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<小林麻央さん>比較的まれ30代前半の乳がん 治療法は

毎日新聞 6月9日(木)18時15分配信

 歌舞伎俳優、市川海老蔵さん(38)の妻で、フリーアナウンサーの小林麻央さん(33)が進行性の乳がんを患っていることが9日、明らかになった。現在は抗がん剤による治療を続けているという。昨年はタレントの北斗晶さん(48)も乳がんであることを公表し、注目を集めた。乳がんは女性なら誰でもなる恐れがあり、実際に患者数は増加している。乳がんとはどんな病気で、なぜいま増えているのか。改めてまとめた。【医療プレミア編集部】

【会見で見せた海老蔵さんのさまざまな表情】

 乳がんは女性のがんの中で最も患者数の多い病気だ。日本人女性の12人に1人がかかり、国立がん研究センターの推計で2015年に乳がんと診断された人は約9万人にのぼる。05年には約4万8000人だったため、10年でほぼ倍にまで増えていることになる。年齢別に見ると、30代から増加し始め、40代後半から50代前半でピークを迎えて、その後減少する。30歳になってまもない時期に「なかなか大変」(海老蔵さん談)な状態でがんが見つかった小林さんのケースは、かなりレアな例と言ってもいいだろう。

 ◇女性ホルモンに長くさらされるとリスク上昇

 誰でもなる恐れがある病気だが、罹患(りかん)リスクが高くなる要因は分かっている。(1)初潮が早い=11歳以下(2)閉経が遅い=54歳以上(3)初産年齢が高い=30歳以上(4)妊娠・出産歴がない(5)授乳歴がない(6)祖母、親、子、姉妹に乳がんの人がいる(7)肥満度が高い(閉経後)(8)喫煙している(9)大量に飲酒する習慣がある(10)運動不足--の10項目のうち、当てはまる項目が多いほど高リスクだ。

 乳がんは女性ホルモンにさらされる期間が長いほど、罹患リスクが上がる。血管や骨を守り、肌の潤いを保って、心筋梗塞(こうそく)の予防効果もある女性ホルモンだが、乳がんに関してはメリットばかりではない。

 10項目のうち、初潮が早く、閉経が遅く、妊娠・出産経験がない人がリスク高となるのは、女性ホルモンにさらされる期間が長くなるためだ。2、3人子供を産むと、授乳中を含め5年ほど月経がなく、女性ホルモンの分泌が減る期間ができ、相対的に罹患リスクは下がる。逆に、経口避妊薬(ピル)の使用や、閉経後のホルモン補充療法など、体外から女性ホルモンを追加する措置を取っていると、リスク上昇の可能性がある。近年の患者数増加は、少子化で妊娠期間が短くなったことも要因として考えられる。

 成人、特に閉経後の場合、肥満も要注意だ。閉経後、女性ホルモンは脂肪組織で作られ、肥満の人ほど分泌量が増える。また他の多くのがんと同様、喫煙や多量飲酒も大きなリスクとなる。逆に定期的な運動をする人は、ほとんど運動をしない人に比べ、罹患率は3分の2ほど低い。

 とはいえ、小林さんのように若く、出産を経験していて肥満でもない人でも、乳がんになることは普通にある。上記の10項目が一つも当てはまらなくても、リスクはゼロではない。

 ◇手術の前に抗がん剤を使うことも

 治療は、手術、放射線治療、薬物療法があり、病状に応じて組み合わせて行われる。さらに薬物療法は、内分泌(ホルモン)療法▽化学療法(抗がん剤治療)▽分子標的治療に大別できる。乳がんではがんの種類(サブタイプ)によって、選択される薬物療法も異なってくるのが大きな特徴だ。

 また薬物療法は、がんの病期(進行度、ステージ)によって目的も異なってくる。「手術や放射線治療の後にその効果を補う」「手術の前にがんを小さくする」などのほか、手術が困難な進行がんや再発がんのケースで「延命や生活の質の向上」を目的に行う場合もある。

 総じて、乳がんはがんの中でも比較的治りやすく、1センチ以下で見つかれば9割以上の人は治る。また進行した段階でも治癒率は比較的高く、治療を続けつつ仕事や育児を続けている人も多い。小林さんの詳細な病状は明らかではなく、海老蔵さんの「比較的深刻」との説明が不安を呼ぶが、治療が奏功することを期待したい。

最終更新:6月9日(木)20時16分

毎日新聞