月に予定されている消費税率10%への引き上げを二〇一九年十月まで二年半、再び延期する自らの判断について「国民の信を問う」と意気込む選挙である。

 自民党はすでに選挙公約を発表し、安倍氏自身も八日、山梨県を皮切りに、党総裁としての全国遊説を本格化させた。

 安倍氏は、成長重視の経済政策「アベノミクス」の加速か否かを参院選最大の争点と位置付ける。国民の暮らしに密接にかかわる経済政策は重要な争点ではある。

 増税再延期の判断は妥当としても、増税できる経済状況をつくれなかった自らの政策の失敗を、まずは認める必要があるだろう。

 安倍氏は増税再延期で「社会保障の充実のすべてを行うことはできない」ことを認めている。ならばどの分野の施策を優先的に実施するのか。それを明確にして国民の判断を仰ぐのが筋ではないか。

 これに対して、民進、共産、社民、生活の野党四党は、選挙結果を大きく左右する三十二すべての「改選一人区」で候補者一本化を実現した。市民団体とも政策協定を結び、集団的自衛権を行使するための安全保障関連法の廃止や立憲主義の回復などを目指す。

 参院選では経済政策のみならず集団的自衛権の行使を憲法違反とする、歴代内閣が踏襲してきた政府解釈を一内閣の判断で変え、安保法の成立を強行した安倍氏の政治手法も問われる。「安倍政治」そのものが重要な争点だ。

 「与党対野党統一候補」の構図となった改選一人区を中心に、すでに党首らによる激しい舌戦が展開されている。

 安倍氏は「野党はまとまった政策はないから批判、批判、批判、批判ばかりだ」と声高に叫び、民進党の岡田克也代表は「安倍政治の暴走を止めて、新しい政治の流れをつくる選挙にしなければならない」と訴える。

 接戦になればなるほど舌鋒(ぜっぽう)は鋭くならざるを得ないのだろうが、相手陣営を激しく攻撃して留飲を下げるだけでは、建設的な政策論争にはなり得ない。

 中傷合戦に陥らぬよう与野党双方に注意を促しておきたい。

 

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