中国艦艇が一時接続水域に 官房長官“深刻に懸念”

中国艦艇が一時接続水域に 官房長官“深刻に懸念”
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菅官房長官は記者会見で、中国海軍の艦艇が沖縄県の尖閣諸島周辺の日本の領海のすぐ外側にある接続水域に初めて入ったことについて、緊張を一方的に高める行為で深刻に懸念しているとして、アメリカなどと連携し、きぜんと、かつ冷静に対応していく考えを示しました。
9日午前0時50分ごろから午前3時10分ごろかけて、尖閣諸島の周辺海域で、中国海軍のフリゲート艦1隻が日本の領海のすぐ外側にある接続水域に入ったほか、ロシア海軍の駆逐艦など3隻も8日夜から9日未明にかけて付近の接続水域に入りました。
これを受けて、安倍総理大臣は関係省庁に対し、不測の事態に備え警戒・監視に万全を期すよう指示したほか、外務省の斎木事務次官は程永華駐日大使を外務省に呼び、抗議しました。
これについて、菅官房長官は午前の記者会見で、「中国が尖閣諸島に関する独自の主張を行い、公船による領海侵入等を行ってきているなか、海軍艦艇を接続海域に初めて入域させたことは緊張を一方的に高める行為で深刻に懸念している」と述べました。そのうえで、菅官房長官は「尖閣諸島は歴史的にも国際法上もわが国固有の領土であって、政府としてはわが国の領土・領海・領空を断固として守り抜くという考えのもとに、きぜんと、かつ冷静に対応していく。中国に対し、アメリカをはじめとする国際社会と連携して、緊張を一方的に高める行為は行わないよう強く求めていく」と述べました。
また、菅官房長官は「中国は、これまでも公船による領海侵入等を行ってきているなかで、初めて海軍の艦艇を接続水域に入域させた。これを踏まえて、わが国としては外交ルートを通じて適切に対応した。一方、ロシアは、そうした事情がないので、同様の対応は行わなかったが、必要な注意喚起は外交ルートを通じて行った」と述べました。
さらに菅官房長官は、記者団が、中国海軍の艦艇が領海に侵入した場合、海上警備行動を発令するのか質問したのに対し、「仮定の話に答えることは控えたい。海上警備行動の発令は、その時々の事態の様相に応じて個別的に判断されるものであり、一概に答えるべきではない」と述べました。

外相「きぜんかつ冷静に対処」

岸田外務大臣は9日午前、外務省で記者団に対し、「中国海軍の艦艇による接続水域への侵入は初めてのことであり、『緊張を一方的に高める行為だ』として、深く懸念し、抗議した。尖閣諸島は、歴史的にも国際法上もわが国固有の領土であり、政府としては、わが国の領土、領海、領空を断固として守り抜くという考えのもと、今後ともきぜんかつ冷静に対処していきたい。中国に対しては、アメリカをはじめとする国際社会と連携し、こうした行為を行わないよう強く求めていく」と述べました。

斎木次官 警告受け入れなかったので強く抗議した

外務省の斎木事務次官は記者団に対し、9日未明に行った中国の程永華駐日大使への抗議について、「中国の軍艦が接続水域に侵入したことを受けて、何度も接続水域から出るよう警告したが、中国側が受け入れなかったため、程大使を外務省に呼んで、『一方的に緊張を高める行為は、日本側として受け入れられない』と強く抗議した」と述べました。
外務省幹部によりますと、斎木次官の抗議に対し、程大使は尖閣諸島は中国の領土で抗議は受け入れられないという考えを伝えたうえで、「中国としても、緊張が高まることは避けるべきだと考えており、抗議があったことは本国に伝える」と述べたということです。
一方、斎木次官は、同じ時間帯にロシア海軍の駆逐艦など3隻が付近の接続水域に入ったことについて、「ロシア側の意図は分析中だが、尖閣諸島の領有権を巡って中国は独自の主張を行っているが、ロシアはそういうことはないので、中国とは区別して考えている」と述べました。

中国 公式の反応はなし

9日未明、中国海軍の艦艇が沖縄県の尖閣諸島周辺の接続水域に入ったことについて、中国政府はこれまでのところ公式な発表をしていません。また、新華社通信など国営メディアもこれまでのところ何も伝えていません。
一方、一部の中国メディアは、インターネット上で、日本のメディアの報道を引用する形で、中国とロシアの海軍の艦艇が接続水域に入ったことを受けて、安倍総理大臣が関係省庁に対し不測の事態に備えて緊密に連携して対処するよう指示するとともに、外務省が午前2時に日本に駐在する程永華大使を呼んで抗議したと伝えています。

専門家 ロシア艦艇は東南アジアからの帰途か

ロシア海軍の駆逐艦など3隻が沖縄県の尖閣諸島の接続水域に入ったことについて、ロシア国防省はこれまでのところ事実関係を明らかにしていません。
ロシアの軍事に詳しい専門家は、今回、接続水域に入ったロシア海軍の駆逐艦など3隻は、ことし3月下旬、ロシア極東のウラジオストクを出港した艦艇だという見方を示しています。この3隻はロシア海軍の太平洋艦隊に所属し、ことし4月、インドネシアのスマトラ島沖のインド洋で行われた軍事演習に参加したあと、5月上旬にブルネイに寄港するなどしたということです。
この専門家は「ロシアの艦艇は一連の任務を終えてウラジオストクに戻る途中、尖閣諸島の接続水域に入ったとみられる」と話しています。そのうえで、「中国海軍の艦艇はロシアの艦艇を警戒監視するうちに接続水域に入ったのではないか。少なくとも、中国とロシアが一緒に軍事作戦や演習を行っているのではないとみられる」と分析しています。