民進、共産、社民、生活の4党が参院選に向けて、政策協定を結んだ。32ある1人区すべてに立てる野党統一候補の共通政策で、改憲勢力が3分の2の議席を獲得し、憲法改正に動くことの阻止をめざす。

 協定づくりを主導したのは、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」だ。

 安倍首相の政権運営に危機感を抱く学生グループ・SEALDsのメンバーや、学者らが昨年末に結集した市民団体で、野党共闘を強く求め、全国での統一候補擁立の原動力になった。

 この共通政策を、三つの点で評価する。

 まず若者ら一般の有権者が働きかけて野党を束ねたことだ。主権者の自覚をもつ人々の行動に政党が呼応した。市民の声を積み上げて政治を変える。そんな新しい潮流を感じさせる。

 次に、憲法改正や原発問題などで自民党と違う選択肢を示したことで、対立構図がはっきりし、わかりやすくなった。

 さらに、選挙戦に緊張感が生まれることで無党派層の関心が高まり、投票率が上昇する効果も期待できそうだ。

 ただ、共通政策には幅広く解釈できる項目も目立つ。

 たとえば「原発に依存しない社会の実現」。再稼働反対の共産党などと、2030年代原発ゼロを掲げてきた民進党が折り合える書きぶりだ。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設反対には「沖縄の民意を無視した」という前置きがつく。民進党の岡田代表が「対案がない状況で無責任に『辺野古反対』とは言えない」と述べてきた経緯を踏まえ、安倍政権のすすめ方を批判する形にした。

 「TPP合意に反対」も、安倍政権が交わした合意への反対を強調した。TPP参加は民主党政権が提起し、いまも推進論者が多い実情を映している。

 こうした取り組みが、野党の大同団結に向けた苦心の策と評価されるか。それとも「野合」批判を浴びるか。

 少なくとも有権者に政権選択を問う衆院選では、単なる「反対」だけでは済まない。政権獲得後にどんな政党の組み合わせで、どの政策を実現するか、おおまかな方向性を有権者に示しておくことが欠かせない。

 だが、参院選は政権への中間評価とも言える。思いをともにする野党と市民が、政権に異議を唱える民意の受け皿をめざす動きには意義がある。

 むろん、共通政策を掲げた各党には、選挙時だけでなく、選挙後も、その実現に力をあわせることが求められる。