「国際会議」といっても、参加者は中国側のメンバー以外には、日本からの沖縄関係者ばかりだ。その中には、琉球新報東京報道部長、沖縄タイムス学芸部記者など県内のマスコミ関係者や、「琉球独立」と「全米軍基地撤去」を一貫して主張している沖縄国際大教授や龍谷大教授などの研究者が含まれている。
参加者のひとりの教授に至っては、2014年に中国戦略・管理研究会のホームページに寄せた論文において、「われわれの目的は琉球の独立だけでなく、軍事基地を琉球から全部撤去させることだ」と宣言している。今回の国際会議においても、「全基地撤去」を前提とした論文を発表したという。
もちろん、沖縄を日本から切り離して「独立」させることと、米軍基地を沖縄から追い出すことは、中国の国益と戦略にとってこの上なく望ましい展開となるから、中国政府と中国軍をバックにした件(くだん)の研究機関が、同じ政治主張の沖縄マスコミ関係者や日本人学者を招聘(しょうへい)して「国際会議」を開くことの意図は明白であろう。
中国政府と軍による「沖縄分断工作」は、今や堂々と展開されている。
問題は、中国側の工作が実際、どれほどの効果を上げているかであるが、ここではひとつ、事実関係だけを指摘しておこう。
「米軍基地問題」を討議した北京国際会議から1週間もたたぬうちに、沖縄で元米兵の女性暴行・殺害事件が発生した。それをきっかけに、北京の国際会議に参加者を出した琉球新報と沖縄タイムスが旗振り役となって、「全米軍基地撤去」を求める運動を展開し始めた。
北京会議とこの運動の間に果たして関係があるのか。それはむしろ、当事者たちが答えるべき問題であろう。
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【プロフィル】石平
せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。