5月17日に全会一致で成立した熊本復興の補正予算。だが、この予算には“官邸のやりたい放題”を可能にする暗黒のシナリオが組まれていた…。その正体とは?
■7千億円を自由に使える?
国会での質疑応答なんて退屈なものと相場は決まっている。しかし、ごくまれにコトの本質がパッと見える瞬間がある。5月13日、民進党の福島伸享(のぶゆき)衆議院議員(茨城1区)が衆院本会議で行なった、熊本地震災害対策の補正予算に関する質問がそれだ。
福島氏は、今回の補正予算のあり方に異議を唱えると同時に国会、そして立憲主義を軽んじる安倍政権の危うさを一瞬で浮かび上がらせたのだ。早速、福島氏を直撃した。
―熊本地震の復旧、復興のための補正予算が5月17日に成立しました。この予算のどこが問題なんですか?
福島 補正予算の成立そのものに異論はありません。大規模災害の対応には与党も野党もありませんから。問題は補正予算の中身なのです。
―補正予算は「災害救助等関係経費」と「復旧等予備費」で、総額7780億円が計上されましたが。
福島 住宅の確保や被災者の生活再建支援などのために使う780億円の「関係経費」。これは問題ありません。しかし、くせものは7千億円の「予備費」です。ガレキの処理から公共施設の復旧、農地の修復、さらにはその他のソフト事業まで、復旧に必要な経費はすべて「予備費」で賄(まかな)う形になっています。
―それがなぜくせもの?
福島 この予備費、使い道はすべて政府の裁量だけで決めることができ、国会の承認は事後でよいことになっている。つまり、国会のチェックを受けることなしに安倍政権が自由に7千億円を使えてしまう仕組みなわけです。
―補正予算のうち、予備費の占める割合が9割。確かにほぼ全部といえますね。
福島 ピンとこないかもしれませんが、総額の9割が予備費の補正予算なんて前代未聞です。この補正予算案が野党に示されたのは本会議のわずか2日前ですが、内訳を見た時、「こんな予算ありえない」と、目がテンになりました。
憲法83条は「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない」と定めています。緊急時だからといって、国会のチェックや議決なしに、一政権の裁量だけで税金の使い道を決めてしまおうというやり方は、財政民主主義の観点からも立憲主義の観点から考えてもおかしいです。