西田幾多郎の旧居解体 一部、京大などで保管
日本を代表する哲学者、西田幾多郎(1870〜1945年)が約10年間暮らした京都市左京区の民家の解体工事が8日、始まった。マンション建設のためで、西田が原稿を書いた書斎や、考えがまとまらなかった時に何度も往復した廊下は、京都大総合博物館(同区)などで保管される。一般公開も検討する。
西田は出身地の石川県で旧制第四高等学校の講師などをした後、1910年に京都帝国大学(現京都大)に赴任し、退職までの約20年間を京都で暮らした。歩きながら思索にふけることで知られ、晩年の散歩コースだった小道は、後に「哲学の道」として人気の観光スポットになっている。
取り壊されるのは、西田が12年から22年まで妻子と暮らした木造2階建ての借家。京大の北西約500メートルにあり、今年1月まで借家として使われていた。
解体を前に家を調査した京都大大学院文学研究科の林晋教授(思想史)によると、2階には応接室兼寝室としても使っていた6畳の書斎のほか、当時は散歩の習慣がなかった西田が歩き回っていた廊下(長さ約10メートル)が、ほぼそのまま残されている。
工事初日は、早朝から作業員が廊下の手すりを外すなどした。解体には3日ほどかかるという。林教授は「この家に住んでいた時期、西田は母や長男を病気で亡くすなど悲しみの中にあり、最も哲学の研究に没頭していた。一般の人にも書斎や『哲学の廊下』を見てもらえるようにしたい」と話した。【宮川佐知子】