【コラム】1等国民、2等国民が存在する韓国

 1等国民と2等国民の衝突が増えたことで、韓国社会の不安要素は一層拡大している。通常ではあり得ない兆候だ。ソウルの地下鉄で19歳の派遣会社の職員が死亡した。

 内幕をのぞいてみると、なんと1等国民の組織であるソウル・メトロから天下りした職員たちが、派遣会社から正規職として月442万ウォン(約40万6000円)の保障を受けていた。その派遣会社には、月200万ウォン(約18万円)、月140万ウォン(約13万円)しか受け取っていない社員が大勢いた。死亡した技術者は、2等国民の中でも最下層だった。第2国民の集団は互いに「友よ、お前の過ちではない」と慰め合いながら第1国民の組織体を攻撃している。

 2等国民が死亡すると、すぐに「罪のない被害者」となる。一晩中「弱くてかわいそうな立場の者だけがひどい目に遭う」という雰囲気も助長される。黄色いリボンやのり付き付箋に数多くの激励文がしたためられる。政治家たちは現場を訪れては感傷に浸った書き込みで雰囲気を熱くする。理性を持って一体何が原因なのかを追究し、再発防止のために根本的対策を立てることは後回しとなる。ただただ哀悼し、悲しい表情を作ることだけが唯一の手段となる。

 生まれつきの国民性が哀悼と悲しみをいっそう愛するようにしているのか。韓国人にとって死は、常に恨めしく憤りを伴うものなのか。切ない死によって「国喪を求める雰囲気」が漂うたびに脳裏をよぎる疑問だ。

 オバマ大統領は先週広島で原爆被害者たちに会った。戦争を起こしたのは日本だ。その原罪を消し去ることはできない。しかし、原爆被害者たちは「弱くて罪がなくかわいそうな」人々だった。今日の生存者たちは当時何も分からない子どもたちだった。

 にもかかわらず、広島では謝罪要求のためのデモが起こらなかった。補償要求もなかった。原爆被害者の団体は1984年以降、米国に謝罪要求をするという方針を取っていたが、一切口を開かなかった。オバマ大統領が「謝罪はしない」と宣言したため、諦めたというわけではなかった。「核兵器の根絶に向け先頭に立ってください」と言いたかったというが、それさえも切り出すことができなかった。広島の人々は、71年間にわたって怒りと補償心理を引き続き沈めてきた。熱い感情を胸に抑え込んで生きてきた広島の人々を、われわれはどのように見詰めるべきなのか。

 韓国人特有の被害者意識は、忍耐という単語を知らない。高ぶる感情に歯止めが掛からない。ソウルの地下鉄で高潮した2等国民の戦闘意欲はさらに拡散するだろう。(沈没した貨客船)セウォル号や(無差別殺人事件の現場となった)江南駅の公衆トイレでも、その兆しは明確だった。600万人を超す非正規職たちが下敷きになってはいないのか。正規職の中にも、いつリストラで首を切られるか分からない2等国民予備軍は多い。

 1等国民と2等国民の間の全面戦争がいつ勃発するか気が気でない。選挙も地域対立が収まりを見せたことで、今度は所得階層間の対立、社会的身分間の対立に向かっていく様相だ。経済成長が鈍くなればなるほど社会的身分を原因とした葛藤、階層間の衝突は、徐々に激しさを増していくだろう。

 政党も、与野党を挙げて第1国民の利益を守るために動いている。心強い協会も労組も組合も存在しないBクラスの市民たちは、汝矣島(国会議事堂を意味する)に近づくことすらもできない。政界は、第2国民が安心して暮らせるように全力を挙げて取り組むべきだ。そうでなければ、第2国民は結局変則的で過激な闘争を選択するほかなくなるだろう。このまま第2国民のクーデターを待ってばかりもいられないのだ。

宋煕永(ソン・ヒヨン)主筆
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