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山口組の「秘密部隊」その並外れた戦闘力と諜報能力~神戸山口組幹部射殺にも関与か

現代ビジネス 6月9日(木)11時1分配信

秘密組織「十仁会」

 「返し(報復)をしなければ、(山口組の)菱の代紋に傷がつく」

この言葉は、1969年5月、組員の移籍をめぐって対立組織に組員2人を殺された山口組系鈴木組内弘田組の若頭だった司6代目が、襲撃チームを編成して、メンバーに放った言葉である。

襲撃は成功、対立組織の組長を愛人宅で刺殺。名古屋という地元組織が群雄割拠する地で、港湾荷役のほかは目立ったシノギのなかった鈴木組は、戦闘力を認められ、基盤を築くきっかけとなった。だが、司6代目は殺人教唆で懲役13年の実刑判決を受けて服役。代償を支払った。

 鈴木光義組長の引退後、弘田組が地盤を継承、司6代目は出所後も若頭として弘田武志組長に仕えていたが、84年に勃発した山口組と一和会に分裂しての「山一抗争」の際、弘田組長が引退。組を引き継いだ司6代目は、「弘」の字を残して84年6月、弘道会を立ち上げて山口組の直参(直系組長)となった。

弘道会の戦闘性を表すのが、秘密組織の「十仁会」である。

 組織したのは高山若頭。「司組長を日本一の親分にするのが夢」と、語っていた高山若頭は、「情報の効用」を知り、「訓練された戦闘部隊」の必要性を感じていた人だった。そこで十仁会を組織したが、そのメンバーと役割はどのようなものだったのか。

 「系列組織から、知力と体力を兼ね備えている優秀な若い衆を選抜して組織しました。

 人選で重要なのは前科がなく、対立組織や警察にマークされていないこと。尾行や盗聴などの隠密活動が必要だからです。特殊な情報収集にあたるだけでなく、海外などで武器を扱う訓練を受け、抗争時には戦闘部隊にもなりました」(十仁会を知る弘道会元幹部)

火蓋は切られた

 抗争になった時、必要なのは、対立組織メンバーの住所氏名、愛人宅や立ち寄り先、行きつけの店、携帯番号と車のナンバー、そして行動パターンである。前述の元幹部は、データベース化された十仁会の資料の精密さに舌を巻いたという。

ただ、かつては初代十仁会会長、2代目十仁会会長と、組織図にその名を記していたが、「秘密組織」が表に出ていてはマズイということで、高山組行動隊長がその役割を担うようになった。

 今は、存在を含めてベールに包まれているが、情報を収集し戦闘に備える秘密部隊は、今も存在するという。

高山組直系の山本容疑者は、おそらくその役割を担ったのだ。ヤクザであれば「宿命」であり、47年前には27歳の司6代目が、その役割を引き受けて服役した。

 しかし、いまは実行犯はもちろん、組織のトップにまで駆け上がって無期刑が下される時代である。

 「懲役」が勲章にはならないし、たとえ長期服役で済んでも、出所してきた時、所属する組はもちろん、暴力団という組織自体が存在している保証はない。

 先週(6月2日)配信した記事で書いたように、だから神戸山口組、6代目山口組の両執行部は、「共存」を模索、統一に向けた話し合いに入っていた(「山口組幹部射殺事件、抗争はどこへ向かうのか?」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48805)。

 だが、それはシノギをめぐってバッティングする現場の若手幹部らにとっては預かり知らないこと。

 高山組を中心に弘道会のイケイケ派が襲撃班を編成、サミット休戦明けを待って、岡山県で6代目山口組の組員切り崩しの先頭に立ち、ボディガードをつけて歩かないなど警護の甘い池田組の高木忠若頭を狙ったのだろう。

 火蓋は切られた。

 「返しをしなければヤクザじゃない」という伝統は、今に生き、襲撃された池田組はもちろん中核の山健組のなかに、連絡が取れない組員がいて、「襲撃部隊が編成されたんじゃないか」という情報もある。

抗争を避けたい双方の執行部が、現場の暴走を抑えつつ、どう治めるのか。予断を許さない。

伊藤 博敏

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最終更新:6月9日(木)12時6分

現代ビジネス

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