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魔拳のデイドリーマー 作者:和尚

第9章 絶海の火山島

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第139話 The Amazing

長かったのでいつもより遅くなりました。
 

 異変はまず、僕の足元に起こった。

 僕の足元から、僕の後ろの方に向けて……まるで夕日に照らされた時のように、長い影が伸びる。……なぜだかその輪郭に、紫色の燐光をまとって。

 しかもその影は次は、僕の形……普通の人の形から、異形のそれへと変わっていく。
 頭から角が、肩甲骨のあたりから羽が生え、手の指からは鋭く長い爪が伸びる。腰のあたりからは先端のとがった細長い尻尾が伸び、悪魔のようなシルエットに。

 そしてしまいにはなんと、べりべりべりっ……と地面からはがされるように起き上がり、後ろから僕の体を覆うようにかぶさり、そのまま闇の繭のようになって包み込んだ。

 その闇は一瞬で晴れ……しかし、その一瞬で僕の姿は、また大きく変わっていた。
 手甲や脚甲、胸のプロテクターはそのまんまだけど、その他の部分がいくつか。

 まず、服装。上着のすそがまるでロングコートみたいに、膝あたりまで伸びている。その形状はまるで外套か何かのようで、動けばバサッとかっこよくはためきそうだ。ただし、胸部分のプロテクターはきちんと外にあり、コートを羽織ったわけではないとわかる。

 次に耳。両方の耳に、いわゆる『ロボ耳』ってやつがついている。色は黒と金。
 耳当てみたいに耳を覆う形で取り付けられつつ、なんか上のほうに向かって角みたいなアンテナみたいのが伸びてるアレ。もっと簡単に言えば、美少女ゲームでロボ娘ヒロインの耳によくついてるアレ。何、かえってわかりにくい? ごめん。

 そして最後、背中に悪魔的な形の羽が生えている。『ダークジョーカー』の時みたいに。
 ただし、その以前までの羽がボロボロの悪魔羽だったのに対して……今僕の背中の羽は、明らかに違う。紫色の光沢を持つ、メタリックカラーの羽だ。

 デザインはそのまま悪魔とかコウモリ的なやつだけど。

 というか、ホントに金属……実体なのだ。プロテクターの背中部分に格納されてた、特殊合金製の羽だから。変身と同時に背中から取り出した装備だから。
 ついでに言えば、耳当てもそんな感じ。プロテクターに格納されてました。

 そんな感じのいでたちになった僕の姿は、何というか……『ダークジョーカー』よりも一層、特撮ヒーロー的な見た目になっている…気がする。両手足&胸の金属装備プロテクターと、メタルな羽、ロボ耳によって。

 それも、番組中盤~後半で獲得するパワーアップ形態的な奴に。

 機械類の存在しないこの世界では、さぞ僕のいでたちは異様なものに見えることだろう……あ、でも、甲冑みたいにも見えなくもないから、そうでもないかな。

 
 ま、何はともあれ……これで完成だ。僕の新しい切り札『アメイジングジョーカー』が。

 
「……経験上、見掛け倒しでは無いと考えるのが賢いのでしょうね……あなたの技は」

「いやいや、遠慮しないで。じゃんじゃん油断してくれていいんだ……よっ!!」

 瞬間、
 地面を蹴って一気に接敵し、挨拶代わりのストレートパンチを放つ。

 さっきまでとはまた残違いのスピードが出たはずだけど、さすがというか驚きつつもきっちり反応したウェスカーは、その一瞬……というか僕が足に力をこめたあたりですでに、魔力の障壁を目の前に展開していた……が、

 ぱりん、と、
 ガラスが割れたような澄んだ、しかし不吉な音と共に至極当然のようにぶち破る僕。

「!?」

 これにはも1つ予想外だったらしいウェスカーは、大したものでとっさに体をひねり、ギリギリでそれを避ける。しかも避けながら、僕の腕を切り落とすコースで剣を振るう。
 きっちり、装備に覆われていない……生身の部分を狙って。

 が……残念。もうそれは効かない。

 キィン、と、こちらはこちらで澄んだ音を響かせ……僕の体の表面に薄く張られている魔力の防御膜が、剣をはじいた。

「っ…………がはっ!?」

 攻撃に続いて、防御でも驚かされたウェスカーの顔がちょっと面白い。
 なので、拍手の代わりに……肘を一発。

 みぞおちにキレイに入った一撃で吹き飛ぶウェスカーだが、少しよろけつつも、倒れることなく体勢を立て直してこちらに向き直る。

 むう、ジョーブだな。気絶確実、下手したら死んでるくらいの威力あったと思うんだけど……ほっそりした見た目の割に頑丈らしい。

 なんてことを思ってたら、一秒と間をおかずにウェスカーの周囲に無数の光球が浮かび上がり、次の瞬間には僕に向かってきた。

 しかもよく見ると、光球だけじゃなくカマイタチ(不可視)も一緒に飛ばしてるっぽい。光球を避けようとすると高確率でカマイタチにあたっちゃうような、周到な配置だ。

 その、総数3桁目前かっていう怒涛の攻撃を前に、僕はその場から一切動かない。腕をクロスしたりして、防御するそぶりすらなし。

 そしてその次の瞬間、さっきと同じキィン、という澄んだ音と共に、全ての攻撃が僕を傷つけることなく、防御膜によって完封された。

 ガードもしてないのに、それにいくつかは顔とかにも当たるコースで飛んでいたはずなのに、全くのノーダメージという理不尽な現状。
 そのせいかどうかわからないけど、ウェスカーは逆に?笑っていた。

「どんな防御力ですか……? 体表面に魔力の鎧か膜のようなものを纏っているのはわかりますが、鉄板を貫通する威力の攻撃をよろけもせずに……」

「お、気付いてたんだ? さっすがー」

 ただの膜じゃないけどね、もちろん。

 魔力による障壁は、使い手の力量次第で、質量や厚みを伴わなくても強固な防御力を誇るのはよくある話だが……それにしたって限度はある。

 ましてや、見えないほど薄く体表面に、しかも体の動きに合わせて形を変える=形を固定しないで張ってるような魔力膜に、そこまでの強度は通常付随しない。

 しかし僕が今展開してるのはただの膜じゃない。
 僕が自前で作った……魔粒子を使うことで強度を増している半実体の魔力膜に、5つの『デモンズパール』によって共振作用を起こさせて強化したリフレクターだ。

 攻撃しても表面の魔力共振ではじかれてしまうため、生半可な攻撃力じゃあダメージにもならない。それどころか、攻撃の種類によっては反射されたりもする。

 もしもウェスカーの剣が普通の鉄製だったら、剣の方が折れてただろう。最初の一撃で。

 動きを阻害することなく、防御力は鉄壁。しかも特定条件下ながら反撃機能つき……『アメイジングジョーカー』発動時限定とはいえ、つくづく規格外。
 ほんと、いいものが出来た……ねっ!!

「――らぁっ!!」

 再び地面を蹴って、今度は打ち下ろしの鉄拳をウェスカーに叩き込む。

 ウェスカーはまた魔法障壁を、今度は数枚重ねて配置しつつ……回避行動も取った。
 その判断は正しい。今回も、障壁は僕の拳でキレイにぶち抜かれて崩壊。

 その先にウェスカーがいなかったため空振りに終わったものの、地面に直径数mのクレータを作った。

 同時に……横からウェスカーが放ってきた『エル・スラスト』を左手で受け止め、握りつぶす。同時にこっちは『ジャイアントインパクト』で攻撃。

 するとウェスカー、空中に逃げ……代わりにその向こう側にあった瓦礫が吹き飛んだ。

(おー、浮遊術も使えるのか、さすがというか何というか……けど……)

「僕は飛べない、とでも思った?」

 にぃっ、と、
 自分で言うのもなんだけど、お気に入りのオモチャで遊ぶ時の子供のような笑みを浮かべ、僕は……背中の羽と、その付け根部分のプロテクターに内蔵された兵装を動かす。

「ネクロミウムイオンエンジン点火……ならびに重力制御装置作動……GO!!」

 瞬間、背中の羽が紫色に輝き、肩甲骨の辺りからは紫色の炎(っぽい魔力)が噴射され……僕の体は勢いよく空へと飛び上がる。

 残念でした! この羽、『ダークジョーカー』の時のとは違って、飛べるんだよ!

 しかも、動力はミシェル兄さんとの共同研究で作り出した新物質『ネクロミウム』を魔力と反応させてイオン化させて推進力に変えたイオンエンジン! 曲芸飛行だって簡単に出来るし、起動後すぐに急加速可能で、最高速度は音速以上!
 おまけに重力制御による補助つきだ、今更浮遊術なんぞ怖くない!

 一瞬で空中に舞い上がり、ウェスカーに追いついた僕は、空中で水平蹴りを放つも……向こうも空中浮遊にはかなり慣れているようで、さっと動いてそれをかわし、お得意の光の剣で切りつけてくる。

 手甲で受け止め、そのまま押し返しつつ肘。
 ギリギリでそれをかわしたところに……そのまま横に一回転して蹴り。

 するとウェスカー、即座に反応して……剣での防御は間に合わないと判断し、フリーだったもう1本の手で、腰にあった鞘をつかんで蹴りを受け止めた。

 が、やはりというか防ぎきれず、押し切られて吹き飛ぶ。浮遊術を使ってるからか、水平に飛んでいった。

 そこに追撃をかけようとした次の瞬間、目の前でウェスカーが消えた。

 直後、背後に気配を感じると共に……耳についているロボ耳もとい、センサーが、そこに奴がいることを告げてくる。
 高速で動いたわけじゃない、いきなり消えていきなり現れた……転移テレポートか。

 このロボ耳は、『ダークジョーカー』の時の角と同じ……策敵・魔力感知用のセンサーだ。ゆえに、見失っても遠くに行かない限り死角は無い。

 振り向かずに放った蹴りが何かに当たる感触。
 人の肉体……じゃない、剣だ。いなされた。

 けど、一瞬の間が稼げれば十分……振り向いたそこには、構えなおした剣を横凪ぎに振りぬこうとしているウェスカーが。

 さっきまでよりもさらに強力な魔力がこめられ、まばゆいばかりに光る刀身。
 大した攻撃力だ、さすがに『リフレクター』でも防ぎきれなそうだけど……無問題!

 こっちの拳も相応の量の闇魔力がこめられて、ブラックホールを握りこんでるみたいな見た目になってるから。

 直後、光の剣と闇の拳がぶつかり合い……そこにこめられた膨大な魔力の衝突で、凄まじい爆風やら衝撃波やらが当たりに広がる。

 するとその更に一瞬後、急に拳の先の剣の感触がなくなった。また転移したらしい。
 センサーで感知……真下!

 肉眼で直接見ると、若干肩で息をしているウェスカーの周囲に……いくつもの魔法陣が。
 大小さまざまなそれが輝き、そこから様々な魔物が現れる。

 牛頭人身の悪魔『ミノタウロス』に、鋭いカギヅメと嘴をもつ巨鳥『プレデターコンドル』、『黄泉の柱』にもいた『ラージスケルトン』や『サイコゴースト』等々、挙句の果てに……おいおい、『ソレイユタイガー』や『ドラゴン』まで出てきたよ。

 あれ全部ウェスカーの召喚獣か……AAかAAAばっかり10匹以上。正規軍の一個連隊(2000人だったかな)でも滅ぼせるレベルの戦力だ。あらためてとんでもない。

 ウェスカーの『行け』という一声と共に僕に殺到してくるそいつらを、攻撃をかわしつつ拳や蹴りを叩き込んで蹴散らしていく。

 しかし、ウェスカーの魔力で強化されてるらしく頑丈で、なかなか倒せない。

 おまけに、術者であるウェスカーも隙を見計らってきっちり攻撃してくるから厄介だ。

 って言ってるそばから、後ろから『プレデターコンドル』が突っ込んできたので、ぎゅるっと宙返りの要領で回避しつつ、突っ込んで背中の羽で切り裂く。
 飛べるだけじゃなく斬れるんだよね、この羽。魔力流せば立派に凶器。

 片方の翼を切り落とされて落下していくところに、一応トドメの蹴りを入れて頭をパーンさせておく。

 ……っと今度はドラゴンが来なすった。しかも上にミノタウロスが乗ってる。地上でしか戦えない欠点を上手くカバー……ってか何か龍騎士っぽくてかっこいいなおい。

 今度何らかの形でマネしようと心の中で決めつつ、眼前で棍棒を振りかぶって飛び掛ってくるミノタウロスに踵落としを決めて地上にお帰り願うと同時に、横からブレスを噴き付けんと口を開けたドラゴンに向けて腕を突き出す。

 同時に、手甲に仕込んであるもう1つのギミックを作動……僕の魔力で作った半実体のミサイルがそこから射出され、ドラゴンの口の中に吸い込まれていく。

 必然、ドカンと体内で爆発が起こってドラゴンはよろけ――それでも墜落しないあたり生命力のデタラメさがわかる――その隙に後ろに回りこんで尻尾をがしっとつかむ。

 そのままその巨体を振り回して武器代わりに。後ろから飛び掛ってきていた『ソレイユタイガー』をふっとばし、巨体を生かして攻撃してくる『ラージスケルトン』を粉々にし、さっき地上に叩き落した『ミノタウロス』に投げつけて押しつぶす。

 ――と、その投げた瞬間を狙って最高速度で僕の心臓めがけて突っ込んできたウェスカーの突きを、羽を動かして盾代わりにしていなし、そのまま羽で真っ二つに……する前にまたウェスカーが転移して消え、直後にセンサーが真上を指し示す。

 すると今度は上空から、レーザーやら雷やらが雨あられと降り注いできた。

 直撃しても問題ないであろう威力だったけど、視界が防がれるのはちょっといただけないので、『ジャイアントインパクト』で迎撃して全部吹き飛ばした。

 この技、有効射程そこまで長くはないなんだけど、威力あるしサッと出せるから便利だ。

 そんでもって、下にぶん投げた『ドラゴン』が早くも復活しようとしてるので……落下しつつ『ダークネスキック』を両足で叩き込んできっちりトドメを刺し、さらに中途半端に砕けてピクピク震えてた『ラージスケルトン』を踏み砕いてから、再び空に戻った。

 
 ☆☆☆

 
「な、何だよ、あれ……!?」

「あれが、Sランク冒険者の戦い……!」

「つか、相手の白コートも滅茶苦茶じゃねえか……」

「冗談じゃねえぞ……あんなのに巻き込まれたら、一瞬で殺されちまう!」

 ネスティアの調査団と共に来た冒険者達やネスティアの兵士達、そしてチラノースの兵士達の口からこぼれるのは……おおむね、そのような感じの言葉だった。

 彼らは最初、片や軍人として仕事のために祖国の障害となる者の排除を、片やそれに抵抗して反撃を、という形で戦っていたが……程なくして始まった『あの2人』の戦闘を前に、今や戦いも忘れて唖然としていた。

 およそ人対人とは思えないレベルの戦闘。
 乱れ飛ぶ大威力の一撃は地形を変え、呼び寄せられる魔物は自分達を容易く屠るランク。
 そしてそれを拳で蹴散らし、空を舞う黒装束の男と、同じく空を舞い光の剣を振るい、雷を操る白装束の男……

 いっそ現実でなく夢であってほしいと思えるような光景が、自分達のすぐ知覚にあると正しく頭で理解できた彼らは……誰からともなく、『いつここも巻き込まれるか』という恐怖に支配され、その場から散り散りになって逃げていった。

 そんな中、動揺していないわけではないものの、『慣れ』を理由に幾分冷静で要られている者たちもいた。

 言わずもがな、『邪香猫』である。

(なんちゅう戦いよ……軍隊なんてアレの余波で壊滅するようなレベルじゃない)

 クローナ邸での修業の中で、一部とはいえミナトの本気……『アメイジングジョーカー』を含めたそれを垣間見ていたエルクですら、今目の前で繰り広げられている戦いには驚かされる。

 虫でもはらうかのようにAA以上の魔物を蹴散らし、時折飛んでくるウェスカーの一撃を裁きつつ反撃する。魔物とウェスカー、どちらの攻撃も……普通の冒険者ではかすっただけで致命傷間違い無しの凶悪なそれを、ミナトは容易くいなして戦っている。

 しかしウェスカーはそのミナトと、自身の驚異的な戦闘能力に加え、その冷静な判断力と思考の早さ、そして攻撃手段の引き出しの多さで互角に戦っている。
 『剣術』『攻撃魔法』『幻術』『金縛り』『召喚獣』……全て把握するのが難しいほどの多さ。それに加えて、それらを組み合わせた連携や応用による戦闘術も使ってくるのだ。

 ミナトも使える技は多彩であるが、装備のギミックを除けば彼のそれはあくまでも『体術』に絞ったものである。拳や蹴りが主体になっていることに変わりは無く、時折混ざってくるトリッキーなギミック攻撃に注意すれば、ウェスカーに比べ対応は難しくない。

 ……もっとも、そのレベルの戦いについてこれる戦闘力がある前提の話だが。

「……いつもと同じ感じではあるけど、あっちはミナトに任せましょ」

「それがいいでしょう。……っていうか、手、出せませんしね……」

「ええ……私達じゃ、加勢しようにも近づいただけで消し飛ばされます」

 順に、エルク、ナナ、ミュウである。

 百m以上遠くで繰り広げられている死闘を見ながら、修業して強くなることが出来たとはいえ、結局肝心な所はミナトに任せるしかない……まだ、自分達では彼の隣に立つことは出来ないという現実を目にして、各々少々悔しそうに言う。

 そんな3人からは少し離れた所で、周囲を警戒しつつ腰の剣に手をかけている、残る1人の『邪香猫』女性メンバーがいた。

「しっかし……こうなると私達、他んとこを手助けしに行った方がいいんじゃないかしら? チラノースの軍とダモクレス財団、両方が敵の三つ巴なんでしょ? この戦い」

 頭の中に浮かんでいる『サテライト』の地図を確認しつつ、そう提案するシェリー。

 先ほどからエルクが発動させている魔法により、戦闘が起こっている範囲全体の様子は、逐一『邪香猫』メンバー他数名の脳内に流れ込み、把握されている。

 今現在、この付近で戦闘が行われているのは3箇所。だが内1箇所は、戦闘行為が意図せずして止まった状態にある。
 他でもない……エルクたちが今いる、ここである。

 2箇所目……ミナトとウェスカー(と、召喚獣多数)が戦っている様子にあっけに取られると同時に及び腰になり、どちらからともなく戦いがやんだのである。
 もっとも、いつまでもこのままとは限らないが。

 そして残る1箇所は、バスク達とセレナとシェーンが戦っている場所だった……が、

「「「――ん!?」」」

 『邪香猫』の4人が一斉に同じ方向を向いた次の瞬間……その視線の先にあった瓦礫の山が勢いよく吹き飛んだ。

 そして、その向こうから……

「あだだだっ……きっついなーあのおねーさん。てか、なんつーバカ力だよ」

「くぉらっ! 乙女に向かって何てこというのかしらこんガキャ! かっちーんと来たわよ今のは……腕の1本や2本や3本や4本くらいは覚悟してもらおうかしら!?」

「いや、俺腕2本しかないから」

 そんな軽口を叩きながら、サーベルを構えるバスクがまず、土煙の向こうから転がるように出てきた。

 直後、それを追ってセレナも飛び出す。
 その両手には、収納型マジックアイテムの腕輪から取り出した自分の武器を持っている。

 右手には、クレイモアと呼ばれる種類の、刀身の長さが身の丈ほどもあろう大剣。
 左手には、中心部に握り拳大の宝玉のついた、こちらも身の丈ほどもある長方形の大盾。

 どう見ても重歩兵あたりが使いそうな装備。それを……長身とはいえスリムな体型のセレナが、しかも見る限り軽々と扱っている光景は、アンバランスと言う他ない。

 その彼らの目の前で、セレナが地面から少し浮かせて持っていた大盾の下辺部を地面につけると、ズゥン、と大きな音がして土埃が舞う。見た目どおり……どころか、見た目以上の重量を持っているらしいことは明らかだ。

 皆、意外すぎるその光景にきょとんとしていた……ただ1人、ナナをのぞいて。

「あー……相変わらず、豪快な武器ですね、セレナ隊長」

「だーから隊長じゃないっちゅーに。『元』『元』」

 言いながら大剣を肩に担ぐセレナ。両刃のそれで自分の体が斬れないよう、きちんと肩当ての上に乗せて、重量級であろうその武器の支えを任せる。

「さて、と。向こうの連中はあらかた片付いたんだけど……やっぱりっていうか何ていうか、あのサーベルのぼうやだけは結構な使い手ね。お姉さん、久しぶりにてこずってる」

 そう言うセレナの視線の先には、転がった拍子にずれてしまったテンガロンハットをかぶりなおしているバスクの姿があった。

 そして、2人が戦いながらここまで来る前に……すでにセレナによって、バスクがつれてきた殲滅用の『ダモクレス』の部隊は……全滅している。加えてそのことは、『サテライト』によりエルクたちも把握済みである。

 『サテライト』では、脳内地図に浮かび上がる人間の反応から個人まで詳しく判別することは不可能だが、事前にエルクが個人の魔力パターンを認識している場合は可能。
 今現在、『邪香猫』6人とギーナ、スウラ、シェーン、そしてセレナのを記憶している。

 ゆえに、シェーンとその護衛についていったセレナのいる戦場で、瞬く間に生体反応が消えていったのを脳内で認識した際……エルクたちが、それがセレナによる敵兵の蹂躙だと気付くまでにさほど時間は要らなかったのである。

 そのセレナの視線を受けているバスクは、帽子の下で、セレナの剣撃から逃れた先でもっと厄介な場所に迷い込んでしまったことに気付き、『うわちゃー』などと呟いている。

 素早く周囲を見回し、敵の数とその面子を把握し……しかし、その顔から乾いた笑いが消えてくれるようなことにはならなかった。

(あー……こーれはちょっとまずいというか、自分から袋小路に飛び込んじゃったかな? いくらなんでもこの面子を相手に1人ってのは……)

 AAAランクのシェリーに、それに相当する実力者であるナナ。先ほどから戦っているセレナもまたそのレベルか、それ以上の実力者。時点で注意すべきなのは、エルクとミュウだが、この3人は自分よりも格下。そしてその他の雑兵は数の内ではない。

(で、あっちですごいことになってるのが、ウェスカーか……相手はSランクの彼だな。こっちへの加勢は期待できなさそうだし、さて…………ん?)

 この場をどう切り抜けるか割と本気で必死になって考えていたバスクは、ふと違和感に気付く。
 エルクらと行動を共にしていると思っていた何人かの人物が、ここにいないことに。

 そしてその疑問は、偶然にも全く同じことを同じタイミングで疑問に思ったセレナによって直接口に出して問いかけられた。

「あれ? お仲間のオレンジ色の彼や……水色と灰色の軍人の彼女たちは?」

「ザリーとスウラとギーナですか? ちょっとお仕事(・・・)に行ってます」

 さらりとエルクはそう答え、それに『ふーん』と返すセレナ。

「無事ならいいわ、別に。あ、シェーンちゃんは一応、引き続き避難する人達の護衛やってるから。ネスティアの部隊と一緒に」

「それは私たちの方でも『サテライト』で見てます。ってことは……私達はアレを相手すればいいわけですね?」

 言いながらエルクは、バスクの方に視線をやる。

 するとセレナは、

「そうなるわね……けど、その前にちょっといいかしら、そこのあんた」

「うん? 何か用、おねーさん?」

 と、特に何の前触れもなく話しかけられたバスクが、演技か素かはわからないが、きょとんとした様子で首をかしげた。

「あんたさっき、シェーンちゃんに『バスク』って呼ばれてたわよね? んで、さっき念話でこの娘らに聞いたんだけど、フルネームが『バスク・ジョローア』……あってる?」

「ああ、そうだけど……それが?」

「その家名、聞き覚えがあるわ。もう20年くらい前に、どこかの港町の名士だった『ジョローア家』の当主が、堅苦しい暮らしに嫌気がさして出奔した……そんな事件があったはずね。あなたもしかして、その家の人間?」

「あら? 何だ、おねーさん物知りだねえ? そんな昔の片田舎で起こった事件知ってるなんて……ご明察、その通りだよ。俺はその時出奔した、『リグ・ジョローア』のせがれさ」

 『リグ・ジョローア』

 セレナおよびナナの脳内には、ファミリーネームはともかく、『リグ』という名の方は記憶に残っていた……『カーンネール海賊団』の参謀の名として。

 そして、その息子として船に乗っていたのがバスク。以前シェーンたちが『オルトヘイム号』の中で読んだの日記で、ゼペッドがバスクのことを『ジョローアのせがれ』と読んでいたのはこのためである。

 リグとバスクは、今セレナが言ったとおり、とある港町の名家に生まれ、貴族とは言わないまでもそれなりに高級な身分にあった。しかし、仕事やら何やらで窮屈な暮らしに嫌気がさし、ある時町を訪れたゼペッドの船に乗り、2人そろって海賊になったという。

 しかし、それを簡単にバスクの口から聞いたセレナは……なぜか目を細め、眉間に庭を寄せた。何かを勘ぐるように。

「どうかした、物知りなおねーさん?」

「……いや、おかしいなー、と思ってね。あんたの話が」

「? どこが?」

「だって、私の記憶が正しければ……」

 一拍、

 
「『ジョローア家』の跡取りって……『息子』じゃなく『娘』だったはずだもん」

 
「「「!?」」」

 

 『ジョローア家』……その家名を、セレナは知っていた。

 セレナがその家についてを耳にしたのは、20年と少し前、ドレークの依頼で軍を手伝っていた時のこと。

 地方のある港町に代々居を構える、そこそこの名家であり……家名は知られているがその内訳までは知られていない、といった程度の家。系譜の名前までは、せいぜい地元の者くらいしか知らないであろう程度の知名度だ。

 が、たまたまその領地に絡んだ案件をその時に担当・処理していたため、セレナはその家についてそれなりに知っていた。

 加えて、その記憶にある当主の名が『ラグ・ジョローア』である、ということもある。ゆえに、たまたま同じ苗字の別の家である、というのはまずありえない。

 しかし、その家の中に……息子はいない。
 当主ラグは晩年まで子宝に恵まれず、授かった子は娘が1人だけ……それも、妻に先立たれ、再婚した後妻との間の子で、祖父と孫娘ほどにも年齢が開いてしまっていた。

 結局その後、老いを理由に引退したラグは、そのさらに数年後、突如として姿を消す。

 同時期、当事海で最大の知名度を誇っていた『カーンネール海賊団』の船に、『ラグ』という名の壮年の参謀役が加わったという噂が流れたが……多くは『ただの偶然だろう』と気にも留めなかった。

「……当事は私も、ただ名前が同じだけだと思ってたんだけど、もしかしたら本人だったのかもね。どういう心境があって海賊なんかになったかは知らないけどさ。けど、1つだけ間違いないのは……その息子を名乗って海賊になったあんたは『偽者』だってこと」

 クレイモアを持ったままの右手の人差し指をバスクに向け、トリックを見破った名探偵のごとくそう指摘するセレナ。心なしか楽しそうにも見える。

 その説明を聞いて、皆驚いたり感心したりしていたが、ほとんどはバスクのことをそもそも知らない者たちだったため、リアクションに困ったりしていた。

 しかし中でも、それなりにではあるが驚いた表情をしているのは、やはりというか……昔からバスクのことを知っているミュウだった。
 もっとも、偽名だったからどうというわけではないので、あくまで『それなりに』だが。

「その後しばらくして『ジョローア家』は、他の名家に吸収される形で家名を絶やし、今はもうない。加えて、他方面に影響力を持っていたわけでもないから、わざわざその名を偽名で名乗るメリットに心当たりは無いけど……ま、いいわ。あんたの思惑は知らないけど、ここでやることに変わりは無いし。身元なんてとっ捕まえた後で調べれば十分」

 そう言って、手に持ったクレイモアの切っ先をバスクに向けるセレナ。
 同時に……臨戦態勢に入ったのか、凄まじい魔力がその体からあふれ出し、周囲にいる者たちを驚かせた。

 しかし、剣だけでなくその威圧をモロに受けているはずのバスクは……驚いている表情はしているものの、焦っている様子は微塵もない。
 むしろ、感心しつつ笑っているように見えた。

「ホント、物知りなおねーさんだ。しかもそんな、当人の俺すら忘れそうになってるほど昔のことをよくもまあ適確に……見た目どおりの年齢じゃないのかな?」

「くぉら、女に年齢の話題はタブーよガキンチョ」

「こりゃ失礼。ま、偽名ってのはその通りだけど……特に思惑は無いよ、最初にゼペッドのおっさんの船に乗った時に名乗った名前で、変えるのが面倒だから今も使ってるだけ。あ、でも『バスク』の部分は一応本名だから、もし気に入らなけりゃこっちで呼んで」

 と、バスクが言った直後、

「ええいお前達、何をしておるっ!!」

 そんな大声が、チラノースの兵隊達の背後から響き渡った。

 思わずそこにいた全員が視線を向けたその先には……後詰め兼司令塔として後方待機していた、チラノースの最後の大物……中将ゼストール・ゴールマンだった。

 威力外交とはいえ、半ば儀仗兵としての邂逅だったあの日とは違い、今は軍服に加え、マントつきの甲冑を身にまとって完全武装し、手にはすでに抜き身の剣を持っている。

「誇り高きチラノースの兵が、敵を前にして何もせんとは一体どういうことだ! 同じ命令を二度も言わせるな、我らの祖国に仇なす者の首を直ちに取らぬかっ! 所詮は雇われの使えん冒険者風情とは違うのだという所を見せてみろ!!」

「……聞き捨てならねーなあ、おっさん……」

 と、今度はそんな声と共に、瓦礫の山の一角が崩れ、ダモス・ジャロニコフが姿を見せた。瓦礫にやられたのか、頭と肩口から血を流している。
 が、負傷による影響は軽微なようで、しっかりと2本の足で歩き、ずんずんとゼストールに近づいていく。

「ふん、生きておったか役立たずめ……今まで何をしていた、寝ていたのか?」

「うるせえな、黙ってろよ老いぼれ、今俺は機嫌が悪ィんだよ、殺すぞ? それと、これから暴れるとこなんだから邪魔すんじゃねえ……!」

 ぎろりと睨みながら言うダモスだが、ゼストールは全くひるんだりする様子を見せずに、ふん、と鼻で笑っていた。

 直後、同じ視線が反対側……ネスティアの兵や冒険者達に向けられると、こちらはうってかわって、恐怖を隠しきれない様子である。

 無理もないと言える。ダモスは正真正銘、AAAランクの達人級の冒険者なのだ……放つその殺気は、常人が真正面から受けて耐えられるようなものではない。

「カッ……あームカつくぜ、あのガキ、不意打ちでしかも天井なんか崩しやがって……痛くて痛くてたまんねーじゃねーかよ畜生ォ!!」

 ガゴォン、と手に持った大槌を地面に叩きつけるや……地面が大きくゆれ、近くにあった瓦礫の山が音を立てて崩れ落ちる。巨大な魔物をも屠るその大槌が、見掛け倒しの武器でないことは一目瞭然だった。

「舐めたマネしやがって、あのガキもお前らも殺してやるぜ、この俺がよ!」

「あっそ、血の気が多いわねー最近の若造は。見たとこ単純なパワーファイターって感じだけど、動きも何もまだ乱雑ね……ホントにAAA?」

 と、こちらは兵たちとは違い、微塵も気圧された様子のないセレナ。

 何げに敵味方の多くが、セレナの実年齢を知らないために『若造』という言葉に違和感を感じていたようだが、興奮しているダモスにはただの挑発に聞こえたらしい。

「けっ、何言ってんのかわかんねーが、随分と舐めた口聞きやがるじゃねーかよ女ァ!! いつもならテメーらみたいなのは、動けなくなるまで痛めつけてから裸に剥いてなぶってやるのが俺のやり方なんだがな……今回はむしゃくしゃしてダメだ! ここで全員殺してやる! ありがたく思えよ……長いこと苦しまずに楽になれるんだからな!!」

「よくしゃべるわね…………どーでもいいけど、そこ、危ないわよ?」

「あぁ!?」

 と、意味を図りかねる上に苛立ちが増すばかりのダモスが荒々しく聞き返した……その時、

 
「何言って『ドゴォォォオオン!!!』っがぁあっ!?」

 
 斜め横から、反応するのも難しい速さで『何か』が飛来し、ダモスの眼前数mの所に着弾した。その爆風で、ダモスとゼストールは耐えられたものの……チラノースの兵が何人か吹き飛んでいく。

 そして、その飛来物の正体というのが……

 
「あたたた……あんにゃろ、あんな隠し玉まで持ってたのか……ってあれ、義姉さん」

「くぉらミナト、危ないでしょうが! もうちょっとずれてたらこっちに突っ込んでくるところよバカ!」

 
 数十m向こうで戦闘を繰り広げていたはずが、唐突にここまで吹き飛んできたSランクの少年だった。

「ごめんごめん義姉さん……でもホラ、文句なら向こうに言ってよ」

 言いながら、今しがた自分が飛ばされてきた方角を指差すと、そこには……

 ずしん、ずしん……と足音を響かせながら歩いてくる、巨大な人型の『何か』がいた。

 否応無しに視界に飛び込んでくるその巨影を視界に捉え……多くの人間は驚き、恐怖する。その『何か』が、明らかにこちらに向かってあるいてきているものだから、余計に。

 姿かたちとしては、ミナトいわくところの『巨大ロボット』と言って差し支えない重厚な装甲を纏った人型。近くで見ると、その体は実は岩石で出来ているのがわかる。

 それを見て、セレナはうんざりしたような顔になり……

「……アレも召喚獣なわけ? ウェスカーとかいう奴の」

「うん、とっておきだって言ってた。えっと、名前は確か……」

「『コンチネンタルガーディアン』ね。ったく、そりゃ『とっておき』でしょうよ……Sランクの化け物だもの。なんつーもん召喚獣にして従えてんのよ……」

 全高50mはあろうかという岩石の巨兵を前にして、はあ、とため息をついた。

 
 ☆☆☆

 
 その頃、
 スウラとギーナは、戦いを『邪香猫』に任せて、施設にいた職員その他の避難誘導を行っていた。

 いくつかある非常口から、『チラノース』にも『ダモクレス』にも待ち伏せされていない出口を『サテライト』の画像から割り出し、念のためそれぞれ護衛をつけて避難させる。

 人数は少ないとはいえないが、その面子は冒険者や兵士、または軍および行政府の関係者である。まったくではないとはいえ、非常時でもパニックになるようなことはあまりなく、それゆえに避難はスムーズに進んでいた。

 必要な荷物をまとめ、採取サンプルなどは誰が何を持つかを手早く決めて運搬し、駆け足で危険と判断されたエリアから各自離れていく。

「この分なら割とすぐに終わりそうだな……ギーナ、そっちはどうだ?」

「はい、第5区画以降の非難が完了しました。物品も運び出しは完了しています」

「そうか、私のところも第3、第4区画は終わった。第1は……痛ましいが、敵の奇襲で最初にすでに全滅させられているから除外するとして、第2は?」

「戦闘が継続していますので、そこで戦っている者たち以外は全員。なお、ミナト殿たちもそこで戦っていますので、人的被害は大きくはありませんが……あの通りで……」

 ギーナが視線で示す先には……その戦闘の結果として、建物の一角が消し飛んで更地もしくは瓦礫の山になっている区画があった。
 言うまでもなく、ミナト達が戦っている第2区画である。

「……あれは仕方あるまい。ミナト殿の否常識を差し引いても、敵にもSランク相当の怪物がいるとなっては、むしろあの程度の損壊で済んでいれば御の字…………ん?」

 と、そこまで言ったスウラの視界の端に……慌てた様子でこちらに走ってくる、1人の兵士の姿が映った。
 一瞬置いてギーナもそれに気付き、2人そろって体後と向き直る。

 兵士……伝令兵と思しきその男は、2人の数m手前まで来ると、膝をついた。

「ほ、報告いたしますスウラ隊長! ギーナ副隊長! 先ほど、避難者の人数確認を行った班から報告が! 職員等の避難は問題なく終了したのですが、護送する捕虜の人数が1名足りないと……脱走したと思われます!」

「捕虜だと!? 一体誰だ!?」

 上がってきた報告に、スウラは一筋の汗を流す。

 この混乱に応じての捕虜の脱走……無論、予想しなかったわけではない。そうおうの人数を割いて、扱いも十分注意するよう厳命していた。
 なおかつ護送役に選んだ者たちは、その道のスペシャリストだ。何かしら初歩的なミスを犯すようなことは考えられない。

 ……と、そこまで思い至った所で、スウラの脳裏に浮かんだのは……ただ1人、他の捕虜達とは違う待遇で様子見のために『監禁』ではなく『軟禁』していた女の存在。

 彼女の所にも、同じく捕虜等護送のスキルのある者たちが向かったが……あの女ならば、実力的に彼らを振り切って脱走することも難しくない……はず。

 何よりこの兵士は、捕虜の失踪を『脱走』と明言した。
 途中で『はぐれた』可能性を無視して、だ。そう断ずるだけの痕跡があったということ。

(殊勝なまでに大人しい態度だった……こちらのいうことをよく聞いて、武装解除にも応じていた……ゆえに失念していたか!? まさか、脱走したのは……)

 そして……こういう時の嫌な予感は、当たる。

 

「行方不明なのは……貴賓用の収容室に監禁していたAAAランク冒険者、シン・セイランです! 保管庫の扉が破壊されており、武器を強奪して逃走したと思われます!」

 
 
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