暁月あきら/西尾維新『症年症女』
症年症女
作画:暁月あきら
原作:西尾維新
掲載誌:『ジャンプスクエア』(集英社)2016年-
単行本:ジャンプコミックス
『めだかボックス』コンビの新作である。
主人公である「少年」は、ある新病のせいで他者の個性を読み取れない。
視覚において、人の顔が塗り潰されてみえる。
たとえば人間ピラミッドから人間性が奪われ、ただのピラミッドに。
街を歩くと、看板さえも無個性な存在として目に映る。
逆に言うと人間の顔は、自分を売りこむ看板にすぎない。
治療と研究をおこなう病院を、長い髪の「少女」が訪れる。
彼女のうつくしい顔だけは認識できる。
こちらは少女の視点からみた少年の姿。
彼女も同病だった。
これほど鮮やかなボーイミーツガールは稀だろう。
思春期の恋愛感情にありがちな視野狭窄が、戯画的に強調されている。
少年は少女とおなじ、より高度な研究機関へうつる。
この百面相は、顔認識をテストするための当てっこゲーム。
僕は「蔑(さげすみ)」が好きだけど、どれもかわいい。
西尾の原作独特の遊戯性を、暁月はうまく料理している。
「キャラ」が持て囃される現代文化の一翼をになう作者たちは、
あらたに「そもそも個性とはなにか」とゆうテーマを提示。
主人公・ヒロイン・モブキャラなどのお約束を当然視する読者をからかう。
やたらエスカレーターの長いこの施設はNERV本部に似てるとか、
ツッコむのがバカらしくなるくらい読者を翻弄する。
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