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「引きこもり」するオトナたち

「引きこもる女性」が家庭内暴力から逃げられない事情

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第261回】 2016年6月9日
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家を出たいけれども出られない。引きこもる女性たちの「居場所」が日本にはほとんどない

 長年、親元で過ごし、セーフティーネットの谷間で孤立していた女性が、家を出て自立したいと思ったとき、一体どこを目指せばいいのか。現実には、寝泊まりなどできて一時避難できるような「居場所」がほとんど存在せず、その決意はもろくも崩れ去ってしまうケースが少なくない。

 5月に拙著『ひきこもる女性たち』を出版した影響もあるのだろう。最近、似たような状況に置かれた女性たちから、ますます多くのメールが届くようになった。それも、地方で「家族以外との関わりがない」状況の人が多く、「私と同じ思いの人がいるんだと思い、 励みになりました」といった反応も少なくなかった。

 一方で、気がかりなのは、優先的に救済の必要性が感じられるのは、家族からの否定的な目線や言動などによって、自宅が「居場所」になっていない女性たちだ。

 もちろん、女性が安心して参加できるような当事者「女子会」イベントなどは、最近、少しずつだが、開催されるようになった。

 両親や兄弟姉妹などの家族との関係が悪くて煮詰まったとき、一般的に男性の場合、思い切って「家出」同然で実家を飛び出しても、公園でのホームレスや寮での住み込み生活などを契機に、比較的自立できる道はある。しかし、女性の場合、泊まり込み前提で考えると、ほとんど自立のための選択肢がない。

 精神疾患や発達障害などの診断を受けることで、グループホームや作業所的な施設などで共同生活する方法もあるが、抵抗を覚える場合もある。また、引きこもり関係の支援団体などが運営する施設で集団生活するのも、料金が高額になるなどの理由だけでなく、ゴールを一方的に押し付けられるようなメニューに合わなければ、ミスマッチを感じてしまうだろう。

 学校や職場で傷つけられたことなどをきっかけに、心理的に引きこもってきた女性にとって、実家を飛び出して、1人暮らしを始めたと思っても、社会の側にそうした想定がされていないのか、第1歩を踏み出すまでの選択肢が限られている。つまり、セーフティーネットがほとんどない状態なのだ。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


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「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

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