日米韓の国防相が北朝鮮のミサイルに対し、情報共有や監視活動で連携を強めることで合意した。事前探知から発射後の即応体制まで的確に対応できれば、北朝鮮の挑発行動の抑止につながる。
シンガポールで開かれたアジア安全保障会議に合わせて、日米韓の防衛相、国防相が会談し、北朝鮮の弾道ミサイル発射を想定した初の合同訓練を今月下旬にハワイ沖で実施することを決めた。
参加国の艦船から試射されたミサイルを追跡し、軌道を確認する訓練になるとみられる。
北朝鮮が演習でミサイルを発射する場合、米偵察衛星が準備状況を捉え、日米韓が周辺海域にイージス艦を配備して備える。特に隣接する韓国は発射直後の飛行を捉えうる位置にあるため、速報を担う役割が求められる。
四年前にいったん合意した軍事情報包括保護協定は、今回の会議でも継続審議になった。慰安婦問題など歴史の懸案があり、韓国内に日本との防衛協力に対する慎重論が根強いからだ。
北朝鮮の中、短距離弾道ミサイルは日韓を射程に入れるが、現状では日韓は、米国が仲介しないと情報を交換できない。協定を早期に締結して、即応体制を築く必要がある。
北朝鮮の軍拡路線を止めるには、中国が制裁をどこまで履行するかがカギになるが、最近、微妙な変化がみられる。
北朝鮮高官としてはほぼ三年ぶりに李洙〓・労働党政治局員が訪中し、習近平主席と会談した。核・ミサイル問題では進展はなかったもようだが、中朝が関係修復に動きだしたのは間違いない。背景には、中国の南シナ海進出など、東アジアの安全保障を巡る米中間の対立がある。
米国は北朝鮮ミサイルを迎撃する高高度防衛ミサイル(THAAD)を韓国内に配備する計画を進めているが、中国は激しく反発する。THAADが持つレーダー網が、中国国内の軍事情報まで探知するとみるからだ。
中国は北朝鮮に対する影響力を示しながら、日米韓の接近を警戒し、けん制している。
北朝鮮を取り巻く関係国の利害対立が深まれば、政策の足並みが乱れる。日米韓は防衛協力を進めると同時に、中国とロシアにも働きかけて、外交による北朝鮮包囲網を築き、対話に引き出す努力が必要になる。
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