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ルウムに光芒有り
U.C.0079、地球からもっとも遠いコロニーサイド3は、ジオン公国を名乗り地球連邦政府に宣戦布告をした。最初の戦い、『一週間戦争』では、双方が大きな打撃を受け、決戦の地はサイド5通称ルウムに移された。
地球連邦軍レビル将軍率いる第一連合艦隊とジオン公国軍の戦力差は、およそ三対一。誰もが連邦軍の勝利を確信していた。しかし、ジオン公国軍は諦めていなかった。その一人がジオン軍准将『マット・エアライン』である。マットは、ジオン軍で『モビルスーツ』という新兵器を開発した中心メンバーの一人で、その操縦はジオン軍で一、ニを争うほどの優秀なモビルスーツパイロットでもある。
決戦、ルウム戦役まであと二日。マット准将率いる第六特務部隊は宇宙要塞『ソロモン』にて来たるべき決戦に向けて準備中である。
「準備の様子はどうだ?」
部隊では相当の古参、そしてマットの個人的な飲み仲間、ジョーンズ整備長に尋ねた。
「おう、准将。もう少しでムサイ級への積み込み、完了するぞ。グワジン級もあと少しだ。」
少し荒い声と口調で、現在の状況を伝えられた。
「あぁ、そうか。私のザクはどうなっている?」
「それがですね、機体自体の整備は終わっているのですが、まだ専用の対艦砲が届いてないようなのです。」
「そうか。本国に早く送るように伝えてくれ。」
「はっ、了解です。」
それから数時間後、誰も予想しなかった急な一報だった。
「マット准将、ジオン本国より伝令です。」
隊のオペレーション担当のフェンロ曹長が、マットに伝えた。隊のメンバーの中では、一番の若手で、まだまだひよっこ。だが、高度な情報解析の技術を駆使したオペレーションは大きな戦力だ。
「なんだ、この忙しい時に?」
「准将、お忙しいのは分かりますが、本国直々とは、何か重要なことでありましょう。通信、繋ぎます。」
ピッ、という音とともに画面が切り替わった。そこには、まだまだ若そうだが、能力は高いエリートのような人物が映っていた。
「こちらジオン本国、レオン少佐です。応答、願います。」
「なんだ、手短に頼む。」
「はい。要件は二つです。一つ目ですが、そちらにパプア級を向かわせました。中には、対艦砲と新兵器を積んであります。詳しくは、ジョン中尉から説明を受けてください。」
やっとである。専用対艦砲、これが無ければただのザクである。新兵器というのも気になる。これが終わったら、ジョン中尉に聞きに行こう。
「新兵器か。あぁ、了解した。二つ目は?」
「二つ目ですが、ルウムが明日となりました。至急ルウムへ向かってください!」
対艦砲と新兵器が届く。それも重要なことだが、誰も予想せず、なおかつ最も重要な情報がレオン少佐の口から出た。
「なぜだ!こちらはまだ準備が終わってないんだ!今すぐなんて不可能だ!」
「そこは私も重々承知しておりますが、予想以上に連邦の進撃が早いようで…」
「そうか…仕方ない、了解した。これより我が隊はルウムへ向かう!」
「申し訳ありません。お気をつけて、健闘をお祈りします。」
「ありがとう、必ずや勝利する!」
そして出発の時。グワジン級一隻、ムサイ級ニ隻、パプア級一隻の艦隊は、ルウムへ向かう。必ず勝利するという覚悟を決めて。
グワジン級 格納庫
「ジョン中尉、噂の新兵器とやらの説明を頼む。」
「はっ、了解です。この新兵器というのはですね、かつて、ザクがコンペによって正式採用されたとき負けたほうの改良機でして。形式番号MA-01…」
「『MIP-X1』か?」
「ええ、その機体と形状はあまり変わりませんが、メガ粒子砲とスラスターの出力が上がっております。また、これを『モビルアーマー』というそうで、キシリア少将も関心を持っているとか。」
「そうか、あのキシリア少将がか。ただ、今一つ言えることは、この兵器は時代を変えるやもしれん。テストなどしている暇はない。実戦で試してみるか。」
「ええ、専任のパイロットも到着しているらしいですし。それもいいのではないでしょうか?それとあともう一つ、あなたのザクについての説明をさせていただきます。」
「ザクか。あぁ、分かった。」
「准将が乗るザクは仕様が他とは異なります。MS-06R-1S高機動型ザク、主な武器は、対艦砲、ヒートサーベル、ザク・マシンガンの三つです。」
「そうか、そこの辺りはジョーンズから聞いた。しかしだ、質問がある。この『ヒートサーベル』というのはなんだ?『ヒートホーク』ではないのだな?」
「ええ、ヒートホークとは異なる新型の武器です。簡単に言うと剣です。仕組みはヒートホークですが、攻撃力はこちらの方が上です。」
「よく分かった。ありがとう、これからも頼むよ。」
「はっ、ありがとうございます。」
ソロモンを出発し、ルウム前の作戦説明。 作戦会議といったところか。
「これより作戦の説明をする。皆、心して聞くように。」
「はっ、了解です。」
「我が隊は、グワジン級一隻、ムサイ級ニ隻、パプア級一隻からなる。モビルスーツは、この艦隊が沈められないように細心の注意を払ってくれ。開戦当初は艦隊戦となるだろう。そして、ある程度の終息が見えたら、モビルスーツを使い、連邦の艦艇を攻撃しろ。モビルスーツには、ザク・バズーカを装備させておいた。ある程度近づいたら、ヒートホークも使って接近戦もするんだ。いいな?」
「はっ、分かりました。」
「すみません、質問なんですが、よろしいでしょうか?」
一人の女性将校が手を挙げ、マットに質問をした。
「なんだ?アービン大尉、確か君は、あの新兵器のパイロットだな。」
「ええ、その新兵器についての質問なんですが、私の行動については、どうなされるおつもりで?」
「あぁ、そのことだが、中距離からのメガ粒子砲での攻撃となる。接近されたら、クローで攻撃してみろ。使えるやもしれん。」
「はっ、ありがとうございます。」
「これにて説明を終わりにする。最後に、全員生きて帰るんだ!分かったか!」
「了解です、准将!」
隊のメンバー全員は、声を揃えて敬礼をした。これは全員の意志が揃った証拠である。いよいよ決戦の時だ。ジオンに必ず勝利をもたらしてみせる。その決意を胸に、艦隊はその機首をルウムへ向けた。
サイド5宙域、通称ルウム。今、そこで地球連邦とジオン公国の戦争が始まる。連邦軍はレビル将軍率いる第一連合艦隊を中心に大部隊を派遣した。対するジオン軍も艦隊を向けたが、その戦力差は三対一。しかし、そのような状況でも勝利してきたのが、マット准将である。そんな彼が率いる第六特務部隊は、ルウムに到着した。
「連邦の動きはどうなっている?フェンロ曹長。」
「はっ、准将。やはり、連邦軍の進撃は速いですね。このままでは数時間後に交戦状態に入ります。」
レオン少佐の言った通り、連邦の進撃は想定外の速さだ。出発を早めるという判断は、間違っていなかったようだ。
「そうか、こちらの準備は完了している。奇襲だけには注意しておけ!第二種戦闘配置だ!」
「はっ、そう伝えておきます。」
そのとき、グワジン級の長い艦内の奥から、全速力に近いスピードで走ってくる音が聞こえてきた。
「准将〜!大変です!」
「どうした⁉︎ジョン中尉。」
声の主はジョン中尉だ。彼はマットが部隊を指揮し始めた時からの部下で、その成長ぶりを間近で見てきた准将としては、一番の信頼を寄せている兵でもある。そして彼のすごさというのが、交友関係の広さである。これが意外な武器になったりもする。
「じ、実はですね、私の知り合いに諜報部のマッケイン中尉という者がいるんですが、その者によると、今回連邦軍はモビルスーツを戦線に投入する模様です!」
連邦、モビルスーツ。この二つのキーワードは結べないように見えた。だが、マットには、一つだけ、思い当たる節があった。
「な、何?連邦軍はモビルスーツを持っているのか?いや、持っていたな。あの時私が撃破したあれはモビルスーツか・・・」
話は数年前に遡る… あれは思い出したくもない、言わば黒歴史でもある。
「トレノフ・Y・ミノフスキー博士が亡命するという情報が入った。これより、その亡命を阻止すべく出撃する。指揮はこのマッド・エアライン中佐がとる。点呼を取るぞ。シャア・アズナブル。」
「はっ、中佐。」
「ランバ・ラル。」
「おぅ、中佐。」
「ガイア、オルテガ、マッシュ。」
「おぅ、マッドさんよ。」
「それぞれザクに乗って出撃するぞ!敵にはモビルスーツもいるらしい。注意しろ。」
「はっ、了解!」
ジオンのエースというエースをかき集めて組織されたこの部隊は、後々考えればもう二度とないものだろう。何故ならルウム戦役時、彼ら全員が他を超越する程のエースパイロットだったからである。
「第六特務部隊、出撃する!」
その声と共に、生産されたばかりのザクから青い炎が吹き、目的の場所へ向かった。
月面スミス海・・・
「あ、あれはミノフスキー博士です!」
今回のターゲットは連邦ではない。元々、ジオンの人間だった者だ。
「よし、直ぐにこちらに戻させろ!」
これで作戦は終わるはずだった。しかし、隊一番の若手、シャア・アズナブルが何かを発見してしまった。
「はっ、ん、何だあれは?ま、まさか…」
「どうした⁉︎シャア!」
「あ、あれはモビルスーツです!連邦はモビルスーツを持っています!」
最初の予想、当たって欲しくなかった予想が的中してしまったが、マットが慌てるわけにはいかない。
「やはりか⁉︎全員、撃退しろ!」
ザク(MS-05)六機に対して連邦軍は、キャノンタイプのモビルスーツ(これは後にガンキャノンと言われる)を三小隊、合計9機も投入した。キャノン砲とバルカン砲らしきものを装備し、火力は確実にザクより高いはずだ。しかも集団戦法だと話にならないだろう。しかし、ザクに乗っているのはジオンでもエースと言われるほどのパイロットである。経験不足の連邦軍パイロットとは腕が違い過ぎる。そう信じるほか、希望を見いだすことは出来なかった。
「にわか作りの連邦にモビルスーツなど、俺たち『黒い三連星』で充分よ!」
黒いザクを操り、息の合った攻撃が持ち味の彼らは、自信ありげに言ってきた。
「いい心意気だな。だが、撃破されたらおしまいだ。黒い三連星は右翼を、シャア、ランバ・ラルは左翼を、そして私が正面の敵を撃退する。いいか、ミノフスキー博士は生かせて本国に送還させろ!作戦、開始する!」
その頃、連邦軍パイロットたちは・・・
「あれは何だ?ジオンのザクか!」
「慌てるな!指揮官の私が指示する。ミノフスキー博士を無事に連邦側に送り届けろよ。」
「はっ、戦闘、開始します。」
再びジオン側・・・
「連邦のモビルスーツが向かって来るぞ!各位攻撃許可するぞ。」
「おぅ!」
右翼の黒い三連星は『ジェットストリームアタック』と言う攻撃をして、連邦のモビルスーツを一度に二機も撃破してしまった。また、左翼のシャア、ランバ•ラルは高速移動で敵を翻弄。モビルスーツは撃破されて行く。だが、一番目立っているのは、マッド中佐である。ザクバズーカとヒートホークという実験的装備をしているザクはこれだけだ。バズーカで爆風も利用して二機同時撃破。それをかいくぐり接近して来た連邦もヒートホークで真っ二つ、瞬間で一小隊を壊滅させた。他の五人も小隊を壊滅させ、作戦は成功した。しかし・・・
「准将、あれは、ミノフスキー博士です!連邦のモビルスーツの下敷きになってます!」
「早く救出しろ!生きて本国に返すんだ!」
しかし、ミノフスキー博士はモビルスーツの下敷きになって死んでいた。自分が開発した物の傍で息絶えたのだから良いのかもしれない。しかし、マッド中佐は共にモビルスーツを作り上げた仲間であった。如何に敵になったとはいえ、同僚を失った悲しみは大きい。悲しみの中、亡骸は本国へ戻された。
ジオン本国・・・
目の前には、ジオンの最高権力者『ザビ家』の女傑、キシリア少将が椅子に座り、机を挟んでマットは立っていた。
「キシリア少将、申し訳ございません、ミノフスキー博士は・・・」
キシリア少将は何かを察した様子で、冷淡な声を発した。
「もう良い。かつての同僚が死んだのだからな、少し休むがよい。」
「はっ、ありがとうございます。では。」
「すまぬ、少しよいか?」
帰ろうとした時、突然呼ばれてしまった。このようなことは非常に心臓に悪い。
「はっ、なんでしょうか?」
「貴様は連邦のモビルスーツを撃破したらしいが、あれはどうだったのだ?」
どうやら、キシリア少将は、ジオンと連邦のモビルスーツの差を知りたいらしい。ジオンのを立てても良いのだが、ここは正直に報告することにした。
「ええ、パイロットは皆未熟でしたし、モビルスーツの性能もザクには劣ります。しかし、パイロットの育成が終わり、モビルスーツも改良されていけばザクでは不十分となりましょう。」
「そうか、我軍の技術部にも新型モビルスーツの開発を急がせている。開発が完了次第優先的に配備させることを約束しよう。」
モビルスーツの優先配備。一見、喜ばしいことに見える。だが、裏を返せば、テストをこの部隊で行うということだ。整備長のジョーンズの苦労が増えることはどうやら確実の模様だ。
「有り難きお言葉、我が隊もそれに見合った活躍をいたします。」
あまり嘘は吐きたくなかったが、とっさに出てきた言葉がこれだったので仕方ない。
「これからも頼むぞ、マット准将。」
「私は中佐でありますが?」
これはただ単純な言い間違えだと、マットは考えた。しかし、
「連邦のモビルスーツを撃破した功績で二階級特進となった。かつての友を殺した戦いによって昇進とはな。まぁ、喜んでおけ。」
皮肉なものである。正直、喜んでいいものかわからない。
「は、はっ。ありがとうございます。ではこれにて私は。」
中佐改め准将は、また、嘘を吐いてしまった。
「あぁ、長い時間すまぬな。」
「いえ、別に大丈夫です。」
ここにマッド•エアライン准将が誕生した。しかし、マットとモビルスーツを巡っては哀しみのストーリーがあったのだ。
話はルウムに戻る。あともう少しで連邦とジオンの歴史に残る大戦争が始まる。緊迫した空気に隊は包まれていた。
「准将、どうなせれましたか?」
「あぁ少し昔のことを思い出してしまってな。私が初めてモビルスーツと戦った時のことだ。」
「それはとても興味深い話のようですね。今度聞かせて下さいね、その話。」
戦いの前だと言うのに、あまりにも緊張感のない様子のジョン中尉に、マットは多少の尊敬の思いが過ぎった。
「あぁ、今度な。それはそうと、ジョン中尉、連邦軍の進撃は?」
「はい、あと十五分で射程距離に入ります。私も準備をしなければなりませんな。一応ザクに乗りますから。」
「そうだな、私もそれは同じことだ。ジョン中尉!」
「はっ、准将!」
マットが声を出すと、一瞬にしてジョンの間には緊張感が生まれ、戦争に対する意識の高さが伺えた。
「全員に伝えろ!第一種戦闘配置だ!」
「はっ、了解であります!」
MS格納庫にて・・・
「ジョーンズ整備長、ザクの様子はどうだ?」
「あぁ准将さんよ。隊全員分、準備万端だよ!いつでも出れるぞ!」
急な出撃だったが、ちゃんと準備は整える。エースパイロットを支えるのは、いつもエース級の整備士だと、こういう時に毎回気づかされる。
「そうか、それはよかった。準備ご苦労さん。」
「ありがとよ、准将!」
軽い挨拶を交わしたマットは、その場を離れた。ところで、准将のザクは黒く塗装された特別仕様。戦場では目立たないのが一番である。その為、戦場ではよく『黒い三連星』に間違えられる。同じような高機動型ザクに乗っていることが理由なのだが・・・
その時だった。艦内に警報音が鳴り響く!
「フェンロ曹長、状況を伝えろ!」
「はい!連邦の艦艇との艦隊戦が始まりました!この状況での出撃は危険過ぎます。各位、衝撃に備えて下さい!」
「く、くそ!仕方無い、グワジンを前面に出してメガ粒子砲を放て!敵の数は?」
決して少なくない数だ。しかし、やるしかない。何故なら、後退という選択肢は、ジオンには存在しないからである。
「サラミス級三、マゼラン級一、コロンブス級一です!」
「なら撃破出来るはずだ!私が『打て』と言ったらグワジン、ムサイの全メガ粒子砲を放て!」
「はっ、了解です!」
・・・・・・・・・・・・・・・
しばしの沈黙が訪れた。そして、
「よし!今だ!打てーー!!」
ベストなタイミングで発射されたメガ粒子砲は敵の艦艇に直撃!サラミス級、マゼラン級それぞれ一隻は沈んだ。こちらの被害は0である。遂に反撃のチャンスが訪れた。
そして、出撃のとき・・・
「第六特務部隊、準備はどうだ?」
「こちらジョン中尉です。ザクはいつでも出撃出来ます!」
「こちらウェルネス大尉です。準備万端です!」
ウェルネス大尉は、真面目さはピカイチだが、たまに隊のムードメーカーとして活躍することがある。そのギャップがマットのツボに入ることもある。
「こちらマーク少佐だ。もう出れるぞ!」
マーク少佐は、ジョーンズと同世代の古参中の古参。しかし、モビルスーツの操縦技術は高く、非常に頼りになる存在だ。
「こちらアービン大尉です。新兵器の様子は大丈夫です。行けます!」
新兵器というものを任され、彼女が一番緊張しているはずだが、それを周りに見せないところが、ほかのメンバーに比べて強いところだ。
「こちらウオッカ少尉です。ザクは大丈夫です!」
ウオッカ少尉は、フェンロ曹長の二歳上。しかし、若手なことには変わりない。期待の新人と言ったところか。
「全員、確認した。第六特務部隊、出撃するぞ!」
グワジン、ムサイ、パプアからモビルスーツが出撃した。目標は残る艦艇、サラミス級二にコロンブス級一。ここからが腕の見せ所である。そして、謎に包まれた新兵器『モビルアーマー』がそのベールを脱ぐときでもある。アービン大尉にも期待したいところだ。
いきなり『モビルアーマー』はその威力を見せつけた。アービン大尉が放ったメガ粒子砲は一発でコロンブス級を沈めたのだ!
「准将、やりました!この兵器の威力は絶大であります!」
アービン大尉の喜びの声が聞こえてきた。彼女がこんなにも感情を露わにすることは珍しい。
「すごい威力だ!このまま作戦を続行しろ!」
「はっ、了解!」
しかし、マット准将が後輩に負ける訳が無い。ザクが放った対艦砲。もちろん、弾はサラミスに直撃した。その威力は一発でサラミス級を沈めるほどだった。その上、高機動だ。広い広い戦地となっている、ルウムに光芒の光が確かにあった。 その時だった。グワジンにいるはずのフェンロ曹長から伝令が入った。
「こちらフェンロ曹長です。連邦軍の増援確認しました!各位、撃破してください!」
「敵の数は?」
「はい、准将!コロンブス級三隻です。しかし、何かおかしいですよね。コロンブス三つだけとは?」
確かにおかしい。コロンブス三隻だけでは、何の戦力にもならない。
「あぁ言われてみればその通りかもしれないな。いや、分かったぞ!あれは・・・」
「モビルスーツが積まれてる、ですよね。」
この発言から、ジョンの成長ぶりがさらに伺えた。
「ジョン中尉、その通りだな。君の言ってたことが本当に当たったな!」
「私が言ったんじゃなくてマッケイン中尉ですよ!」
しかし、ちゃんと他の人を立てることをジョンは忘れない。
「そうだったかな?しかし、相手が危険だ、と言うことは変わらない事実だ!全員、撃破するぞ!」
「はい!了解!」
連邦の艦隊のいるフィールドに向かうと、そこには目視で確認出来るだけで二十機ほど、計八小隊のモビルスーツが出撃していた。准将率いる部隊の数は僅か六機、圧倒的に少ない劣勢である。しかし、連邦軍は不慣れなはずである。マットが指揮をした月面スミス海の戦闘の時の連邦軍パイロットは全員死んだ。モビルスーツの操縦技術を教えられる人はいない。この状況なら劣勢でも勝てる!そう、マット准将は思っていた。
「准将、敵の数が多過ぎです!ここは後退しなければ…」
「何を言っているウォッカ少尉、後退などあるか!全部隊、前進せよ!」
「はっ、はい!」
どうやら連邦軍のモビルスーツと言っても、月面で戦ったタイプの改良型らしい(これが後にガンキャノンと言われるRX-77-02タイプ)。相変わらず大きなキャノン砲が目立つが、あれに当たればザクとてひとたまりもないだろう。しかし、マット准将の高機動型ザクの新武装、『ヒートサーベル』の威力を試すときでもある。 早速、連邦のモビルスーツが二機、准将に接近してきた。マットはザクの右手に持っていた対艦砲を左手に瞬間で持ち替え、腰からサーベルを取り出した。そして、二機同時にヒートサーベルで一閃。連邦モビルスーツは真っ二つになってしまった。
「じゅ、准将…すごいですね!」
「ジョン中尉、ありがとよ。そっちはどうだ?」
「ええ、ヒートホークで攻撃しています!あまり強くないですよ、連邦のモビルスーツ。」
「そうか、やはりパイロットの実力不足だな。しかし、モビルスーツの性能自体は低くはない。なかなかやるではないか、連邦よ。」
マットは少し連邦のモビルスーツに賞賛を与え、次の目標を定めた。その後も次々にモビルスーツやコロンブス級を沈めていった准将は、戦いが終わると、モビルスーツ十機、サラミス級一隻、コロンブス級二隻の大戦果を収めた。しかし、それだけの連邦軍人が死んでいったこともマット准将は忘れなかった。
こうして連邦軍とジオン公国の大戦争は終結した。宇宙での戦いに一定の区切りがついた連邦・ジオン両軍は戦いの舞台を地球に移していく・・・
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