一人暮らしの老人が狙われる
ドイツ統計局の調べでは、2013年末、介護が必要な人の数は263万人に上った(ドイツの人口は8000万弱)。うち76万4000人が施設におり、残りは在宅介護。介護に使われているお金は全部で年間200億ユーロ。しかも、介護が必要な人の数はこれから急激に増えていくはずなので、介護はまさに巨大ビジネスに成長中だという。
4月、ロシアおよび旧ソ連邦の複数の介護関連会社が、ドイツ全域で大がかりな詐欺行為を展開していることが連邦検察庁の調べで分かった(旧ソ連邦の中には、EU国も多く含まれる)。
同庁によれば、これらの詐欺行為で医療、及び介護保険が受けている損害は、年間少なく見積もっても10億ユーロ(現在のレートで1,200億円強)というから半端ではない。介護で動く年間200億ユーロのお金のうち、5パーセントが犯罪組織に吸い取られていることになる。麻薬よりも簡単で、利ざやが大きいらしい。
今回、摘発されたのは、主に訪問介護にまつわる違法行為だ。
介護の必要な人のところには、介護士やヘルパーが保険によって援助要員として派遣される。週に1、2回、シャワーを浴びるのを手伝ったり、毎日、朝と晩だけ包帯を取り替えたりといったことだが、ここで大々的な不正が行われているという。つまり、医療保険、介護保険といった国民の財産が侵食されているわけで、れっきとした国富の損失である。
ただ、難しいのは、この詐欺がいかにも簡単にできてしまうことだ。週に3度しか訪問していないのに、毎日訪問していることにしたり、介護の内容を水増ししたり、介護の専門職が行う単価の高い処置を資格のない人にやらせたり……。中には、医者の処方が必要なのにそれが見当たらないケースもあるため、医療関係者の関与さえ疑われている。
特に、一人暮らしの老人が狙われる。そもそも、いろいろな意味で自立できないから、ヘルパーが来るのである。その老人に、自分が受けられるはずの介護内容と、実際に受けているそれが合致しているかどうかちゃんと確認しろと言っても無理な相談だ。書類など見るのは煩わしくて、よく内容を理解せずにサインをしてしまう私も、20年後には立派なカモになるだろう。
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