6月7日は米大統領選予備選挙で最後の山場でした。カリフォルニア、ニュージャージー、ニューメキシコ、ノースダコタ、サウスダコタ、モンタナの各州で投票がありました。

このうちカリフォルニア(代議員数548)とニュージャージー(代議員数142)がとりわけ重要です。

ニュージャージーはすでに99%の開票を終え、クリントンが63%、サンダースが37%の得票でした。

カリフォルニアは65%の開票を終え、クリントンが57%、サンダースが42%の得票でした。

事前の予想では「ひょっとするとクリントンがカリフォルニアで負けるかもしれない」と言われていたので、クリントン候補のカリフォルニアでの安定した勝利は、11月の本選挙に向けて心強い結果と言えます。

6月7日だけでクリントンはこれまでわかっているだけで114の代議員を獲得し、合計2,497となっています。一方、サンダースは94を獲得し、1,663となっています。

すでにクリントンは必要過半数2,383をクリアしているので、民主党の指名を確保することは間違いありません。

クリントンが民主党の指名確保確実となったことで、「初の女性大統領誕生か?」ということが今回の大統領選挙の争点として、改めて注目され始めています。

これは、かなり重要なポイントです。

ちなみに8年前の大統領選挙予備選挙では、クリントン候補は女性票の51%しか獲得できず、バラク・オバマに民主党指名候補を譲りました。従って11月の本選挙では「初の女性大統領誕生か?」ということは争点にはなりませんでした。

今回、クリントン候補は女性票の6割以上を獲得しており、「女であることを前面に出す」作戦を展開しています。

共和党のトランプ候補は、あからさまに女性蔑視の傾向が見られる大統領候補なので、クリントン候補は、このトランプ候補の弱点を徹底的に突いた選挙戦を戦うべきです。その点、2008年の大統領選挙では、「初の女性大統領」という点をわざとぼかした選挙戦を戦い、クリントン候補の「ガッツの無さ」を嘆く声がありました。

大統領候補としては、クリントン候補の方が、トランプ候補より遥かにふさわしいし、経歴の面でも全く問題ありません。

クリントン候補が苦しんでいるのは「なぜか、彼女の場合、大衆とつながることができない」というlikabilityの問題です。

ヒラリー・クリントンは1947年に生まれ、シカゴの郊外で育ちました。子供のときから政治に興味をもち、ウエルズレー・カレッジでの卒業のスピーチは『ライフ』誌にとりあげられました。

彼女はイェール大学ロー・スクールに進学しますが、そこでビル・クリントンと出会うわけです。

ビル・クリントンはヒラリーに何度もプロポーズしますが、彼女はすぐにはそれを受けず、ビルとともにアーカンソー州へ移ることにかなり抵抗したそうです。つまり彼女も単なる妻の座に収まるのみではなく、野心があったということです。

しかしヒラリーはその野心と、社会が女性に対して期待する役回りの間で、常に葛藤します。

ヒラリー・クリントンを(自分はいずれ大統領選に挑戦すべきだ)と決心させたのは、1999年にスポーツ・イベントで或る女子高校生バスケットボール・チームのキャプテンから「ヒラリーさん、挑戦を受けて立って!」と促されたことによります。

下の写真がそのときの写真で、スピーチをしているのが17歳のバスケットボール部の主将、画面左端でそれを聞いているのがヒラリーです。

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ヒラリー・クリントンはたいへんな努力家で、常に万全の用意をする人です。また結果を出すということにこだわりを持っています。したがって議会における立法の過程でも、周到に準備し、熱心に働きかけます。

こうした有能で極めて実務遂行能力に長けている反面、個人的な問題になると、つねにガードが固く、守勢に回る傾向があります。つまり肝心な局面で胸襟を開かず、するりと逃げてしまう性格なのです。

ヒラリー・クリントンが11月の本選挙で勝つためには、「今回の大統領選挙は、初の女性大統領をアメリカが望むのか? 望まないのか」に関するレファレンダムだという点を前面に押し出すことが必要になると思います。

この事実にヒラリー・クリントン自身がきちんと向き合うことが出来れば、ドナルド・トランプ候補など敵ではないと思います。