スタートアップの悩みの種の1つである、採用や組織作りといった「人」に関わる課題。そんな悩みと向き合うヘッドハンター株式会社キープレイヤーズ高野 秀敏氏。クラウドワークス、メドレー、SORABITO、Skyland Venturesなどへ個人投資家としても複数のスタートアップ・VCを支援してきた同氏に、仕事や考え方を伺いました。
頑張っている人を応援することが自分の仕事
-- 最初に自己紹介をお願いします。
キープレイヤーズの高野と申します。主にスタートアップと言われるような会社様の採用（転職）のご支援をしています。
もともとは宮城県仙台市出身でございまして、最初に入った会社がインテリジェンスという会社で、100人ぐらいの時に入社を決めて1000人ぐらいの時まで6年ほど働きました。人材紹介の事業ですとか、そういう立ち上げみたいなところからやって、最後は人事という感じの経歴でした。
もう少し前の話も簡単にすると、リクルートさんで学生の時インターンをしていました。リンクアンドモチベーションの小笹社長が当時リクルートにいらっしゃって、組織人事コンサルティング室みたいなことをやってらっしゃってですね。そこでインターンをさせて頂いていて。ワークライフバランスという会社の小室淑恵さんとかが同じグループでした。
そんなところで結構HRとかに対する興味も深まって。当時一緒にインターンしてる方々に「伸びそうな会社、どこ受けているの」と言ったら多くの人が言っていたのがインテリジェンスとアンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)だったんです。そこでインテリジェンスを実際に受けて、インテリジェンス創業期の代表だった宇野さんや、最近まで楽天の役員をされていた島田さんの影響も受けて入社しました。
-- そしてそこから独立されて今のお仕事をされていると。
そうですね。キープレイヤーズを設立し、2005年から今の仕事をしています。具体的に言うと自分が76年生まれだったため、76世代とかっていう言葉もあったりするんですが、そういった同世代のベンチャーの方を中心にお手伝いしたいなというところから始めまして、11年です。
いろいろ支援・ベンチャーしていたら途中から、前から知っている人が独立したいとか、独立してスタートアップしたいと言っている友人がおり、そういう話が巻き起こってくるようになり、結果として個人でエンジェル投資をするようになったりとか、上場を目指すスタートアップの社外取締役を依頼されるようになり、顧問になるようになったりとかっていう流れになったんですよね。
-- それは完全にもう会社としての事業ではなくて、高野さんご自身が個人として支援をされている感じですか。
そういうことになりますね。自分はがんばっている方をですね、まあがんばっているだけじゃダメだと思うんですけど、がんばっている方を応援して行きたいっていう思考が強いみたいで、会社とは別に個人でもそういう活動をやっています。
例えばクラウドワークス代表取締役吉田浩一郎さんなんかも昔から付き合いがあったため声をかけてもらって社外取締役をやらせて頂いていました。
自分からやらせてくださいというよりは、頼まれるぐらいの価値があるような人間でいたいなというふうには思っていて。最近だとヘルスケア分野のメドレーという会社の社外取締役なんかもやらせて頂いています。
-- 医療系のサービスをやられているスタートアップですよね。
はい。メドレーもクラウドワークスと全く同じような感じで、会社設立する前から知り合いで、会社設立時の時に声をかけていただいて、運営をサポートさせて頂いています。そしてそのような形で関わることが、いろいろな会社さんにわたってきていると。
-- 現在支援しているスタートアップってどのぐらいあるんですか？
実際どこからが支援しているっていうのかが難しいんですが、お付き合いのある所はみんな応援しているつもりなんですけど、エンジェル投資家として関わっている会社は何十社にもなってきちゃいますよね。会社のステージも本当に様々です。
ちょっと変わったところではバングラデシュの会社を経営しており、いろいろやろうとしてるんですけども、現状は不動産開発をやっていて。もうちょっと時間が経ってきたら人材のお話とかいろいろできると思うんですが、実は国内だけでなく海外でも支援していたりします。
-- バングラデシュですか。なかなか珍しいですよね。
これも同じような観点なんですけども、とても伸びているんですね。年間数%ずっと伸びていて。その前はモンゴルでやってたんですけど、モンゴルだと難しいいくつかの理由を全部クリアしていて。外国人に寛容で、外国企業に対しての法的な規制が非常に緩やかなんですよ。
別にモンゴルを否定しているわけじゃないですけど、バングラデシュの良いパートナーの方が見つかって、まあその方もたまたま紹介していただいたんですけども、その方がすごく良くてバングラデシュでやろうと。その人が今一番いいと言っている事業が不動産だったので、今は不動産をやっているという感じです。
この人いいな、この市場いいな、こういう順番で考えているんですね。まずこの人がいいかどうか。次は市場はあるのかどうか。その中でその人が勝てそうかどうか。こういう観点でいつも考えています。
ポイントは、その市場の中で勝てそうな人かどうか
- 応援する会社は、今おっしゃったように「人」をベースに決定されているんですか？
そうですね。経営者の方は非常に重要だと思います。経営者の方が活躍しそうな方だということと、市場ですね。その市場の中で勝てそうな人だろうかと。この観点なんですね。
細かい戦略は違うかもしれないけれど、外から見ると同じようなことをやってるように見える会社はどの市場でもあるわけで、その中で勝ち負けがついてくるっていうのはやっぱり人の力によるところが多いのかなと思っています。
その辺りは直近で変わってきている部分もあって、何か昔のベンチャー業界は社長とか役員の人とかがぐいぐい引っ張って決まるみたいな。今ももちろんそうだと思うんですけど、最近はエンジェル投資家とかVCの方も、いろいろ協調して投資されるようになってますし、顧問みたいに入る方もいますし。昔以上により総合性になっているように感じているんですよね。
だからこそ、社員はもちろん株主や社外の協力者も含めて誰を巻き込めるのかっていうが大切ですね。ベンチャー同士で被らなかったとしても、大手企業が参入してきたりする可能性はありますし、実際にそういうことがたくさん起こっているわけなので。
-- 確かに勢いのあるスタートアップは協力者をたくさん巻き込んでいるイメージはあります。人を巻き込む時のポイントって何かあるんですか？
「採用」の視点で言うと、これは採用する側もされる側もそうなんですけど、キャラ被りしないということですね。
強みが同じでキャラ被りする人がいたら、せっかくの強みをそんなに発揮できないですから。特に幹部メンバーはそうですね。メンバーが凹凸の関係になっているのか、社長が凸なら自分は凹とか、あんまり同じタイプの人はいちゃうとですね、役割が偏ってしまいますので。
-- 実際に支援するとなった時、具体的にどういう支援の仕方をされるんですか？ 会社として支援する場合と、個人として支援する場合で違うかもしれませんが。
基本的には何かお話、ご相談があったらお手伝いするっていう感じですよね。採用についてだと「この人取ったらいいのかどうなのか」みたいな話はよく相談されます。
後は営業支援みたいな感じで、お客様を開拓する時に候補先の企業を自分が知っているケースが多いので、それをご紹介したりとか。
-- 採用以外にそういうこともやられるんですね。
人の紹介というのはある種当たり前なことだと思っていて。アライアンスできるようなところとか、事業提携できるようなところとか、あとは資金調達に関してはVCの方を紹介する時もあります。
VCの方やエンジェルの方も相当知り合いになったので、けっこう紹介していますね。
今でも、自分で営業もキャリア相談もやる
-- 今のお話は割と個人投資家というか、高野さん個人でやられていることだと思うのですが、キープレイヤーズとしての高野さんの役割や業務はどんなものなんでしょうか？
代表という役職にはなるんですが、自分でも営業したり発注したりもしてますし、キャリア相談したりもしています、一社員と同じでワンストップでサービス提供しています。
-- 営業やキャリア相談とかもご自身でされているんですか。
普通にしています。ヘッドハンターの仕事なので求人の話をいただくのが営業です。キャリア相談される方を探すこともちろん仕事です。今でこそ会社組織になって10名弱ぐらいで、やっていますがもともとは自分1人でやっていましたので。やっぱり1人の時に比べて今の方が明らかに強いですね。
-- 最初は1人でやられていて、チームを作られたと。
共同で創業してくれた方がいたんですけども、ちょっとまた別な道を歩むことになって。その後1人でやっていた時期が割と長く、ここ２年くらいで組織化してきてるっていう感じです。
自社自体は粗利に対する共同分配率はおそらく日本でトップクラスに高い会社、人材エージェントになってますので、そういう体制で自分とできる人とやって行きたいなと思って少しずつメンバーを増やしています。
-- 粗利に対する共同分配率というのはどういうことでしょうか？
例えば100万円稼いだ場合に社員に30万渡す会社と50万渡す会社と70万渡す会社とあるでしょう。うちは50万〜90万渡す会社なんですよ。
そこまで払うエージェントはなかなかないと思いますし、実際に数千万円渡している社員もいるんですけど、それぐらいできる人だったら全然問題ないと思ってやっているんです。
-- 当然プロフェッショナルな方だけが集まっているわけですよね。
そうですね。だから一般的な人材会社ってがんばってもそこまでもらえない。うちは最大限できる人に報いて行くというポリシーでやってますね。それが多分良いところじゃないかなあと思っていますけど。
-- どういう思いからそのような体系でやっているんですか？他の一般的な会社とは少し違うということですよね。
会社は管理したりされたりした方が伸びるのかもしれませんが、自分自身は管理することもされることも好きではなくて、割と自由にやりたいなあと思うようなタイプだったんです。
だからあまり出社時間とか帰る時間とかを決めずにやりたかったんですよね。どっちかといったら難しい方にチャレンジしていると思いますけど、別に朝何時に来ようが、来ても来なくてもいいと思うんですよね、仕事していれば。今時、電話もスマホもパソコンもあるんで、あんまり関係ないのかなと。
もちろん出社して話し合いをする意味はあると思うんですけど、基本的には自由な時間に自由な場所で働いて、自由に結果を出せばいいと思ってます。
それが高い売り上げを上げてくれた人には当然高い給料になるし、低い売り上げの人にはもちろん低い給料になりますけども、そのこと自体も強制しないで自分で決めればいいかなと思っていて。それが自分の理想だったため、追求している感じですね。
現場に立ち続けるのは、単純に好きだから
-- 今でもご自身で現場の最前線に立って、営業もキャリア相談もしていらっしゃるというお話だったじゃないですか。高野さんはすごい実績も残されていますし、個人投資家としても活動されている中で、10年以上も現場に立ち続けていらっしゃるのはどうしてですか？
単純に「好きだから」ということに尽きるんじゃないかなと思いますね。
最初は転職相談に乗ったり、社長の経営の相談に乗って。やっぱり経営の相談の中で人的な問題が大きいんですよ。そこから徐々に広がっていって、調達の相談とかも乗れるようになったって感じなんですよね。
そうこうやっているうちに、この仕事が好きで自分の性に合ってるんだと思ったんです。それで、1人でできることには限界があるんで仲間を増やして組織を作りました。
-- 性に合っているとか、好きっていうのはどの辺りにそう感じられるんですか？
何でしょうね、ずっとやっていてもあんまり苦にならないですね。
あと感謝されやすい仕事ですよね、割と。わかりやすい仕事なのでそこはやっていて楽しいというか、何か人の役に立つことをしたいというのは社会人になる前から思っていたことなので、それが実感しやすいのが合っていたのかもしれません。
-- 仕事をする上で大切にされている考え方はありますか？
やっぱり人様のお役に立つかどうかですね。誰の役にも立たないとやっぱり寂しいじゃないですか。だからその考え方はずっと重視していて。
たまに自分もお願いしたくなるし、お願いしないこともないんですけども、人にお願いするというよりは、人からお願いされるような存在でありたいというのはありますね。
-- お願いされる側になるために意識されていることはありますか？
何か一日一善、二善やろうと努力しますよね。自分では十善ぐらいやっているつもりなんですけど、それを積み重ねることが大切だと思っています。
人って、どうしても「教えて下さい」「なになにして下さい」ってなりがちじゃないですか。でもそうじゃなくて、やっぱり自分から何か役に立つことをしているかどうかっていうことを僕はとても重視していますね。
誰かの役にたつと思ったことを毎日やり続ける 
-- 今後のことについても伺いたいのですが、今後チャレンジしようと思っていることはありますか？現在は国内に留まらず海外でも活動されているというお話もありましたが。
たまたまご縁もあって今みたいな人生になっているので、伸びしろのある人とか、会社とかっていうのを特に国籍とかにこだわらず支援していきたいなと思いますね。それは今までもやってきたことですし、その先に見えていることなので。
自分自信が今までやってきたことって、何にも知らないところから全くゼロから何かをやったっていうのはあまりなくて、何かしらのご縁がきっかけとなって全て始まっているんです。
もちろんヘッドハンターという仕事の関係上、全然知らない人にも会いに行くことはあるので矛盾する部分はあるかもしれませんけど、人と人のつながりは大事にしながら、それをきっかけにどんどんチャレンジをしていきたいなと。
-- 確かに個人的にはヘッドハンターの方ってそういうイメージがありました。自分からどんどん新しい人を探していくというか。
確かにそうなんですけど、実際自分ぐらいやると国内だともう誰かの知り合いなんですよ。むしろ誰かの知り合いじゃないっていうことが難しくなっちゃってきてるぐらいです。
特に日本でビジネス頑張って起業しようみたいな方の属性だったら、絶対誰かと知り合いになっちゃうんですよね。
-- それはすごいことですよね。その状態にどうやって行き着いたんですか？
それは全く変わってなくて、結局役に立つかどうかっていうことだと思います。役に立ちそうなことを一応やってみたつもりなんですけどね。
-- 例えばどういうことをやられたんですか？
本当に簡単なことでいいと思うんですよ。例えば本を読んだらレビューをアマゾンに書く、ブログに書くみたいなこととか、講演会に行ったら感想書いてみるとか。お友達がサービスを出したらFacebookでシェアをするとか。
やっていることは当たり前というか小さいことなんですけど、それを毎日やっているっていうのが違いかもしれないですね。振り返ってもほとんど毎日やってるんです、確かに。
それは何でかって言われると、まあ何かしら相手の役に立つかなと思ってやってるんでしょうね。それが本当に役に立っているかどうかっていうのはちょっとわかんないし、私のエゴかもしれないですけど。
ただ、それを続けてきた結果が今の自分だと思っていますし、今後も続けていきたいなと思っています。
（後編に続く）