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舛添都知事新疑惑! あんな「調査結果」では納得できません
六月六日に開かれた“厳しい第三者の目”による調査結果を報告する記者会見。テレビ中継が終るや否や、編集部の電話が鳴り出した。「こんな説明、納得できない」「何とかしてくれ」読者からの電話は絶えなかった。その声に応じるならば一言「疑惑はまだある」。
六月五日、東京世田谷にある舛添要一都知事(67)の自宅周辺は、殺気立った雰囲気に包まれていた。
右翼の街宣車と思しき車両が次々と舛添氏の自宅に向かおうとするのを慌てて止める数人の警察官。それを取り囲む野次馬。そんな喧騒の中心で、舛添氏の自宅だけが静まり返っていた。舛添氏の事務所関係者が明かす。
「この日は早朝から一階部分の事務所に閉じこもり、翌日の会見の準備に勤(いそ)しんでいました。舛添氏はSPに『今日は家から出ない』と言い渡していました。六日に調査結果を出すよう都議会から申し入れがあったため焦っていたのです」
そして翌六日、急遽十六時から都庁で開かれたのが、あの噴飯モノの“第三者会見”だったのである。
慌てて駆けつけた百五十名近い報道陣に六十頁以上の「調査報告書」が配布されたのは、会見開始のわずか数分前。舛添氏が二人の弁護士を引き連れ入室するまで、すべて目を通せた記者は皆無のはずだ。
都庁キャップが呻(うめ)く。
「今までの会見と異なり、今回、会見は一時間とあらかじめ決められていた。冒頭、舛添氏が弁護士の来歴を話した後、次に弁護士が調査報告書を延々と読み上げ、大半の時間を費やした。その結果、記者との質疑応答はたった二十分。要は、時間稼ぎをしていたのです。しかも毎回厳しい質問をする記者は挙手をしてもなかなかあてられず、時間がくると強引に会見を終了させてしまいました」
一方で、この日初めて明かされたのが“厳しい第三者の目”役を担う二人の弁護士の名前だった。
舛添氏と並んで席についたのは、佐々木善三弁護士(63)と森本哲也弁護士(42)。両者とも検事出身だが、とりわけ注目を集めたのが終始うつむき加減の舛添氏と対照的に、傲然と構えていた佐々木氏だ。
質疑応答で「舛添氏及び秘書以外でヒアリングを行ったという関係者とは誰か」と問われた佐々木氏は、こう声を荒げた。
「関係者というのは関係者ですよ!」
さらに佐々木氏が問題の飲食店に直接ヒアリングを行っていないことについて、「それは事実確認と言えるのか」と突っ込まれると、こう声を荒げた。
「あのね! そういうことをヒアリングして何の意味があるんですか!? あなた事実認定って知らないからおっしゃるんでしょうけどね!」
いったい佐々木氏とはいかなる人物なのか。佐々木氏は中央大学法学部卒業後、検事となり、東京地検特捜部副部長、最高検検事を歴任し、二〇一二年に退官後、弁護士となった。
“天敵”宗男氏が語る弁護士の素顔
地検関係者が語る。
「最近では前都知事の猪瀬直樹氏や、小渕優子衆院議員の弁護を担っており、特捜部と依頼人の間で“折り合い”をつけるのが上手いとの評判です。現役検事時代は、特捜部の経験が長く、副部長時代には、鈴木宗男氏の汚職疑惑を指揮し、その執拗な捜査ぶりから、“まむしの善三”という異名を持っています」
だが“天敵”の鈴木宗男氏は次のように語る。
「名前は善三ですが、実態は“悪三”ですよ。私の事件の時、私の弁護士が、特捜時代の善三の部下だったんです。その弁護士に対して『お前ら捜査妨害だ。弁護士事務所に強制捜査をかけるぞ』と肩書きを盾にして脅し上げるんです。権力を背景にして自分のシナリオ通りに捜査をしていくわけです。今回の舛添さんの記者会見も同様です。都民のための会見ではなく、依頼者である舛添さんのための会見でした」
小誌が報じた千葉県内のホテル「龍宮城スパホテル三日月」に家族で宿泊し、政治資金で「会議費用」として処理した疑惑について、〈政治資金の使途には法律上の制限はない〉としているが、神戸学院大学の上脇博之教授は、こう反論する。
「法律上の制限がないのは、政治活動に使うという前提があってこそです。舛添氏のように私的な家族旅行の支出を政治資金として記載するのは虚偽記載にあたるでしょう」
また一四年の都知事選の期間中に舛添氏が新党改革の政党交付金四百万円を“ネコババ”した疑惑についても〈政党交付金の使途に関する制限がない以上(略)違法性を帯びることはない〉としている。
これについても前出の上脇教授は疑問を呈する。
「政党交付金は原資が税金で『党のために使う』という制限があります。舛添氏は都知事選に無所属で立候補し、新党改革の支部を解散する予定だったので、本来であれば支部の交付金は国に返還しなければなりません。返還逃れは違法の可能性がありますし、少なくとも不適切という評価をするべきです」
また「龍宮城」近くの高級ブランド店「ダンヒル」で、政治資金で購入したA4サイズの書類も入らない約三万二千円のショルダーバッグについては、次のように記すのみだ。
〈同氏のヒアリングの際に確認したが、セカンドバッグであり、重要なメモや書類を“折りたたんで”収納していた〉(傍点編集部)
結局、“第三者の厳しい目”による精査の結論は、不適切な点は多々あるが、違法性はないというものだったが、到底納得できるものではない。
「関係者に直接聞き取りもせずに、依頼者である舛添氏の言い分をそのまま鵜呑みにして、有利に結論付けているだけ。ここで弁護士が違法と認めてしまえば、舛添氏は当然都知事を辞任せざるを得なくなる。依頼者の要求に応えて違法という判断を回避したのか、法律の趣旨を正しく理解していないのかのどちらかでしょう」(上脇氏)
“犯人捜し”に血眼の舛添氏
「第三者委員会報告書格付け委員会」の委員長である久保利英明弁護士も、「このケースは信頼できない」と指摘する。
「どの弁護士を選んだかということではなく、そもそも自分でお金を出して、知人から紹介を受けた弁護士に調査の依頼をしているという点で、“第三者”による調査と言えるわけがありません。選び方そのものが問題です」
今回の会見では終始神妙な表情を浮かべていた舛添氏だが、都庁内では、“犯人捜し”に血眼になっているという。
「特に五月中旬、週刊文春の記者がイベント終了後に直撃したことに対して、知事は『どうしてマスコミ非公開の日程が漏れているんだ! この部署に絶対に文春に通じている奴がいる』と激怒。知事を補佐する役割を担う『政策企画局』が情報の流出元ではと疑っています。知事がこんな状況ですから、職員も疑心暗鬼になり、組織がぎくしゃくし始めています」(都庁関係者)
一方で親しい知人にはこう嘯(うそぶ)いているという。
「今回の件で新聞、雑誌が売れているらしいから、マージン寄こせ、と言おうかな」
舛添氏は“噴飯会見”によって、一連の問題に幕引きを図ったつもりだろうが、そうはいかない。
今回、小誌取材班のもとに、新たな疑惑がもたらされたのだ。
昨年十二月二十三日、渋谷のNHKホールでは、師走の風物詩「ベートーヴェン『第9』演奏会」が開かれていた。大きなクリスマスツリーが飾られたロビーに、颯爽と現れたのは舛添氏だ。
この日は、天皇誕生日で祝日であり、舛添氏が何をしていようと勝手だが、別の都庁関係者は匿名を条件にこう証言するのだ。
「この日、舛添さんは奥さん同伴で公用車に乗って、NHKホールに駆けつけているのです。しかも一昨年もやはり公用車で、同じコンサートを聴きにNHKホールを訪れています。公用車での湯河原の別荘通いが問題になりましたが、職員の間では“N響問題”の方が悪質と言われています」
小誌が情報公開請求で入手した知事のドライバーが記した「庁有車運転日誌」によると、昨年十二月二十三日、知事の公用車は以下のような経路を辿っている。
十三時二十五分、空の車は都庁を出発→舛添氏の自宅のある世田谷区を経由→十三時五十分NHKホールのある渋谷区に到着。その後、世田谷区を経て、再び空の車が十七時三十分に都庁に戻っている。
この日のコンサートは十四時開場、十五時開演で、実演は約一時間半だ。
また知事の予定を記した「知事週間日程予定表」には、《14:05出邸 14:30~政務 渋谷区》とだけ記されている。
N響幹部は小誌の取材にこう断言した。
「昨年の天皇誕生日に、舛添さんがいらっしゃったのは間違いありません。こちらから招待したわけではなく、会場で見つけ、『あっ、舛添さんだ』と思ったんです。SPの姿はありましたが、奥さんがいたかどうかはわかりませんでした」
都庁の公用車使用のルールは〈出発地、到着地いずれかが公務であれば問題ない〉となっているが、このコンサートは公務とは言えない。
昨年末の第九鑑賞から約二カ月後、舛添氏は読売新聞ウェブサイトの連載コラム「舛添流子育て」(二月九日付「最高峰の美術品で鑑賞眼を養う」)で次のように記している。
文京区での「政務」は巨人戦観戦?
〈子供たちも、小学校の高学年になると、演奏会で騒いだりしなくなりますので、コンサートに連れて行くことがあります。年末には、ベートーベンの第9を聴きに行きます。(略)フランス人が子供たちを連れて一流の演奏を聴きに行くのは当たり前で、早く東京もパリに負けないようになりたいと思います〉
公用車を巡る疑惑は他にもある。前出の都庁関係者が語る。
「N響と同様、都知事は東京ドームでの野球観戦についても公用車を使っています。こちらも家族を連れていたと聞いています」
前述一五年分の「運転日誌」と「予定表」を突き合わせてみると、昨年、舛添氏は東京ドームのある文京区を計五回公用車で訪れている。うち二回については、公務内容が明記されており、残りの三回については「政務」としか記載がない。その三回の「政務」が行われた当日は、いずれも東京ドームでは巨人戦が行われていた。
この三日について、舛添氏の行動と、東京ドームの試合経過をまとめたのが、下の表だ。

たとえば八月二十九日には十六時五十五分に自宅を出発し、十八時から「政務」開始となっている。この日、東京ドームの巨人―中日戦も同時刻から始まり、二十時三十九分に終了するが、舛添氏の帰宅は二十一時二十分となっている。他の日も同様、試合終了から一時間以内に自宅到着となっているが、東京ドームから舛添氏の自宅までは、車で約三十分ほどの距離である。
前述した「舛添流子育て」の一五年十一月十日付には、次のような記述がある。
〈長男(原文は実名)は小学校に入ると、すっかり野球の虜になってしまいました。パパが、東京ドームに長男を連れて行って、2人でジャイアンツ戦を見るのです。(略)ネット裏で、弁当を食べながら観戦するのですが、ナイターだと翌日の学校に差し障りがないように、途中で帰宅します。8時半くらいには球場を出ないとだめで、残念ですが仕方ありません〉
新たに浮上した公用車の私的利用疑惑――今回、小誌記者は、すべての事情を知るはずのドライバーの携帯電話にかけたが、「どちらさまですか。私は違います」と答えるばかり。
さらに政治資金をめぐる新たな疑惑もある。
その一つが、舛添氏が「趣味」と公言する書道にまつわる支出である。舛添氏は池袋と新宿に店舗をもつ専門店に足しげく通っているという。
確認できただけでも、二〇一〇年九月十七日、二万八千六百十二円を新党改革第四支部で支出したのを皮切りに、グローバルネットワーク研究会などで、六件で約十一万六千円を支出している。
同店の店主が語る。
「舛添さんが東大の先生をされていた頃から通っています。領収書は、少額分でも毎回出しており、宛て名に新党改革と泰山会を書いた記憶はあります。知事になった後、築地大橋の柱に揮毫するときも作品を持ってきたので、『あんたは下手だから百枚練習しなさい』と言うと、練習用紙を百枚買っていきましたが、この時も領収書を受け取って行きました。
印象的なのは厚労大臣時代に牛の絵を描いて持ってきたことがあり、『首が長すぎる。馬じゃないんだから』と言うと、あとで秘書から『大臣に何を言ったんですか』とお叱りの電話がありました」
舛添氏の知人が語る。
「書道においては、舛添雙光という雅号を持っており、家族同伴での食事を政治資金から支出して問題となった天ぷら屋など、近所のなじみのお店には、舛添氏の書が並んでいます」
この一連の支出について、前出の調査報告書は〈一面においては趣味のために使用されるものであっても、一面においては政治活動に役立っているものであるから、(略)政治資金を使用したことは不適切とは言えず、(略)違法な支出でもない〉と、奇妙な論理を展開している。
ワインとすきやき肉をビール券で購入
それだけではない。舛添氏は家族と過ごす湯河原の別荘周辺のスーパー等で、「消耗品」などの名目で物品を多数購入しており、私的な支出ではないかと指摘されてきたが、これについて報告書では次のように述べている。
〈経費節約のために(略)、日用品をまとめて購入していたとのことである。そして、それらの日用品を議員会館事務所や政治団体事務所に持ち帰って使用していたとのことであり、(略)それらの支出は政治資金の支出として不適切ではない〉
だが、小誌には、これを真っ向から覆す証言が寄せられている。
別荘から車で約十分のスーパー「F」で、二、三年前に舛添氏と家族を見かけたという女性が怒気を交えて語る。
「SPらしきスーツ姿の男性と、奥さん、子供さんも一緒のところを見かけました。買い物カゴにはボトルワインとすき焼き用の肉が入っていました。家族の晩御飯用の買い物なんだなと思っていました。印象に残っているのは、会計の際、ビール券を出していたことです。もしビール券で払って領収書をもらっていたとすれば本当にケチですよね」
政治資金収支報告書によると、舛添氏はこのスーパーで一二年十一月、一三年十一月の二度にわたって、計約二万一千円分の「消耗品」を政治資金で購入している。
「この店は食料品と酒類がメインで、事務用品はおいていません。何度かこの店で見かけてますが、いつも舛添さんがカートを押して、品物をカゴに入れ、支払いまで全部こなしていた。奥さんや子供、SPはぞろぞろと後をついていくだけで、異様な光景でした」(同前)
新たな疑惑について、舛添氏はどう答えるのか。
“第三者会見”の翌日、舛添氏の自宅を訪れると、ゴミ出しのために舛添氏がドアを開けた。だが、小誌記者の姿を認めると、ゴミ袋をドアの外に置いたまま、再び家の中に引っ込んでしまった。
その後、迎えの公用車に乗り込もうとする舛添氏に「公用車で第九のコンサートに行かれましたか?」と尋ねたが、うっすらと笑みを浮かべて走り去った。
また都庁の秘書課を通じては、次のような回答があった。
「昨日二十三時三十分にFAXをいただきましたが、本日都議会の代表質問です。回答を希望されるのであれば、対応可能な取材をお願いします」
一連の疑惑について、都庁に寄せられた苦情は先月末までに約二万三千件。
舛添氏が耳を傾けるべきは、「厳しい第三者の目」とは名ばかりの弁護士のご託宣か、都民の怒りの声か。答えは明白だ。
「週刊文春」2016年6月16日号
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