【対談】DMM亀山敬司 会長 水族館からモノづくりまで、”なんでもアリ”の先にあるもの(後編)
この記事の読了時間: 約14分対談第二弾、後編は前回に引き続きDMMの亀山敬司会長です。前編ではDMMがビットコイン決済の導入に至った経緯と、普及の糸口について伺いました。その後編となる本編では、DMMの自由奔放、”なんでもアリ”な事業はどのように作られるのかをお聞きします。そして、亀山会長が考える”お金の未来”とは――。
前編はこちら:DMM 亀山敬司会長 ビットコインは将来的に化けたらすごいと思った
廣末:外から見ていて、ビットコインだけでなく、3Dプリンターなどさまざまな新事業にチャレンジしていらっしゃる印象がありますが、新規事業の推進には亀山会長自ら旗を振ってらっしゃるんでしょうか。
亀山:最近は、現場のほうからこれをやりましょうっていうのが多いかな。
廣末:なるほど。どのような意思決定をされるのでしょうか?亀山会長なりに色々インプットしたり判断したりということもされていると思いますが。
亀山:面白みがあるか。それと、このあといけそうかなというところ。最近だと水族館やりましょうってきたな。
廣末:水族館ですか。
亀山:そう、水族館。今は結構、オリックスさんとか民間の水族館、頑張ってるんだよね。
廣末:そうなんですか?
亀山:池袋とか、京都とか、スカイツリーとか。実は結構流行ってる、民間はね。国とか市とか、自治体がやってるところはいまいちかもしれないけど、やり方しだいでは面白いと思うし、今後世界的にも新興国とか色んな所で増えていくイメージもあるから。
廣末:インバウンドということでしょうか?
亀山:インバウンドというより、海外にパッケージとして出すっていうやり方。ただの水族館じゃ面白くないから、VRとか色んなテクノロジーを入れてね。VRだけじゃ面白くないから、作り物もいれば、魚も泳いでるみたいな。偽物と、本物のブリが一緒に泳ぐみたいな(笑)。例えばね。そういったものを作って、海外展開をしていく。ディズニーランドを海外に建てるっていうのと似てるかな。
廣末:なるほど。
亀山:まあ俺が考えたんじゃなくって、現場からやりませんかと提案がきて、おお、どうなの?って聞いたら、ああ面白そうじゃんって感じ。
廣末:そこを、水族館面白いじゃんって言ってしまえるところが、すごいなと思えます。
亀山:まあ儲かるかはわかんないけどね。何か先がありそうな気がするってだけで。あとは、DMM.makeとIoTとを組み合わせてコミュニティとか作ったら面白いんじゃない? ってことで、秋葉原にDMM.make AKIBAを作ったりしたりね。
廣末:素晴らしい。
亀山:色んな技術者とか、色んな製作者とかも見学にきてるし、あそこから新しいiPhoneが生まれたら最高じゃない。やったー、ボロ儲けー!みたいな(笑)
廣末:(笑)
亀山:作ってる人もボロ儲けだろうし、うちも量産や販売を手伝うことでチョイ儲け。そんな感じかな。
廣末:事業を伸ばすにあたって、強いところを伸ばすというやり方もあるし、新しい事業に積極投資して、イチから芽を育てていくやり方もある。亀山会長の場合は、後者だということですね。
亀山:まあ、あの手この手でやるけどね。イチから育てるのはゆとりでやるようなところだから。当たる当たらないもあるし、DMM.makeだって毎年何十億と赤字が出てるしね。だからその分ちゃんと儲けるところ、アダルトとかFXとか、そこはちゃんと身近な稼ぎもすると。
廣末:今日の飯をちゃんと稼ぐ。
亀山:今日の飯をちゃんと稼いでいかないと何もできないよね(笑)
廣末:そこはやっぱり分けられて、新しい可能性のある領域には事業として張っていって、サーチをされてらっしゃるということですね。
亀山:今まで作ったサービスはどんどんダメになると思うからね。だって動画のアーカイブとか、コピーもあるし、うまくいかなくなるでしょインターネットだと。
廣末:今後そうなっていくと思います。
亀山:お金を取りにくくなるよね。それよりもゲームとか、コピーされないものになっていくんじゃないかなと。例えばエロひとつとっても、エロなんてタダで見れる時代だから。でも、みんなもゲームならお金を払ってくれるし。
10年より先を見据えて
廣末:ですけど、新しい事業に積極的に取り組む姿勢っていうのが、結果として、艦これのような大ヒットを生んだり、新しい芽がどんどん出てこられるわけですから。そういうところも含めてDMMグループが面白いと見てる人が増えてるんじゃないかと思います。
亀山:まあ、そんな雰囲気で見せてるからね(笑) で、面白い雰囲気で見せてるから水族館みたいな話もくるしね。なんでも聞いてくれみたいな空気を作れば、それもありなのかってなる。
廣末:そうしていろいろな事業にチャレンジして、新しい世界観を見せるというのは、上場していない強みなのかもしれませんし、非常にユニークな存在だなと思います。
亀山:まあ上場してないのは楽なところだよね。今、水族館やろうなんていったら株価下がっちゃうから(笑)。なに考えてんだー!なんて言われて株主から怒られて、すいませーんみたいな。
なんか面白そうなんでーとか言ったら、面白いじゃないよなんて言われちゃう。 艦これみたいによく分からないものにお金入れたら、怒られるじゃない。なんでこんなものにお金を入れたんだって(笑)
廣末:確かに(笑)
亀山:あたったらラッキーって言われるかもしれないけど、入れるときに怒られる。あれなんかは入れて半年か一年であたったからいいけど。でもDMM.makeなんかはまだ、4〜5年は掛かるんじゃないかな。
廣末:ただ、やはりDMM.makeのようなモノづくりの場を提供できるところがないですから、世間からとても喜ばれてると思います。
亀山:でも、これも立ち上がる前に金がつきたらやめちゃうよ(笑)
廣末:やっぱり予算があるんですね。
亀山:予算というより、毎年の利益のなかでやってるからさ。今年の稼ぎのうち、これでじゃあアフリカにいこうとか、DMM.makeにいこうとかやるけど、これは5年、10年お金になんないのがわかってるから。その前にお金がなくなっちゃうとできない。だから、それは資金繰りをみながら、出来る範囲でっていう感じ。
廣末:そういった意味では、仮想通貨に関しても出来る範囲でトレードなどで活用していく。
亀山:どの分野がいいかは俺もいまだにわかってないんだけど、トレードのほうがイメージはできるかな。でもウォレット自体も便利なもんは便利だから、やり方しだいだと思うけどね。事業自体これでいくっていうのも決めていないから、もうなりゆきまかせ(笑)。
あとはやるって言う奴に手を上げてもらったり。前の時だと証券の人間にビットコインやる?って聞いても、まだやらないっていうから、じゃあやめようってなったし。今はそろそろ考えてるだろうし、やろうとしてるかもしれないけどね。
だからやっぱり、現場に振って、やりたいかどうかってところになるんじゃないかな。俺はあまり金融に詳しくないし、俺だけじゃ何もできないから。やりたい奴手を上げろっていって、アフリカに行くってやつがいるからアフリカに行かせるしね。FXにしても、やる人間がいたからやれたからさ。
廣末:やっぱり、主体にある人がそれを信じてできるかどうかっていうところが事業の成否に一番影響するでしょうから。
廣末:亀山会長はいつも、こういうことを考えてるんだけど、これに賛同するやつはいるか、やりたいやつはいるかっていうかたちでやってるんですか?
亀山:って言う時もあるし、さっきいったような、水族館とかDMM.makeとかどうですかとか、艦これどうですかっていう現場からの提案を起点にやることもある。艦これなんかは俺、思いつくわけないじゃない(笑)
廣末:難しいと思います(笑)
亀山:もうわけわかんない、なにこれみたいな(笑)。 太陽光発電とかビットコインとか、アフリカとかは俺が言い出したかな。こんなのどう?って。
でも最近は、現場からの提案を受けることが多くて、じゃあ予算つけようかなとか、しばらく試しにやってみなって感じ。自分から言うのはだんだん減ってきたかな。50歳前までは自分の提案も多かったけど、ここ数年はどっちかっていうと若い奴が持ってくるほうが多いよ。
廣末:それは組織として育ってきて、亀山会長も寛容に受けてくれるから、皆が提案しやすくなってきたのかもしれませんね。
亀山:そうかもね。っていうか俺がもう使いもんになんないと思ったから、皆なんとかしようと思ってるのかも(笑)
廣末:いやいや。
亀山:俺がやろうよって言ったのがうまくいかないなっていうのが、ちょこちょこね。クーポン、ペニーオークションと二連発で外したから、俺はもうだめだなって(笑)。 そう思ったから、亀チョクで外部に誰かいない?って言ったり、誰かどんどん提案出してよと。で、社内のやつらもだんだん育ってきたから、結構提案が出るようになったしね。
廣末:亀チョクっていう話題が今上がったんですけど、私もNewsPicksでそういうのがあるんだということを知りまして。どのような事業ユニットになってるんでしょうか。
亀山:最近だったらVRシアターとか事業提案がくるんで、直轄で決裁してぱっぱとやるパターンで、まずは業務委託で入ってもらってスタートって感じ。でも半年くらいで6〜7割くらいは消えちゃうよ。
廣末:撤退の判断っていうのはどこにあるんですか?
亀山:撤退っていうか、事業を詰めていったらまとまんなくて予算が付けられなかったっていうのが半分以上かな。で、予算付けて失敗するっていうのが2〜3割くらい。
廣末:そこまでFSを詰めてやっぱりうまくいきそうにないってなったら、一旦ダメと。
亀山:はじめの段階で一時間話しててもさ、面白そうって思うけど、半年間やってったら具体的に詰めれないっていうのがあるじゃない。例えば水族館なら魚どうすんだ魚って(笑)。例えばね。だからできるかもっていうのがまずあって、一向にできないのもあるわけよ。だからできる人間がそのまま予算を付けられる。もうバラバラ。
廣末:ですけど、そういう組織があって、亀山会長自ら事業をサーチしてらっしゃるから、今は一見してバラバラに見えてもいずれ時代がおいついてくればひとつの幹に見えてくるのかなっていうイメージがあります。御社くらい大きな組織がそういうチャレンジをしてらっしゃるというのは、非常にいいですね。
亀山:まあ幹ができるっていっても、事業はほんとバラバラだからね。
前はエロからエコまでって言ってたんだけど、今は水族館からものづくりまでやってるから。人は幹みたいになってるけどね。VRの人間とものづくりの人間と一緒にやることもあれば、アフリカの人間とものづくりの人間が組んで作ったものをアフリカで売るって話もあるし。
だから中の人間関係では繋がってるんだけど、業種は全くバラバラだし、国もまったくバラバラ。今は外国人も結構入ってきてるしバラバラバラ。
廣末:アフリカに展開されたのは、経済成長に着目して始められたと。
亀山:まあでもアフリカっていっても、5年、10年はかかるかな。正直言って。
廣末:どんなビジネスを構想されているのでしょうか。
亀山:いや、なにもまだ決まってなくって、とりあえず順番にいって探してこいって。金融やるのかゲームやるのか、農業やるのか。いずれにしてもなんもわからない。
廣末:とりあえず、そこにチャンスがあるから行ってみろと。
亀山:稼ぎがあるうちにね。稼いだ分はどっか、ほか回せばいいって話だから。
亀山会長が考える、”お金の未来”とは――
廣末:今回、仮想通貨を既存事業に取り込みましたが、亀山会長的にはお金とかマネーとか、将来こういうふうになるんじゃないかみたいな世界観っていうのはおありになったりするんでしょうか。
亀山:特にあんまり考えたことはないけど、どうなのかな。例えば今の社会で、金融政策とか国ごとに政治家が色々とあーだこーだとやってるけど、案外それって意味がないっちゃないんじゃないかなとか。
思いっきり対策やってみたらバブルになって、下がっちゃってとか色々あるわけじゃない。要するに、介入しすぎたりするとボラが大きくなるわけで。
安定させようと思ってやってることが、国ごとに思惑が違うから、全体でみると逆に波風を立てている気がする。
廣末:そうですね。リーマンショックみたいなことが起こりえる。
亀山:金融自体そもそも浮き沈みがあるものだけど、経済がもしゆるやかに伸びているとしたら、それに手を加えて上げたりするから逆に下げも激しくなったりね。
ボラが大きいから、みんないい気になったり潰れたりするじゃない。だから国の思惑に左右されないビットコインみたいなものが、全部じゃなくっても、影響力を持つようになれば波をゆるやかにしてくれるんじゃないかな。
廣末:なるほど。
亀山:まあ世界通貨みたいなもんじゃない。ある意味ビットコインって。どっかの国がミサイル作るために金がないからバーって刷るぞ〜って言ったとしようか。でも、ビットコインにかなりの影響力があれば、相対的にボラが減るじゃない。つまり、ひとつの通貨の影響力が減る。ってなると、色んな面で会社が潰れにくくていいんじゃないって気がする。
廣末:仰るとおり、各国の思惑で金融政策がとられると、やっぱりところどころに色んな誤謬がやっぱり出てきて。それが一部クラッシュを引き起こしたり、いろんな連鎖を引き起こしたりして。
グローバル化は非常にいいことだと思うんですけれども、まあ一方で金融の側面を見ると、裏で色んな金融商品が組まれてて、どこで爆発するかわかんないみたいなことも起こりつつあるので、非常に不透明感が強くなってるっていう側面もあると思うんですよね。
亀山:そうだね。まあ民主主義だろうが独裁政権だろうが、どっちにしても目先の票も必要だからね。
独裁者が無茶なことをやることもあるかもしれないし、民主主義だとしても5年後、10年後を考えなきゃいけないけど、今年当選するために通貨を上げたり下げたりしなきゃいけないとかもあるだろうし。どちらにしても、結構おんなじことが起こっちゃう。まあどうかな、あんま変なこと言ったら怒られちゃうからやめようかな(笑)
廣末:いや、かなり味のある内容です。
亀山:緩やかな波でも潰れるところは潰れるし、うまくいくところはうまくいくんだけど。新旧入れ替わったりっていうのはどうしてもあるんだけどさ。
でもそうだね。揺り返しが激しいとさ、一気に動いちゃうと、もうひと踏ん張りできたら生き残れた会社がさ、一気に不景気になってダメになっちゃったり。円安とか円高で、あー予定外!って。そういうのは少ないほうがいいなと思う。であれば、長い目で見ればいいところは生き残って。
たまにね、いい会社なのに、たまたま景気の煽りを受けて潰れちゃうとかあるもんね。そういう時は、あー残念だなって思うよね。もうちょっと体力があれば、もうちょっとお金があれば生き延びたり、良くなったりする会社はあるよね。
だからそういった意味で、こういうフラットな通貨が広がることはすごい、いいなと思うよ。
廣末:なるほど。
亀山:いいなとおもうけど、なかなか困難な道だけどね(笑)
廣末:そうですね。
亀山:いや思うんだけど、俺がそれを、先頭きってやるってほどのパワーがないのよ。こんなでかい市場の中で俺達が取り扱おうが、俺達が使おうが、俺達がなんかしようが、時代を変えるほどのパワーはないんだけど、なったらいいなと思うのと、長い目でみたらなると思うから、やるけど。でも、赤字でもこの世界を作るんだ、人生をかけてやるんだっていうまでのパワーはないよね。気合もないしね(笑)
だから、とりあえず俺たちの財布の中でやれることをやろうみたいな。
廣末:ありがとうございました。仮想通貨だけでなく、貴社の新規事業に対する取り組み姿勢をお伺いすることができ、非常に勉強になりました。
亀山:答えになったかな(笑)
インタビュー連載「仮想通貨×事業」
第一回 セレス都木聡 社長 仮想通貨のソーシャルインパクトは計り知れない第ニ回(前編) DMM 亀山敬司会長 ビットコインは将来的に化けたらすごいと思った
第ニ回(後編) DMM亀山敬司 会長 水族館からモノづくりまで、"なんでもアリ"の先にあるもの
第三回 GMOメディア森輝幸 社長
第四回 マネーパートナーズ奥山泰全 社長
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