「反抑圧」を掲げる上坂すみれによる、マジメな下ネタ談義
- インタビュー・テキスト
- 渡辺裕也
- 撮影:豊島望
最近はあまり「男らしさ」なんて言わないんだろうけど、私は昔ながらのそういう基準って、そんなに間違ってないような気もしている。
―そう思いながらも昭和の映画やドラマにハマっていくとき、上坂さんの中にはちょっとした背徳感もあったんですか。
上坂:今では規制されちゃうようなことが普通に描かれている、そういうある種の伸びやかさを楽しんでいるところは確かにあります。だって、本気で「こんなのいけない!」と思っていたら、その時点で見るのをやめていたはずだけど、むしろ今はCSでなんでも見放題という素晴らしい環境を手に入れて見てますから(笑)。ただ、私が好きな作品は、いわゆるツヤツヤの超エッチなやつではないんですよ。丸尾末広の漫画なんかもそうですけど、どちらかというと、あまり誇張されてない描き方が多くて。そもそも女子はそういう過剰に演出された裸体の描写にロマンスを感じないですからね。
―その裸体の描写もそうですけど、男性の場合はエロティックな妄想がクリエイティブなイメージに繋がることもけっこうあると思うんですよね。女性の場合はどうなんですか?
上坂:それは女性にもあると思いますよ。直接的なイメージや表現ではなくても、どんどん形而上の世界を掘り下げていけば、きっと女子もすごいことを考えていると思います。それに、そういう表現を頭ごなしに拒んでしまうと、後々こじれてド変態になっちゃいそうな気もして。
―抑制しすぎると、どこで爆発するかわかりませんからね。
上坂:そうですね。あと私、腐女子の文化って本当にすごいと思っていて。たとえば乙女ゲーム(自分が主人公になってプレイできる女性向け恋愛ゲーム)をやる人は、その世界に自分の名前を入れてゲームの中の男子との関係を妄想するじゃないですか。でも、腐女子の場合は、イチャイチャしているのはあくまでも男子同士で、そこに自分の存在は必要ないんですよね。それってものすごく高度な想像力だと思って。
―たしかにそれは僕の想像力が及ばない世界観かも。上坂さんはその腐女子的な感覚を理解できるんですか?
上坂:ちょっとわかります。私、中学のときにプロの腐女子みたいな友達がいて、その子がイベントに連れて行ってくれたり、いろんなサイトを教えてくれて。そこで「たしかにこれはちょっといいな。私も腐女子になれるかも」と思ったこともあるんです。ただ、同人誌を買う勇気はなくて、結局そこで辞退してしまいました。
―なぜ踏みとどまったんですか?
上坂:「女の子のほうがかわいいじゃん」と思ったんです。女の子って、男の人に対して「かわいい」という言葉を使うじゃないですか。「○○君、かわいい!」って。多分その「かわいい」は「母性をくすぐられる」「守ってあげたい」みたいな意味合いで、男子が使う「かわいい」とはまったく用法が違うものなんですよ。つまり、女子が男子に対して使う「かわいい」には、ちょっとした上から目線があると思うんです。でも、私はどこかで「かわいいは女子に向けて使いたいな」と思っていたみたいで。
―自分の思う「かわいい」の感覚と照らすと、ちょっと違和感があったということ?
上坂:きっとそうなんでしょうね。それに高校生の頃になると、「男子はやっぱりかっこいいほうがいいな」という考え方も強くなっていって。好きな俳優さんも渋い人が増えて、今はもうなくなった浅草の名画座まで、よく任侠映画を見に行ったりしていました。でも、任侠とイケメンはまた違うのかなぁ……?
―うーん。上坂さんが任侠映画の俳優さんに惹かれるのは、おそらく外見的な要素だけではないですよね。前回のインタビューでも、上坂さんは「正義でも悪でも、信念を曲げない人に惹かれる」とおっしゃっていたから。
上坂:そうですね。もちろんルックス的な要素もありますけど、基本的にはそういう「男らしさ」が私は好きなんだと思います。最近はあまり「男らしさ」なんて言わないんだろうけど、私は昔ながらのそういう基準って、そんなに間違ってないような気もしているので。
―上坂さんの中には「男らしさ」と「女らしさ」の基準がそれぞれ明確にあるんですね。
上坂:ありますし、それを求めているんだと思います。ズボンを穿くのが苦手なのも、自分は女性らしくいたいという気持ちの表れだと思うし、かといってパンツスタイルの女性が嫌いなわけではもちろんないんです。たぶん私は「男らしさ」「女らしさ」みたいな概念が好きなんでしょうね。
リリース情報
- 上坂すみれ
『Inner Urge』初回限定盤(CD+DVD) -
2015年7月22日(水)発売
価格:1,836円(税込)
KICM-91617[CD]
1. Inner Urge
2. ツワモノドモガ ユメノアト
3. Inner Urge(off vocal ver.)
4. ツワモノドモガ ユメノアト(off vocal ver.)
※画像は本人ジャケットAパターン
プロフィール
- 上坂すみれ(うえさか すみれ)
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ソビエト連邦が崩壊し、ロシア連邦が成立した年、1991年に神奈川県で生を受ける。2012年1月に本格的に声優デビュー。TVアニメ「中二病でも恋がしたい!」、「鬼灯の冷徹」、「アイドルマスターシンデレラガールズ」、「艦隊これくしょん -艦これ-」など昨今のヒット作に出演。アーティストとしては、2013年4月期放送のTVアニメ「波打際のむろみさん」主題歌「七つの海よりキミの海」でデビュー。2014年1月には1stアルバム「革命的ブロードウェイ主義者同盟」を発売し、オリコン週間ランキング9位を獲得。 2016年2月には中野サンプラザにて2Daysライブを開催する。LIVEでは客席にモノを投げ込む、自らの衣装の一部をプレゼントする、ぬいぐるみをモッシュさせる等、そのステージングからは目が離せない。逆境◎