HEALTH
非日常の中に身を投じ、厳しい水の中で精神統一。雑念を振り払い豊かな自然と調和する。そんな新しいデトックス、「滝行」が若い女性を中心に注目されています。今や滝行は修行僧だけではなく、必勝祈願やリフレッシュを理由にアスリートや芸能人、はたまた人気ファッションモデルといったオシャレ女子たちも挑戦しているアクティビティです。
今回は声優として活動するナチュラル女子、高瀬朝季さんが滝行の魅力をリポートします!
こんにちは、高瀬朝季です。声優として日々精進なアラサーです。これまで、「新テニスの王子様」「遊戯王ARC-V」などのアニメや吹替作品に出演。舞台やイベント司会など、色んなお仕事をさせて頂いています。絵も文章も書いちゃいます。表現活動が人生の糧です。
声優のお仕事は、緊張やプレッシャーに押し潰されそうになる日もしょっちゅうです。そんな時は「とにかく自分との戦いだ」と常々思っていた私。今回の滝行企画は、「己を鍛えるよい機会になる!」と直感。『理想の強い心』体得のヒント、そしてお仕事に関するますますのよい御縁を願って、行ってきました東京の西、西多摩郡檜原村へ。
目指すは良縁成就で名高い九頭龍神社「竜神の滝」。
宮司と愉快な仲間たち、結成
五月晴れの体験当日、JR武蔵五日市駅に降り立った私は胸を高鳴らせながら集合場所へ。元気に迎えてくださったのは、本日ご指南いただく滝行歴は20年以上の西澤形一宮司(埼玉県飯能平松神社宮司、「滝行と自然を味わう会」主宰)。そして、今回一緒に参加する4人の女性たちの姿が。皆さんお友達同士でご参加とのこと。取材に関しても快くOKを頂きました。皆さん、海外経験ありとインターナショナルな感覚の方が多く、「コアな日本文化をもっと知りたいから」という好奇心アンテナにビビッときて滝行に挑戦するそうです。
目的地までは宮司がマイカーで連れて行ってくださるとのこと。発車早々、宮司の軽快なトークがさく裂。私たちはすっかり初対面であることを忘れ、車内は一気に和みモードへ。滝行参加者は毎回平均4~6人、多いときは15人にもなるそうな。老若男女問わず、外国人やホストといった実に多方面からの参加があるそうです。世の中には、想像以上にたくさんの清めたい何かがあるようです...。
宮司による檜原村の観光ガイドや地元裏話に夢中になっていると、すっかり景色は山道に。バックミラー越しに「どこから来たの?どこ出身?」と宮司から参加者への質問が。答えているうちに不意に宮司から「君たち全員合格!」のお言葉。なんと宮司、駅からここまでの過程で参加者の健康状態をチェックしていたと言うのです。チェックポイントは唇の色や足の震えなど。「プロフェッショナル...!」という感嘆の声が漏れると同時に(滝行...やはり生半可な気持ちでは参加できない代物なのだわ...という心の声が聞こえた気がしました。)
まずは九頭龍神社で本日の滝行の安全をお祈りします。車から降りると全身で山の清涼感を感じられ、なんとも清々しい気持ちに。ここで、滝行歴12年のベテランインストラクター神谷幸枝さんともう1人の参加者である男性も合流。皆でしっかりと本日の安全をお祈りしました。
西澤宮司から滝行のご説明。「今日の滝行は、日常の中で気づかず誰かを傷つけていた、というような『知らずに犯した罪や穢れ』を神様のお恵みによって取って頂くもの。いったん自分のコップを空にして、神様のよい気を頂いてください」とのこと。
一度自分を空にするチャンス...なんだか新しい自分に出会えそうな予感がします。
続いては、神谷さんによる滝行作法の説明。初めて聞くお作法の意味と手順を真剣に聞く参加者たち。聞きもらすまいとついつい眉間に皺が寄っていた高瀬に「本番でもちゃんと先導しますから大丈夫ですよ」と優しい笑顔の神谷さん。なんと心強い。
ついに今回最大の目的地「竜神の滝」に到着。その緑の美しさに早くも心洗われるようです。澄んだ水のせせらぎに「早く入りたい!」とすっかりテンションが上がります。宮司から「そうだ、今日は滝に打たれる以外に、この川に胸まで浸かる行をやろうか!」との提案が。「もちろん!」とこの時は無邪気に喜ぶ一同ですが...
いざ、滝行へ
滝はさすがの迫力です。しぶきが陽の光を浴びてキラキラ輝き、神々しい気に満ちあふれています。行衣へと着替えを済ませ、最後に真っ白なハチマキを締めると一気に気持ちも引き締まります。まずは皆で神様に感謝を申し上げ、祈りを捧げました。宮司も今までの陽気な雰囲気とは一転、祝詞を唱える厳粛な姿とその場の凛とした雰囲気に背筋がグンと伸びました。
そして、入水前の準備運動。「エイホー」のかけ声と共にボートを漕ぐような動作を繰り返します。渓谷に響く乙女たちの「エイホー」の響き。なかなかシュールです。数十回と繰り返すうちに、いい感じに身体があったまってきました。
まずは「エイッ」と気合いを入れ、手を上から下へ斜めに振り下ろす動作で入水。水温は10度と聞いていましたが、想像より俄然冷たい!足の感覚を失いながら、しぶき降り注ぐ滝壺へ向かい直立不動ポジションに。容赦なく全身に降り掛かる水の勢いと冷たさに、はじめは呼吸もままなりません。
事前説明で教わっていた「祓いたまい、清めたまえ!」をなんとか3回唱え、最後に「エイッ!」と手を振り上げる所までが1セット。
MOVIE その1
命からがら水からあがる私を見つめる他の参加者から「ごくり...」と生唾を飲み込む音が聞こえてくるのを感じました。
2巡目は般若心経を唱える間ずっと滝壺にいなくてはなりません。心臓に直接打ちつけるようなしぶき。これはもう己との戦いです。身体と心の感覚がもはや乖離しそうな中、スッと心が澄み切るような感覚があったような、なかったような...。
とにかく雑念を払い一心にお経を聴きました。参加者同士は声を掛け合い、励まし合い、自分の番がくるとそれぞれの思いを胸に滝壺へ粛々と向かいます。3巡目は滝壺で神様への感謝と願い事を唱えます。私はこの時、滝壺に入る直前に自分の足下に小さな虹がかかったのを見ました。
今思い出しても、この時の宮司や神谷さん、参加者の皆さんとの一体感はすばらしかった!ほんの数時間前まで見知らぬ人間同士だった私たちが、今一つの目的と感覚を共有している。そんな不思議な感動を覚えました。
全てを終えた皆の清々しい表情。身体は寒さに震えていても、5月の光が照らす皆の笑顔は本当に美しかった。
そんな大満足な私たちの耳に、宮司の「さーて、次はお待ちかね、川への入水だ!」の声。
......。
そうだった......。あんなに気持ちよさそうに見えていた川面が、今は身体の震えで直視できない...いや、ここまできたらやるしか!
意を決した私たちは次々と川へ。ガチガチと歯が鳴るのを止められないまま、最後の力を振り絞り「祓いたまい、清めたまえ!」を叫びながら胸まで川へジャブン!
MOVIE その2
滝行がつなぐ縁
濡れた行衣から服に着替えて一息。冷えた身体をあたためる5月の陽射しがじんわり心と身体をほぐしてくれます。最後に、一行は近くにある温泉に入り、地元の野菜をふんだんに使ったランチでお互いを労ったのでした。滝行を終えた参加者は「普段の生活のありがたみを感じた」「真剣に取り組む自分が新鮮だった」など、貴重な体験に大満足の様子。表情もスッキリ晴れやかです。
今回の体験を通して強く思ったことが「このメンバーでよかった」ということ。今回集まった参加者は、外国人向け料理教室の先生や専門誌のライターさん、主婦の方など様々でした。たまたまこの日に各地から集まった人々が苦楽を共にし、貴重な繋がりを持つ。恋愛や結婚相手だけが縁じゃない、素晴らしい縁結びのご利益はもうすでに頂いていたのだな、となんとも言えない幸福感に包まれて帰路についたのでした。清々しい表情の新しい自分との出会いでもありました。
滝行の最中に得た「自然に抗うのではなく、一体となることで心が軽くなる」という体験。強い心を持つということは、鋼のような硬い心を持つのではなく、丸く柔らかな心を持つということではないか。宮司やこの日出会った皆さんの笑顔、檜原村の自然が教えてくれたことです。
その「和」の心がより自分を強くしてくれている、そう実感できる貴重な経験でした。素敵な「和」が「輪」となりこれからも広がっていきますように。
武蔵五日市駅時点でMISFITポイントは242。滝行体験終了後はなんと449ポイントでした。ちなみに、滝に打たれても平気なMISFITでした。打たれ強い腕「輪」MISFIT!
九頭龍神社 竜神の滝 滝行体験
男性5000円、女性5500円。昼食、入浴、お賽銭別途。
http://www.ensenji.or.jp/contents/facility/waterfall/