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「意志の力」だけでは無理
集中力を上げる8つの方法

 現代人にとって、仕事の効率を低下させる原因は多種多様。「強い意志」の力だけで集中力を維持することには限界がある。「身体のメカニズム」に着目した仕事の方法を知っておこう。

撮影協力:大東文化大学

 現代人にとって、仕事の効率を低下させる原因は多種多様。「強い意志」の力だけで集中力を維持することには限界がある。「身体のメカニズム」に着目した仕事の方法を知っておこう。

 今ほど刺激が多かった時代があったでしょうか。仕事であれ、プライベートであれ多くの人が忙しく走り回っています。そんな忙しい現代人にとって、最大の敵は「仕事効率の低下」です。

 人間はロボットではありません。やるべきことが時間通りに終わらないこともしばしば。その上、私たちが身を置く環境はますます集中することが難しくなっています。電話、メール、そしてフェイスブックの誘惑もたったワンクリック先です。

 そんな状況でどのようにすれば仕事を着実にこなすことができるでしょうか。「意志力の問題だ」という人もいるかもしれませんが、私たちではそれだけでは対処できない状況に置かれています。メールの受信音が鳴った時、それを見ずにいられますか?

 今回は、ブログ99Uのライター、Tony Schwartz(「The Energy Project」CEO)が紹介する、生産性を上げるための8つのポイントを見ていきます。

1.考えなくてもできるタスクを増やす

 意志の力に限界があることは明らかです。食事制限を伴うダイエットが難しいのもまさにこれが原因。Schwartzは、最初から頼りにならないものは頼るべきでないとしています。その代わり、より多くのタスクを習慣化することが重要です。歯を磨くことや決まった時間にご飯を食べることを苦に思わず自然にできるのは、習慣になっているからです。なんでも習慣化してしまえば、いちいちやるかやらないかを考えたりすることもなくなりますし、考える前にやっているので苦痛を感じることもありません。

[引用]
 「文明は思考を伴わず行えるオペレーションの数を増やすことで発展していくのだ」。偉大な数学者であったアルフレッド・ノース・ホワイトヘッドはこのように述べている。習慣とは特定の時間に何度も繰り返し行われる極めて厳密な行為であるが、それがゆえに習慣化され、意志の力をあまり借りずにできるようになる。

2.集中力を保つことが難しい状況を避ける

 自らを厳しい状況に置くのはなかなか難しいことです。しかし、自分がやるべきことに集中しやすい環境をつくることは容易にできます。その一番手っ取り早い方法が「誘惑」を近くに置かないことです。

[引用]
 体重を減らしたいのであれば、大好きな高カロリー食品をキッチン棚から取り除くことや、レストランの店員にパンを断ることは理にかなっている。チャレンジングな仕事をやり遂げたいのであれば、パブロフの犬のようにメール音に反応する自分を制するよりも、決まった時間のあいだ、メールをオフにすることの方が賢明である。

3.誘惑に応じない

[引用]
 人生のほとんどの場面で、[誘惑]にただ反応する前に一度考えた方が良い。

 メールの受信音やフェイスブック音を耳にした途端にチェックせずにはいられませんよね。あなたが強く惹かれる誘惑こそ、あなたの集中力を妨げる最大の敵です。そんな誘惑にかられた時は、一度それをするとどうなるかを考えた方が良いでしょう。

4.十分な睡眠をとって「意志力」を保つ

 忙しいとついつい作業時間を確保するために睡眠時間を削ってしまいます。しかし、それは私たちが想像する以上に大きな影響があります。

[引用]
 ヴィンス・ロンバルディは「疲労は私たちを意気地なしにする」と言っている。特に自制力が損なわれ、すぐに得られる満足感を常に求めるようになる。一番理想的な睡眠習慣は、厳密な就寝時間を決めることだけでなく、消灯30分前からリラックスすることである。

5.一番大事な仕事は朝一番にやる

[引用]
 私たちのエネルギー資源は日が進むにつれて徐々に減っていく。1日の後半に一番大変な仕事をやろうとするのが難しいのはこのためである。

 人間のエネルギーのピークは朝です。そして、日が進むにつれて効率が悪くなっていきます。つまり、朝一番にやる仕事がもっとも効率がいいのです。また、朝の方が邪魔も少ないでしょう。Schwartzは1日のうちでもっとも多くの仕事量がこなせるのは朝の90分だと主張します。1日の残りの労働時間と比較しても、朝一番の方が処理できる仕事量が多いと言うのですから、この時間は何にも変えられません。

6.栄養価のある食べ物を頻繁に少しずつとる

 驚くことに食べ物と意志力には相関関係があります。栄養が不足していると人間は意志力が低下し、誘惑に負けやすくなるのです。

[引用]
 食べ物――具体的にはブドウ糖――は意志力の源である。しかし、身体は一度に限られた量しかブドウ糖を処理することができないため、最低でも3時間に1度は補給する必要がある。糖類や単純炭水化物は一気にエネルギーが上昇するものの持続しないが、脂身の少ないタンパク質や複合炭水化物はより安定的、持続的なエネルギーないし意志力の源になる。

7.マルチタスクで仕事をしない

 私たちの生活はますます忙しくなっています。そんな状況で多くの人がやりがちなのがマルチタスク。人間はひとつのことにしか集中できません。つまり、マルチタスクは非常に効率が悪いのです。忙しい時こそ、一気にではなく順番に仕事をこなしていきましょう。

[引用]
 メール、書きかけのテキスト、人の応対、情報の処理。私たちは絶え間なくいろいろなこと処理しなくてはいけない。そのため、すべてをこなすには同時に複数のタスクをやるほかないと思い込む。実際のところ、タスクの間を行ったり来たりすることでいわゆる「切り替え時間」というものが生じる。ひとつのことから別のことに集中を切り替えなければいけないため、最初のタスクを終える時間が平均で最低でも25パーセント増加する(*)。

8.90分周期で仕事をする

 人間の集中力には限界があるため、当然パフォーマンスにもムラが出てきます。Schwartzによると理想の集中時間は90分。それ以上はパフォーマンスが低下していくため、非常に効率が悪くなります。

[引用]
 人間はコンピューターのように延々とハイスピードで働くことはできない。むしろ、エネルギーの消費と補給を繰り返すようにできている。私たちは1日を分節する90分周期の「ウルトラディアンリズム」で、生理的な覚醒から疲労状態へと徐々に移行していく。一度に最大90分間(理想的には邪魔を伴わない状態で)、高い集中力を持続させるのが良い。90分経った後は、最低でも数分間はしっかり休むこと。心をリラックスさせ、脳を休め、身体のエネルギーを取り戻すためだ。

 1から8まで全部やったものの効果がないという人は、生産性を上げることを一度諦めましょう。一見、本末転倒なアドバイスのように聞こえますが、私たちは時間効率や生産性に執着し過ぎています。

 もちろんいろいろと手を尽くすことも重要ですが、どうにもこうにもうまくいかない時に無理をすると、余計に仕事に身が入らない状態から抜けられないこともあります。スランプに陥った絵描きと同じです。絵が描けないのなら、本を読んでみるといいかもしれません。ただぼーっと絵を眺めてみるのもいいでしょう。欲張りな現代人は時には「手放す」ことも必要なのです。

(翻訳・構成 相磯展子)
(99U「A Master Plan for Taking Back Control of Your Life」(Tony Schwartz著)をもとに翻訳、再構成)

[nikkei WOMAN Online 2015年11月26日付記事を再構成、日経電子版2015年12月7日付]

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