「韓国は近年の反日教育で反日になった」というのは勘違いで、実際は100年前の保護国時代から反日排日の世論だった。伊藤博文が暗殺されたときは「拍手して喜び」という状態だった。
明治四十二年十二月一日印刷 ※1909年
韓国現時に於ける地方人心の状況
三、官民の日本政府に対する感情其他信頼の程度
官吏は日本政府の施政を秕議せざるのみならず日本人に対しては常に其徳沢を謳歌し日韓人合同席上に於ては日本の厚意を喋々するを常とす。然れども一と度韓人のみの会合なるときは忽ち一変して日本を罵れり。若し儒生両班にして日本人に倚らんとする者あれば之れ必ず猟官の目的の為めにして信服し来れるものにあらず。而して久しく貴族の暴政に苦められたる国民中の多数を占むる下層民に至りても表面新政の公平なるを喜び警察に信頼し進で訴を為す傾向を来したるも之亦衷心より謳歌し来るにあらざるものの如し。殊に三税実施以来韓国民の負担は日本人官吏の収入に帰するものなりと猜疑し慶尚全羅忠南の所謂三南地方は所在日本人移住し商業に開墾に種々の事業に着手する者多数なるより日本は口に韓国の指導啓発を唱へ陰に韓人同化を図り以て韓国併呑の野心を達せんとするものなるべしと唱導し耶蘇教徒中には将来韓国が独立を図り文明の域に進むには米国に倚らざるべからずとの思想を有する者多数を占め而して此思想は一般民に普及されつゝあり。
要するに韓国官民にして衷心より日本政府に信頼せんとするものは極めて少数にして現に全羅慶尚各道人民が日本人の行動就中軍隊の行動を秕議することに汲々とし或は新統監は武断派なるを以て其在任は韓国の利益とならずと唱へ黄海道平山鳳山兎山地方の如きは概して事の大小是非を問はず日本人官吏若くは日本人の介入を喜ばず平安道方面には公然韓国独立策を唱道するもの多々あり。各道到る処の人民が日本政府又は統監政治を批難せる新聞記事を読むに当り多数鳩首凝義するの風あるは争ふべからざる事実なりとす。
四、官民が日本官民に対する感情其他信頼の程度
イ 韓人官吏が日本人官民に対する感情
官吏は表面好意を装ふも多数は内心排日的思想を包蔵し殊に日本人が韓国官吏に任用せられたる以来日本人と雖も韓人官吏の韓人官吏の配下なりとの感を以て動もすれば排日的悪寒を転じて日本人を軽侮せんとし韓人官吏は互いに気脉を通じて日本人官民に城壁を築くの傾ありしが今や漸次日韓人官吏間融和の徴あるものの如し。而して日本人を長官とする韓国人官吏は待遇の切実なると事務の公平なるとにより自己の位地安固なる如く思念し服従観念明白なるの状あり。
ロ 人民の日本人官民に対する感情
両班儒生の徒は日本人官吏の増加に伴ひ其権力の喪失せるを恨み一般に危惧の念を以て日本人官民の行動を注意しつゝあり。
尚ほ韓国官民中には韓国は日本の先進国なりと誇るものあり、或は日本人と雖も官吏として韓国人の下風に甘ずるを見ては漫に畏敬するの要なしとの意を以て評するものあり、其見る処千差万別なりと雖も日本人官民の欠点を誇大に称して誹謗せんとし下層民にありては日本人の来住は物価の騰貴を来し生活上に影響する處少なからずとなし之を喜ばざるの状況あり。只だ慶尚南道にありて日韓人同友会を組織し以て土地の繁栄を図らんとする者を輩出せるは注意すべき現象にして各道暴徒の減退により秩序回復せらるゝに従ひ日本人官民を嫌忌するの趨向減少しつゝあり。
五、官民の韓国政府並に大臣に対する感情其他信頼の程度
一般民は統監府設置以来誅求聚斂を免るゝに至り又大臣の存在を云為する者なきと共に敢て信頼するの傾向もなし。反之有識者の多数は親日輩売国賊等の言を以て施政の殆んど全部を秕議し、或は曰く今日の大勢は大臣貴族と雖も如何とも為し難し挙国一致新学を勧め愛国歌を謳ひ愛国心を喚起して国家観念を国民に注入すべしと。又曰く内閣は新政に藉口して日本に保護を約し一身の利益を図(?)るに過ぎざる売国奴なりと。或は曰く万政一に統監の指揮に出で政府は全く独断専行の権を喪失せりと。又曰く政府の権皆日本人官吏の掌中に帰せりと。或は政府大臣等皆日本人官吏の鼻息を伺ひ大臣の職は虚位に過ぎず最早畏敬するに足らずとの説を為せりと。平安北道に於て宋秉畯内部大臣辞任以来民心多少静穏に帰せるの傾あると咸鏡南道大韓協会員が朴内相を歓迎するの状あるを異とするのみ。
民心の状況前顕の如しと雖も地方官が政府大臣を畏敬するに至ては今尚往日と毫も異らず常に大臣に接近せんとするに汲々たる状態は各道皆其揆〔ママ〕を一にするが如し。
六、人民の観察使郡守に対する感情其他信頼の程度
地方官が人民に対する生殺与奪の暴権を行ふ能はざるに至り加之警察権全く喪失し今又司法権も漸次職権中より分離し去らんとするより威権殆んど地に堕ち亦往日の如く人民は毫も畏敬せざるに至れり。殊に慶尚北道地方に於て裁判所が検挙し盛んにするより地方官吏の非行を発見したる人民は之を奇貨とし直に訴を為すの風増長せられつゝあり。又韓人官吏が日本人と交際をなすときは之を誹謗し咸鏡南道徳源府尹を目して日本党と称して排斥し或は平安南道耶蘇教徒等排日的行動を為す徒は観察使を日本化せりと罵り一進会員は農事試験場寄付金失敗等を数へて観察使を批難し全羅南道一部者は観察使以下韓人官吏は日本人官吏の頥使に甘んずと批難し黄海道に於ては人民郡守の処分命令を肯ぜず其不法巡査駐在所に訴ふる等の例あり、反之京畿に於ては人民漸次観察使の至誠に感じ江原道に於ては人民観察使が実践躬行殖産の奨励に尽力するを見て其徳を頌する者あるに至れり。
七、外国官民の日本政府に対する感情
各道を通じて外国官民数甚だ多からず。而して往年排日的行動を肆にせし宣教師等も今は殆んど其形を潜め忠清北道長湖院仏国天主教宣教師「ブラオン」が統監政治を快とせず慶尚南道耶蘇協宣教師中陰に排日的口吻を弄し信徒募集の手段となす状あるを除きては一般に対日本感情頗る良好なり。現に倫敦「タイムズ」記者「チロル」仁川に来到の際在仁川外国人が統監政治を頌讃せる例あるは偶々一般外国人の意嚮を知るに足るべきか。清国人に至りては専念其業に努むる外政治を談ずる等の者なし。只だ僅に平安南道鎮南浦広梁湾塩田工事苦力紛議に対し在留清国人悪感情を抱きたる状あるのみとす。
八、外国官民の日本官民に対する感情
外国人官吏は日本人と親善を望むの風あるも其多数を占むる耶蘇宣教師は其事業の干係上日本人との交際を避くるの風あり。然れども悪感情を抱くが如きことなきものの如し。現に忠清南道太田方面の外国人が公共衛生費を負担しつゝあるは其適例ならんか。
九、外国官民の韓国政府に対する感情
万事日本の意嚮に依て支配せらるゝものの如く見做し韓国政府に対しては各道を通じて殆んど外国人の視線を惹かず。従て感情を知るに由なしと雖も要は韓国政府を重要視せざるにあるものの如し。
一〇、外国官民の韓国官民に対する感情
殆んど冷静にして其感情を捕捉するに由なし。然れども多くは韓人を目して猜疑心深く表裏ある人民と為すものの如し。耶蘇宣教師が学校を興して韓民を優遇するは各道同一なりと雖も多くは布教上の手段に基くものにして全然好感情を以て迎ふるにはあらざるの状あり。
清国人は今尚韓人を蔑視し大国人を以て尊大己れを持し暴行脅迫を敢てして憚らず。到処韓人に三十六契(頼母子講チーパー)を売りて利益を収む。韓人又清国人を尊信し容易に抵抗の状なし。
一一、新に発布せられたる法令に対する官民の感情及其周知の模様
新に法令発布せらるるも常に反響なきを常とす。然れども酒、烟草、等の三税発布せらるるや忽ち伝播し悪政と称し江原道には一村挙って烟草の耕作を廃することを議約したる処あり。如此直接利害の干係あるものなるときは喧騒するの状あるより見れば其知ることは早きも直接利害の関せざる法令なるときは其感想を表白せざるにあるものの如し。又京畿官吏中には近時の法令は文明国の制度を翻訳して施行せんとするに過ぎず凡そ国情及民情慣習を斟酌せずして実行せんとするは恰もに瞽者に視を責め躄者に歩を強ゆるに均しと評する声あり法令発布毎に観察使は郡守に郡守は面洞長を招集して周布方を命ずるを常とす。然るに財務署は重要の地区に掲示板を建設し面洞長は常に法令周布の手続を為すを避けんとするの風あり殊に人民に直接利害干係するのものにありて然りとす。故に掲示板の建設を尤も必要とす。
一二、両斑平民相互間の感情
両斑は社会組織上優等の地位に居り官職は殆んど世襲の如くし平民を見ること恰も奴隷の如くし威権を擅にし民財を横奪するを当然の如くせり。平民又両斑を畏敬し之に事ふるに順柔なりしかば両斑の徒は大平を夢み亦時勢の推移に注意せざりしに近時官吏は多く下等社会より輩出して遽かに権利平等を主張するより今将に社会組織は自然に崩壊せられんとするの状況にあり。之を以て忠清江原平安道に於ては両斑平民間相軋轢せんとするの徴あり、其他の各道に於ては未だ斯る状況なきも民財掠奪を特権の如く思惟せし両斑の権利は何れも其跡を絶てり。為めに両斑の徒は一般に新政を喜ばず。両斑の権力消滅は日本人の居住する地より起り僻邑にありては今尚平民より大なる尊敬を受け思想界の中心にして此潜勢力は未だ容易に絶滅せざるの状あり。
一三、官民の一般宗教就中日本人其他外国人の経営せる宗教に対する感情
韓人は宗教心頗る深く就中最も儒教を尊敬したりしが今や衰頽の域にありて僅に冠婚葬祭に其名残を止むるに過ぎず。仏教に至りては全然廃頽して精神界と遠かり毫も相関せざるに至れり。韓人のみを以て経営する天道教侍天教は教徒多きも宗教と云はんよりは寧ろ政治上の結社として之を迎ふるの状あり。日本人の仏教は漸次其の数を増加しつゝあるも単に日本人居留地のみに偏在し日本人の葬祭を司るのみにして進んで韓人布教の策に出でず、韓人も亦之を冷視せり。慶尚南道に於ては日本人僧侶韓人に対し弘布に努めつゝあるも帰依者少し。平安北道忠清北道咸鏡北道の如きは日本人にして仏教弘布に着手したるもの未だ曽てあらず。耶蘇教中の天主教は甚だ不振の状況にあり江原道平安南道に於ては教会費の負担に堪へずとなし脱教するものあり。英人経営の耶蘇教は其数又甚だ多からず従って勢力の見るべきものなし。米国人耶蘇教に至りては宣教師自ら韓国の風俗に従ひ僻邑に居を占め学校を設け医薬を給し人心収攬に努むるより韓人も亦之を歓迎し日に月に盛大に赴きつつあり。然れども韓人は宗教心の発動により入教すと云はんよりは寧ろ政治上の意味を以て入教するにあるものの如し。
一四、官民の耶蘇教に対する感情及入教の動機並に盛衰
中流以上は今尚ほ儒教を報じ耶蘇教を厭ふの風あり現今耶蘇教徒の多数派下層者に過ぎず、偶々両斑等にして入教するものあれば新政に対する不平者或は其犯せる罪過を免れんとするものたるに過ぎず。然れども両斑儒生の徒も漸次接近し仮令進んで入教するの意なしとするも亦敢て悪感を以て迎ふるが如き状なきに赴くの傾向あり。
入教の動機は概ね其勢力を藉って権威者に対抗せんとするにあるか或は官吏の誅求を免れんとするにありて千差万別なりと雖も耶蘇教が盛大の因を致したるは日露戦争にして各道中最も盛大なるは平安道なりとす。彼の平安北道定州郡の如き現今約二万の信徒を有し各部に冠たるものあるも日露戦争当時は僅に定州に微々たる一個の教会堂ありたるのみなりき。当時宣教師等は韓国は将来日本に併呑せらるべしとの口実を以て其災厄を免れんと欲せば耶蘇教に入り其保護を受くるに如かずと巧みに排日的言動をなし此説痛く韓人の歓迎する処となり多数の信徒を吸収したるに由るものとす。各道の布教状況も概ね之れと同一なり。而して爾来数次の日韓協約の成立を見たるより益々米国宣教師の先見に服し尊信するに至り韓人をして将来倚って以て独立を図るか若くは慈愛に富める誠実なる保護所謂人道上の保護を為すものは米国なりとの感念一般に普及しつゝあり。之れ米国人経営の耶蘇教が歳と共に旺盛となり英仏人の経営する耶蘇教を凌駕するに至りたるものとす。然れども信徒の出入常なきのみならず中流以上者の多数を信徒に網羅せんとするは未だ容易に成効〔ママ〕の見込なきものの如し。
一五、新学新設備に対する官民の感情
国家将に亡びんとするに至りたるは妄りに旧学にのみ固習したるに基因す、苟も国権を回復し独立国となり太極旗を世界に掲げんと欲せば須らく新学を研究し其精を取り其華を収むるを一大急務とす、との観念は韓民の脳裏に深刻し今や此の思想は各道人心を支配せんとするの観あり。又地方官も此趣旨を鼓吹し以て学校設立を促すより靡然として風をなし山間僻邑と雖も尚一学校の設立を見ざるの地なく寧ろ濫設の観なくんばあらず。之が為め現今人民は其維持費の負担に苦む処あり。而も往々此美名を利用し寄付金等を募り私服〔ママ〕を満たさんとする輩あり。
学校設立風潮の勃興は元より喜ぶべき現象なりと雖も其設立動機は国権回復を主眼とするにありて京畿及忠清南道一部両斑間に未だ子弟を新学に依りて教育するを避けんとする風あるを除くの外は各道趣向を同ふし競ふて新学を拡張せんとし入学希望者常に過剰の状あり。殊に中流以下の子弟が新学に志したるの●あるは国権回復を主眼とする学校設立の動機と併せて注意すべき一大重要件なるが如し。
一六、政社其他の会の状況会員の行動及官民の会に対する感情(221枚目~)
一進会は各道全く萎靡沈衰に陥り平安南道の如きは会員中一進会を口にするだに避くるの風を生じ全羅道に於ては会員中大賊の群に投じ或は猥りに人の財物を恐喝取財し漸く生活の資を得んとする者あり。黄海道は一進会員皆な侍天教徒にして殆んど無資無頼の徒多く弊害尠少なりとせず。要するに一進会員は概ね下層者が一時会勢振興の時に呵咐し漫に親日を標榜して民財を掠略し深く良民の怨恨を買ひたるに当り偶々暴徒蜂起し大打撃を受け僅に其名を存するのみの悲境に遭遇せるものとす。其偶々暴徒討伐上便宜を致すの観あるも之に伴ふ弊害却て甚しきものあり。咸鏡北道は一時一進会道の勢力中心となりしが弊害益々滋く為めに暴徒の攻撃に遇ひ殆んど全滅の状ありしが近時官民中入会する者を生じ較や復興の望あるに至りしも未だ行動するが如き域に達せず。
大韓協会は各道を通じ会員中流以上者に属し会員少数なりと雖も一進会を凌駕せんとし平安南道の如きは一部の民心を支配するの潜勢力を有すと。然れども全道僅に五十内外の支会にして会員又六千を出でず一般より見るときは会勢不振の状況にあり。全羅北道の会員が施政改善国民教育を唱導し地方民を益すること少なからざるものあるも咸鏡北道の会員は殆んど皆露領に根拠を有する暴徒と通じ其物資の供給密偵等を事とせしが支会首脳者を逮捕処分せし為め土崩瓦解せり。
要するに大韓協会は未だ全国に周ねからざるを以て一勢力として見る能はざるも社会の中流者を会員に吸収し又其会員の多数は排日的傾向を有する注意人物なり。其他の会としては京畿の畿湖興学会忠清北道の商務会忠清南道の大韓労働会大韓実業会江原道の関東学会黄海道の大韓労働界帝国実業会平安南道の自正社平安北道の商務●実業組合等あるも殆んど有名無実の団体たり。西北学会は平安咸鏡黄海道に根拠を占め耶蘇教徒と提携し学校を興し遊説を為し会の拡張に努むるも見るべき効果なきの状あり。反之黄海道の紳商社平安北道の定州商務会は殖産興業の発達商業上の利害共通を目的として組織し将来有望の会たり。其他平安南道陽徳郡儒生及有力者を以て組織せられたる郷会は郡政を論評し郡守の諮問に応じ(?)有力の会たり。観人は団体結合に狂奔するの癖あり、近時国権回復設と共に国民の合心団結を説く者続出せり。然れども其組織は必ず野心の欲望に出弊害あるを常とす。
一七、物価高低の状況及其原因
韓人のみ居住する地にありては著しき物価の変動を見る能はず。反之全羅慶尚道の如き日本移住民多数の地にありては日常品の物価日に騰貴し而かも昨年来米価の下落は韓人間の金融を逼迫ならしめ就中全羅南北道慶尚南道の如きは葉銭回収の影響を受けて通貨欠乏し窮民益々増加し此状況数月に亘ては流离顛憊(?)の止むべからざるものありと云ふ。是に於てか韓人は痛く日本人の増加を厭ふの風あり。平安南道に於ては経済不振の余響により唯一の物産たる絹布類一疋金二円余の低落となり遂に生産過剰となり機業家は一般に困難を訴へつゝあり。又忠清北道平安南道にありては三税実施以来酒、煙草、約二割の暴騰となり窮民法令の実施を恨むこと甚だし。独り江原道江陵地方は命令航路開始以来産物の輸出入に便利となり輸出品は三割以上六割の騰貴し輸入品は一割乃至二割五分の低落を来し韓民喜色あり。然れども之等は極めて稀有の事実にして一般には物価騰貴金融逼迫而かも職業なきより到処生活難の声に充ち其救済は焦眉の急なるものあるが如し。
一八、韓国民の愛読する新聞又は書籍及其の感化の状況
韓人の使用する書籍は史記通鑑の類にして論語孟子等は専門的書籍として儒生等の使用するにあるが如し。新刊物としては欧米建国又は亡国史を愛読す。而して各道を通じ其最も歓迎せらるゝものは米、伊、瑞西国の建国史安南波蘭亡国史東国史略にして之を韓国の現状に比して耽読するにあるものの如し。又新聞紙にありては大韓毎日申報独り各新聞の数十倍の読者を有す。新聞中購読者の最も少なきは大韓新聞及国民新報なりとす。雑誌にして各道に購読者を有するものは教育月報及少年等なり。其他の畿湖興学月報は京畿忠清に西北学会月報は黄海平安咸鏡に湖南学報は全羅に嶠南学会雑誌は慶尚道に購読者を有す。又大東学会の雑誌の購読者は殆んど京城に止るものの如し。
新聞雑誌の感化としては特に記すべきものなし。建国、亡国史大韓毎日申報の如きも所謂悲歌慷慨の極之を愛読すと云はんよりは韓国の現状に比し好奇心より迎るものの如き観あり。就中大韓毎日申報購読者にありては日本及政府要路者を罵るを快とするにあるが如し。然れども全羅南道暴徒首魁金聿は大韓毎日申報により暴徒を起したることを自白し又同新聞が安奉問題に関して日清開戦説を掲げ為めに平壌市場清韓人取引に恐慌を来さしめたる最近の実例あり、以て其影響が看過すべからざるものあるを知るべし。今左に愛読者多寡の順序により種類を掲ぐべし。
一、史伝類
一、越南亡国史 二、波蘭亡国史
三、米国建国史 四、瑞西建国史
五、伊太利建国史 六、東国史略
七、幼年必読
一、小説類
一、九雲の夢 二、謝氏伝
三、仏(?)院伝 四、夢見法
五、沈賎伝
一、新聞類
一、大韓毎日申報 二、皇城新聞
三、帝国新聞 四、国民新報
五、大韓新聞 六、耶蘇新聞
七、京郷新聞 八、聖径降路(?)月報
雑誌類は前掲せるを以て略す。
「秘」印
兇変に対する韓国民心状況
今次の遭難に対する地方民心は既報の如く韓国民上下を通じ一般に重根の兇行を壮挙とし内心歓喜するが如き状あり。其著しきものは京畿冨平郡私立桂昌学校教官朴秉斌は二十七日哈爾賓に於ける兇変を聞くや大に喜び当時疾病臥床中の教師任章淳に告げたるに任は蹶起して安重根を称揚し同僚趙竜培三名と共に趙方に祝宴を開き日本人教師竹末簾(?)を招待せしも其応ぜざるや再三再四列席を求め又同道通津郡奉城面公学校職員は十一月一日開校式に藉口して遭難に対し祝杯を挙げ仁川羅馬加特力教に属する韓人牧師李考鉉、科ね尚沃、林海観等は二十七日夜信徒二十四名と共に遭難祝賀会を開き同教宣教師仏国人「デヌー」は同教付属博文学校に於て生徒に対し、今回の遭難は東亜は元より欧州各国に平和を来すは勿論韓国々運の為め最も喜ぶべき事件なり、速に加害者の無罪と幸福とを天に祈るべし、と告げ、相共に祈祷したりと。黄海道に於ては十一月一日海州邑東門外高昌周方に有力者多数集合祝宴会を開き其席上呂万変なる者、伊藤公を暗殺したるは同胞なりと、我国人尚此の志ありと云ふや、金得五なる者は、今回の事たる之を耳にし誰れか快哉を唱へざらんや、然れども今は警察の在るあり、漫に口外すべからずと戒め多衆口を噤して黙念たりしものありと。平安南道平壌に於ては十一月四日国葬式当日李殷弁(?)なる者日韓国旗を門戸に掲げて吊意を表するや隣家美以教に属する耶蘇書肆太極書館より同教の有力者安泰国等出て来り伊藤公の葬儀に韓国々旗を掲ぐる要ありや、思ふに国家観念なき者なるべし、と罵り、平安北道義州方面に於ては公の遭難は韓国独立に利益を来せり、兇行者は実に愛国忠君の士なりと一般に称揚すと、同路竜川府尹金祥演の通信によれば義州地方民心を推究するに内心兇行者を追慕称讃し表面兇行の結果日本に併呑せらるゝなきやを憂ひつゝありと、以て該地民心の如何を知るべし。忠清南道咸鏡北道に於ては表面哀悼の意を表し内心兇行を歓迎するの状あり、咸鏡南道に於ては十月二十八日元山里李大和方に金春遠、李圭植、朴東根、沈俊澤等集会の席上春遠は、吾人は「ウジ虫」同然にして国権回復の計立たず兇行者は真に忠国者なり、と称揚し圭植、東根は忽ち其言に讃し、此志ありて初めて国権回復すべし、と云ふや氏名不詳者傍らより此の兇事たる必ず韓国を悲観に陥るものなり、徒らに兇行者のみを賞すべきにあらずと告げたる事実あり。又咸興大韓協会支会長は、公の遭難は気の毒なるも老年なれば是非もなし、と評せり、又京畿路冨平人にして元冨平郡守たりし李明憲は伊藤公を暗殺するも日本の対韓政策に変更を来さゞざるのみならず却て何等かの要求を受くるの基を為さしめたり、徐丙與尹百憲等は兇行者は韓国擁護の赤誠より出たるものならんも斯る行動は韓国を危殆に陥るものなりと嘆じ平安南道平壌耶蘇教徒中の有力者金有鐸は伊藤公は老年にして余命決して永からず然るに今兇害を加へ遂に韓国に不利を招かしめたりと、大韓協会支会長金亀禧は伊藤公を殺害するも日本の覊絆を免るゝに由なし、然るに今之を殺害し却て伊藤公を世界の大人物たらしめたりと嘲りたりと。反之慶尚北道大邱尹大変、姜永周、金英斗の三名は民間より十三道代表者を東京に遣り兇行者の行動は韓国民の意思にあらざることを発表謝罪し以て国運を未倒(?) に防ぐべしと唱ひ各道孔子廟付属役員に書面を送りたり。尹等の此挙は誠意に出でたりと云はんよりは寧ろ名利の為めにあるものゝ如し、即ち尹大変は清道学校教師にして日本人経営に係る大邱新聞社に屡々出入して同社韓国文新聞記者たらんと希望中の者なり。金栄斗は一進会大邱支会長にして姜永周は其会員たり。而かも東洋実業奨励会顧問と称する三浦庄三郎の意見に聞き発起したる事実あり。其勧誘文に対する各道の意見は現に取調中に属す。其他皇帝は軍司令官に勾引抑留せられたり、或は謝罪として日本に拉去せらるべしとの評説は各道同一なり。
要するに各道民心の状況は内心之を歓迎し表面哀悼の意を表し極めて少数の有識者と雖も内心兇行を歓迎することは其揆〔ママ〕を同ふす。只其異なる処は兇行にあり韓国遂に併呑せらるゝなきやを憂惧するにあり。然れども駐留以下の多数人民にありては遭難に対し何等の感想なきものゝ如し。
尚ほ京城に於ける最近の民心状況左の如し。
初め前統監遭難の報伝はるや京城の韓民拍手して喜びたるの状あり。大韓日報が剣を取って起つべしとの記事を掲ぐるや韓民下流社会に至る迄倭奴何をか云ふ在韓日本人との個人間の争闘なるときは必ず勝を制すべしと傲語する者あるを見たり。最も事理に通ずる一部少数者間には一面兇行を喜ぶと同時に一面には之が為め日本の対韓政策に激変を来たし遂に併呑の厄に陥るなきやを憂ふるの状ありしと。然れども其喜憂も暫時にして十一月四日奨忠壇追悼会の如き李完用等が専ら奔走して参会者を勧誘し成立せしめ又李学宰なる者伊藤公爵頌徳碑建設を名とし自己の主宰すと称する各道商務組合所に寄付金の勧誘状を発したり。然れども其企ては決して真意に出るに非らず、建碑に藉口して私利を図らんとするものあるものゝ如く韓民又李学宰等の性行を知悉するより冷笑して之を迎ふるものゝ如し。又金聲根(正一品輔国前大臣)、南延哲(正一品前大臣)等が発起し日韓両国皇帝陛下の御真影を奉安する紀念堂を設立して皇上の聖意を仰体し日本国天皇陛下の聖徳を賛誦し以て百年後に伝ふる為め一●の碑を建て韓国臣民の微誠を表すべしとなし南延哲起草して既に趣意書を作成せり。然ども之れ又真意に出るに非らず。即ち日本の対韓政策の鋭鋒を避け併せて他日自己権勢の立脚地を造らんとするにあるものゝ如く、而して李完用は其背後にありて之を操縦するものなりと揣摩するものあり。従って韓民多数の歓迎する所とならず結局不成効〔ママ〕に終るべしとの説あり。
十一月四日追悼会には七十八校約二千名の生徒参会せしも之れ元より政府要路者勧誘の致す処にして進んで参会したるにあらざるものゝ如く其勧誘に応ぜざりし学校中南部長洞(米倉町)所在耶蘇美以教付属学校にありては教師金●、李東寧及同教牧師全悳(?)基等は参会の勧誘を受くるや伊藤博文は韓国彊土(?)を亡ぼしたる大寃讐なり、其喜ぶべき死に対し焉ぞ学生を率ひて追悼会に参列せんやと罵り遂に不参したるのみならず更に同教が遭難追悼会を営まんとするの議あるや全悳(?)基は米国宣教師(ハリス博士とも云ふ)に面会し果して追悼会を開催すとせば韓人は全部脱教し一人の信徒をも存せざるに至るべしと主張し其議を中止せしめたりとの説あり。一進会機関国民新報社長崔永年は韓国官庁の発起せる追悼会は成立せるも民間の主唱に基く追悼会未だなきは日本に対する真情吐露の道を尽さゞるものと云ふべしとなし韓人経営各新聞主催となり追悼会を開催すべき議を提出するや、大韓新聞、漢城新報同意せしも大韓協会機関大韓民報は十一月四日追悼会は官庁のみの経営にあらず官民共同の追悼会にして韓国民は全部参会せり、而も再び開催するは理由なしと主張して反対し大韓毎日申報帝国皇城両新聞皆な之に和し盛に崔永年の計画を攻撃せるより、崔は敢て他新聞の力を待つに及ばず独力開催すべしと唱へ十一月十四日東大門外に於て追悼会を開催せるに大韓毎日申報、大韓民放、帝国皇城両新聞は遂に参会を為さゞりき。近時大韓民報は排日的言論を紙上に掲げ却て大韓毎日申報より甚しきものあり、之れ蓋し巧みに民心に投じて排日的思想を挑発せんとするあるが如く該新聞の記事は能く現時の韓国民意を発揮するものなるが如き観あり。
西北学会員は兇行嫌疑者として李甲安昌鎬等が逮捕せらるゝや兇行に関係なき事実明かなる無辜者を漫に逮捕せるは日本が横暴を逞ふする証拠と云ふべし、如此んば韓民生色なきに至らんと誹謗し会員韓増竜の如きは統監府に攻撃書を贈り併せて其是非を世論に訴へ憲兵の処置不当なりとせば多額の要償金を懲出せしむべしと唱へ会員一同に勧誘せしも其挙は尚早しとなし賛同する者なかりしと。
要するに兇行を歓迎せることは早く既に過去に属し今は只だ日本の対韓政策が威圧政策進んでは併呑政策に変化するなきやを憂ひ韓国は遂に日本に併呑せらるゝに至るべしと推し現に韓国号を廃し皇帝を王と改称し大臣観察使は日本人を以て任用することゝなるべし等の流説を生じ只管日本将来の対韓方針を知らんと勉め兇行の結果を憂慮するの状ありて之を公言する者多々あると同時、に韓皇陛下謝罪の為め日本に渡航すべしとの説に対しては西北学会、大韓協会、員中には果して事実なりとせば極力反対すべしと唱ふる者あり、然れども一部者中には此兇行を利用し現内閣を更迭せしめんとし統監は李総理に辞職を勧告したり、或は李完用は兇行を前知するの理あり故に其時日発覚し統監より辞職を強命せられたり等の流言浮説を放つ者あり。
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レファレンスコードA05020350200(206~238枚目)韓国警察報告資料巻の1