単独著者でScienceやNatureにバンバン論文を出す超人、Dr. Kenneth C. Cataniaの新作論文です。
- Leaping eels electrify threats, supporting Humboldt’s account of a battle with horses (ProNAS, 2016)
論文の内容自体は「へー、有りそうだね」って感じなのですが、この研究の背景が面白いのです。
フンボルトの電気ウナギ伝説
著名な博物学者兼探検家として知られるアレクサンダー・フォン・フンボルト。1800年の3月、彼が南アメリカを探検している時に、原住民が奇妙な方法で魚を獲っている光景を見ました。なんと馬を池に入れていたのです。
原住民は池に電気ウナギがいることを知っていました。電気ウナギは身を守るためにその身体を馬に押し当てながら高電圧を発します。その威力は馬をも失神させると形容されたほどです。
やがて電気ウナギは身体に貯めた電気をすべて放出します。すると、原住民は感電することなく安全にウナギを捕まえられる、そう言う戦略です。
このフンボルトの電気ウナギ伝説を表した絵は非常に有名で多くの本に登場します。見覚えがある人も多いかもしれませんね。
しかし、フンボルトがこの光景を見てから200年以上たっても、電気ウナギのこの習性が真実なのかは明らかにされていませんでした。
電気ウナギがダイレクトアタックする様子
今回の実験は水槽に敵に見立てたワニの人形(!)を入れて、その際の電気ウナギの行動を詳細に観察する、と言うシンプルなものです。実際の動画を見てみましょう。
敵が近づくと水面から身体を飛び出して密着させている様子を見ることが出来ます。
筆者はこの行動とウナギの発電の関係を調べました。すると、身体を密着させている時に電気ウナギが高電圧を発していることが分かりました。
この観察結果はフンボルトが200年以上前に南アメリカで見たものと一致します。最新の研究手法で明かされる伝説、ロマンが有りますね。
終わりに
電気ウナギはこれまで思われていた以上に多彩な電気の使い分けをしていることが近年になって分かってきました。レーダーのような使い方、水中での高電圧攻撃、獲物のリモートコントロール、そして今回の高電圧直接攻撃。
進化の過程でこのような能力を獲得したとは・・・いやはや凄い。