トランプ現象の背後に白人の絶望──死亡率上昇の深い闇
(ニューズウィーク日本版 2016年6月 8日配信掲載) 2016年6月8日(水)配信
「絶望による死」で死亡率が上昇
2016年6月1日、米疾病予防管理センター(CDC)が、衝撃的な統計を発表した。米国の死亡率が、10年ぶりに上昇したというのだ(図1)。大きな理由は、白人による薬物・アルコール中毒や自殺の増加である。「絶望による死」の増加が、米国全体の死亡率を上昇させた。
「絶望による死」は、白人に集中している。CDCによれば、2000年〜2014年のあいだに、米国民の平均寿命は2.0歳上昇した。しかし、白人に限れば、平均寿命は1.4歳の上昇にとどまっており、黒人(3.6歳)、ヒスパニック(2.6歳)に後れをとっている。白人に関しては、心臓病や癌による病死の減少が平均寿命を上昇させた一方で、薬物・アルコール中毒や自殺、さらには、薬物・アルコール中毒との関係が深い慢性的な肝臓病などが増加。平均寿命を押し下げたという。
トランプを選ぶ絶望
死を招くような白人の絶望は、トランプ現象と重ねあわせて論じられている。
「トランプに投票するかどうかは、死が教えてくれる」
2016年3月に米ワシントン・ポスト紙は、こんなタイトルの記事を掲載している。