【はじめに】
村上春樹の初期三部作が電子書籍で配信されるという内容でした。
せっかくのなので軽く紹介したいと思います。
【概要】
今まで村上春樹の作品は、エッセイを中心にしか配信されておらず、
長編小説は『アンダーグラウンド』と『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を除いて電子書籍化はされていませんでした。
今日上記に書いた通り、Kindleアプリから通知があったので、
Amazonのキンドルストアを覗いてみると、なんと村上春樹の初期三部作がKindleストアに。
まだ発売はされておらず、予約の形になるようです。
7/1(水)に配信開始とのこと。
今回電子書籍として配信されるのは、AmazonのKindleストアだけでなく、
紀伊国屋書店のサイトや、楽天ブックスでも同時期に配信されるようです。
【初期三部作について】
風の歌を聴け (1979年)
野球を観戦しながら、突如本を書くことを思いつき、生まれた村上春樹の処女作。
ジャズバーのマスターの文章とは思えません。
「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」P.7
上記の文章で有名な本作ですが、村上春樹が苦手な方からすれば、キザな文章に見えるかもしれません。村上春樹の文章はシンプルなようで癖が強く、なんだかんだで人を選ぶかもしれまんが、ぜひトライしてみてください。
1973年のピンボール (1980年)
「遠くから見れば、たいていのものは綺麗に見える。」P.105
村上春樹の文章ではなくジェームス・B・ハートレイの文章ですが、挿入された下記文章も素晴らしいです。
ピンボール研究書「ボーナス・ライト」の序文はこのように語っている。
あなたがピンボール・マシーンから得るものは殆ど何もない。数値に置き換えられたプライドだけだ。
失うものは実にいっぱいある。歴代大統領の銅像が全部建てられるくらいの銅貨と、取り返すことのできぬ貴重な時間だ。
あなたがピンボール・マシンの前で孤独な消耗をつづけているあいだに、ある者はプルーストを読み続けているかもしれない。
またある者はドライブ・イン・シアターでガール・フレンドと『勇気ある追跡』を眺めながらヘビー・ペッティングに励んでいるかもしれない。
そして彼らは時代を洞察する作家となり、あるいは幸せな夫婦となるかもしれない。
しかし、ピンボール・マシンはあなたを何処にも連れて行きはしない。リプレイのランプを灯すだけだ。リプレイ、リプレイ、リプレイ……、
まるでピンボール・ゲームそのもがある永劫性を目指しているようにさえ思えてくる。
永劫性については我々は多くを知らぬ。しかしその影を推し測ることはできる。
ピンボールの目的は自己表現にあるのではなく、自己変革にある。エゴの拡大にではなく、縮小にある。分析にではなく、包括にある。
もしあなたが自己表現やエゴの拡大や分析を目指せば、あなたは反則ランプによって容赦なき報復を受けるだろう。HAVE A NICE GAME !
(P.28より)
正直なところ、初期三部作の中では印象が薄い作品。そのため、僕はAmazonで予約しました。8年前程前に読んだ頃とどう感想が変わるのか、楽しみです。
羊をめぐる冒険 (1982年)
「その代わり君が羊を探し出すんだ。これが我々の最後の条件だ。今日から二ヵ月以内に君が羊を探し出せれば、我々は君が欲しいだけの報酬を出す。もし探し出せなければ、君の会社も君もおしまいだ。それでいいか?」 P.194-195
個人的に初期三部作で最も好きな作品。
村上ワールド具合も、以前の作品と比べグッと深まっています。
ミステリーの要素も含まれて、「脈絡がない」と言われる前二作よりもストーリーがしっかりしており、得意のメタファーも数多く含まれております。
【おわりに】
いかかだったでしょうか、初期三部作が好きな方には朗報かと思います。
初期三部作を皮切りに、他の長編作品も電子書籍化もされると良いですね。
『ねじまき鳥クロニクル』や『海辺のカフカ』がKindleで配信されるのはいつになるのでしょうか。
電子書籍はスマホ・タブレット,KindleやKobo等をお持ちの方なら通勤中でも手軽に読むことができるので、ぜひ予約してみてはいかかでしょうか。
村上春樹の処女作である『風の歌を聴け』は168ページとボリュームも少なく、夏にはぴったりの小説なので、食わず嫌いをしている方も、ぜひトライしてみてください。
ビールが飲みたくなることでしょう。