スペースを通じて「新しい体験を売る」〜”活用事例集”としてのオウンドメディア「BEYOND」

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愛のないコンテンツマーケティングに未来はない――そんな強い思いでコンテンツマーケティングに取り組むナイルでは、「愛」に満ちたコンテンツマーケティング施策を展開している企業をシリーズで追っていく。

シリーズvol.01は、球場から無人島、お寺までユニークなスペースをネットで簡単に貸し借りができる「スペースマーケット」(https://spacemarket.com/)を運営する株式会社スペースマーケットを訪問。

スペースマーケットでは現在、時間貸用のレンタルスペースを取り扱い、「お寺で経営会議」「古民家で結婚式」「映画館でパーティー」などユニークな利用事例が多数生まれ、サービス開始以来、その取り扱い数は6000件を超える。

そんなスペースマーケットが昨年5月、魅力的なスペースやユニークな利用事例、ノウハウ等を紹介するオウンドメディア「BEYOND」http://beyond.spacemarket.com/を立ち上げた。その狙いは? そこにはどんな愛情が注入されているのか? コミュニティマネージャーの貝塚健さんに、「BEYOND」誕生の経緯と、これからの展望について話を伺った。

SPACEMARKETのポータルサイト
 

――スペースマーケット設立の経緯をお聞かせください。

近年、シェアリングエコノミーがアメリカで注目されてきて、これから新しいビジネスモデルになるのではないか考え、代表取締役 CEOの重松大輔が2014年に会社を設立しました。現在は6000件以上のレンタルスペースが登録されています。現在は東京が中心ですが、今後は関東圏から関西、そして全国、アジア、ヨーロッパへと世界を視野に展開していきたいと考えています。

――順調に展開されているスペースマーケットですが、その中で昨年、「BEYOND」というオウンドメディアを立ち上げました。

スペースマーケットを展開して1年が経ち、利用者が増えてきたのに伴い、いろいろな人から意見を聞く機会がありました。そのときに多くの人に、スペースマーケットで場所が借りられることは理解してもらえていたのですが、レンタルスペース自体がどのようにして活用できるのかという理解がまだ足りないと感じたんです。レンタルスペースを利用して何をすればいいのか具体的にイメージがわかない人が多かった。そこで実際にスペースマーケットを通して利用してくれたお客様にご協力をお願いし、利用事例集を作ろうと思いました。そして立ち上げたのが「BEYOND」です。

「BEYOND」を立ち上げて、ちょうど1年が経たちましたが、まずスペースマーケットをどう利用すればいいのか、どのような使い方があるのかというイメージは伝えられるようになってきたかと思います。バーベキューができるとか、野球場やお寺でイベントができるとか、映画館で結婚式を挙げられるとか。いろいろな使い方があるということを、知ってもらえるようになってきましたね。

ユーザーの理解を深めるために立ち上げられたオウンドメディア「BEYOND」

――「BEYOND」の制作はどのように運営されていますか?

最初はコンテンツ制作を外注していたのですが、あまりうまく回らなかったので、今ではすべて自社で制作・運営しています。ノウハウの蓄積やお客様とのリレーション、コスト面を考えるとその方が効率が良いという判断になりました。

「場所を売る」から「体験を売る」へ

 ――理解を深めてもらうために、実際どのようなコンテンツづくりを心がけていますか?

 「BEYOND」として掲載する場合は、インタビュー記事を載せるようにしています。イベントの主催者と参加者の両者のインタビューを必ずしています。スペースにフォーカスするというより、どんな活用をしているかというイベントを主軸とした記事を紹介しています。

コンテンツマーケティングという意味でいえば、ただ「場所の紹介」という情報提供ではなく、さまざまなレンタルスペースを利用することで、ビジネスでもプライベートでも、何か新しい体験ができることを知ってもらうメディアだと位置づけています。「場所を売る」というより「体験を売る」。モノ軸より、コト軸やヒト軸という考え方が強いですね。

「BEYOND」は、当面の目標は会員数を増やすことではなく、活用事例の位置づけとして考えているので、PV数などの数字を追いかけることはあまり重視していません。「BEYOND」はあくまでも訪問してきてくれた人に対して、コンテンツを通して、スペースマーケットというサービスの理解を深めていただくという位置づけです。

――「BEYOND」を拝見すると、確かに「お寺でベストフンドシアワード」「カフェを丸ごと貸し切り!「自分のお店を1日だけ開く」「シンデレラフェス 日本最大級のJKイベントの打ち上げは代官山で」など、スペース以上にその使い方のユニークさが目立ちます。これまでのスペースの利用方法で想定外だったユニークな事例はありますか?

 古民家でのコスプレは意外でしたね。実は東京には古民家がたくさんあるのですが、町田市のある古民家では毎週土日になるとコスプレイベントが行われるようになっています。『刀剣乱舞』というゲーム(2016年10月よりアニメ放送予定)があるのですが、そのゲームのキャラクターに扮して撮影会が毎週末に開催されているんです。キャラクターの設定と和風の舞台がマッチしたんでしょうね。最初に誰かが始めたら口コミで広まって、自然発生的にコスプレイヤーの“聖地”になっていったようです。他にもたとえば横須賀にある無人島の「猿島」もコスプレイヤーたちの人気の場所となっていますね。

――デジタルマーケティング戦略として意識しているチャネルはありますか?

大きく分けるとSEO、メール、広告、アプリ、SNSになります。流入の中で一番高い比率を占めるのはSEOですので、6000件の情報をキーワードマッチングをしたり、インデックスを作るということは意識してやっています。オウンドメディアとしての「BEYOND」は、SNSに含まれるという認識です。

KPIは主にFacebookからの流入数にしていますので、いいね!数が指標になってます。「BEYOND」に掲載したコンテンツから毎週1本、スペースマーケットのサイトから1日3回スペースの紹介を投稿しています。

メールはユーザー登録時にメールアドレスを登録していただくので、毎週火曜日に「今週のおすすめ」という情報を提供していますが、やはりメールは反応が高いですね。広告はクリテオとアドワーズ、Facebookアド。SEOでリーチできないところを広告で補うくらいですね。

写真のクオリティが予約数のカギを握る

――流入数が多く、シェアされやすい記事の傾向はありますか?

 Facebookでいいね!がつきやすい、シェアされやすいという傾向でいえば、やはり写真のクオリティが高いものが伸びやすいですね。基本的にはなるべく良い写真を選ぶようにしています。毎月1回編集会議を行っていて、営業からもスペースの候補を持ち寄ってもらって、編集部で最終的にピックアップします。

スペースマーケットに登録されるオーナー様にも「写真が良いと予約率が上がる」ということを念入りにお伝えするようにしています。最近はその成果もあって、クオリティの高い投稿が増えてきています。人気のあるスペースを紹介することで、どんな写真を使うと拡散しやすいか、という感覚は徐々に掴んでいただいている印象ですね。それがすなわちスペースマーケットの特徴にもなってきています。もちろん写真のクオリティだけでなく、場所、家具、照明など、スペースの雰囲気や内装、外装がユニークだったりすることも人気が出る大きな要因になります。

シェアリングエコノミーの未来

――今春から民泊事業もスタートし、Airbnbともよく比較されると思いますが、その違い、差別化はどのように考えてますか?

 現在、民泊に関する法的な整備や地方自治体の規制緩和の動きがあります。これをビジネスチャンスと捉え、スペースマーケットの時間貸しのレンタルスペース事業の延長で宿泊を伴う施設を展開することになりました。古民家、宿坊、住宅など、すでに登録していただいている宿泊可能な施設を始め、ユニークに宿泊できるサービスを多数掲載する予定です。民泊を始めるにあたっては、Airbnbは外国人を主なターゲットにしていますが、スペースマーケットは日本人がメインになるかと思います。また弊社は宿泊の免許を持つ人のみの登録になります。

ジョギングが趣味という貝塚さん。目下マラソンのタイムを3時間台を目指して特訓中とのこと。

――創業から2年を経て、シェアリングエコノミーという考え方は浸透している実感はありますか?

パイとしてはかなり広がっている実感がありますね。もともと日本には「もったいない」「おもてなし」という文化があります。それこそ昔はお隣さん同士で食材やモノなどの貸し借りをする習慣もあったくらいですから、シェアリングエコノミーの概念は受け入れやすいかなと思います。あとはいかに安全や安心を担保できるかが、今後のシェアリングエコノミーの発展のカギを握っていると考えています。

――スペースマーケット、そしてそのハブとなるオウンドメディア「BEYOND」を通じて、今後、どんな「愛」を注いでいきたいと考えますか?

 「BEYOND」はレンタルスペースというサービスの理解を深めていただくことで、ビジネス、プライベートに関わらず、これまで想像もできなかったような楽しいライフタイムバリューを提供していければと考えています。

スペースマーケットには、「VALUE8」という社是があるのですが、その中の「真のカスタマーサクセスを実現せよ」「素直・謙虚・チャーミングであれ」というのが、まさに私たちがお客様にお届けしたい「愛」だと考えています。

スペースマーケットのVALUE8

  1. 世界は変えられると信じて挑戦し続けろ
  2. ラストワンマイルを詰め切れ
  3. 固定観念を理解し捨て、創造せよ
  4. オーナーシップを持ち、組織を成長させよ
  5. 自分より優秀な人財を採用し、共に成長せよ
  6. 真のカスタマーサクセスを実現せよ
  7. PDCAを高速回転し、適正な結果を出せ
  8. 素直・謙虚・チャーミングであれ

「スペースマーケット」

「スペースマーケット」iOSアプリ

「BEYOND」(利用事例等を掲載)

 

Editor’s EYE

お話を伺っていて意外だったのは、全国には結婚式場、お寺、映画館、古民家など、使われていない「遊休スペース」がけっこうあるということだ。そのスキマ時間を有効活用するため、さまざまなスペースが思ったより安く借りられるという印象もあった。しかし、それ以上にスペースマーケットのサービスがユニークなのは、さまざまなスペースを提供することで、新しいライフスタイルも生まれるということだ。

人間社会のコミュニティには「サードプレイス」という考え方があるが、これは自宅(ファーストプレイス)や職場(セカンドプレイス)と隔離された「心地のよい第三の居場所」を指す。スペースマーケットが提供するスペースは、まさにサードプレイスの考え方だ。そして、そこから「サードエクスペリエンス」(第三の体験)が生まれる。それがスペースマーケットが生んだ新しい価値であり、ユーザーに届けられる「愛」ではないだろうか。そして、その「愛」の伝道師としての役割を果たすメディアが「BEYOND」なのだ。

取材・文:成田幸久(ナイル株式会社/コンテンツユニット)

成田 幸久Webコンサルティング事業部 コンテンツディレクター

コンテンツディレクター。元インフォバーン執行役員。AMEX会員誌『IMPRESSION』、『ワイアード』日本版、JAL機内誌「winds」などで副編集長を務めた後、眞鍋かをりなどの著名人ブログをプロデュース。ほか、セブン-イレブンとヤフーの共同事業メディア『月刊4B』編集長、オウンドメディアのアドバイザリー支援など、Webメディアの企画・運用など実績多数。

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